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【平直行「東方武術見聞録」】その18 これは使えないだろう? それが正解。型とは使えないものなのだ。(後半)

2014/10/17 13:36 投稿

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その18 これは使えないだろう? それが正解。型とは使えないものなのだ。(前半)

相手にただバックを取られた状況よりも、両腕ごとかかえられた状況は実際にはあり得ない。実際に起こらない状況ではあるが、その状況になってしまえば、ただ胴体だけをかかえられた状態よりも遥かに脱出は困難になる。型とは大げさに作り、身体の可能性を引き出し、型の状況における判断を身体に染み込ませるものだ。だったらワザと大げさにすると、より運動としての効果が大きくなる。そして両腕をかかえこむことの意味が心眼流の型を通じて見えてきた。


心眼流の口伝に従い、型通りの腕の使い方をする。そして型を全身に繋げる。そうすることで筋電図の数値が一気に跳ね上がる。腕の形、肘の角度と使い方は型を覚える際に初めから厳しく伝えられる。


腕は人の身体の中では器用に動く箇所なので、正確な形と動きを覚えるのには、腕から始めると覚えやすいのだ。武術の鍛錬が進めば、お腹も自由に動く。そして身体中が自由に動かせるようになる。


耳を自由に動かせる人がいる。出来る人には当たり前でも、出来ない人には理解不能、再現不可能の耳の動き。武術は口伝と型によって耳を動かすように全身を動かすことが出来るようになる。その始まりを僕は腕から行った。


腕を自由に動かす感覚を磨いていくと、ある日身体が変わる。身体が覚醒してくるのだ。そうなると腕を動かさないでも筋肉が自由に動くようになる。剛身(こわみ)を入れるという心眼流の鍛錬を日々行うと身体が変わるのだ。腕が自由に動くと、その際の身体を動かす感覚が見えてくる。見えてきたら今度はそれを他の身体の箇所で行えば良い。


知ってることや出来ることは大きく広げることが出来る。腕の型を知り、型の意味を知ると、グレイシー柔術のスタンドアップに感じた違和感の意味が見えてきた。あれは型として教えたんじゃないのだろうか? スタンドアップにはそのままでも充分に使えるものもある。そのままでは使えないだろうというのもあるし、両腕ごと胴体をかかえられるような、使えないというよりむしろ使わないだろ? そんなスタンドアップもある。


型のエッセンスを抜き出してスタンドアップが出来たとしたら、そのまま使えるもの、使えないもの、そしてあり得ないような状況、その全てが混在した意味が見えてくる。両腕ごとかかえられた変な状況で、足を広げて腰を落とす。そうすることで相手に倒されたり投げられるのを防ぐ。その時に腕は曲げて胸を張るようにする。


グレイシー柔術の腕の角度と形は心眼流とは少し違う。それは流儀の違いなのか、それとも何十年の間に変わってしまったのか。それは僕にも分からないし、もう誰にも分からない。誰も前田先生がカーロスに教えているのを見たことがないのだからしょうがないのだ。


グレイシー柔術の形に、心眼流の口伝を当てはめてみる。そのほうが僕にとっては武術の口伝を活かしやすいからそうしてみた。腕の角度を綿密に調整して、胸を張り肩甲骨を締める。腰は膨らむように全身の力を込める。なぜすぐにそんなことが出来るのかといえば、心眼流にも同じ状況から始まる型があるからだ。


実はほとんどの古流の型には、後ろから両腕ごと胴体をかかえられた状況から始まる型があるのだ。古流の時代にそうやってかかえていたのかといえば、どうも違ってるようにしか思えない。型は大げさに作ってある。だから大げさな動作で身体を効果的に変えてゆくために、ほとんどの流儀に同じ動作があったのだ。


 

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