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【平直行「東方武術見聞録」】その9 古流武術の時代の話。(後半)

2014/08/15 13:50 投稿

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その9 古流武術の時代の話。(後半)


 

自分は国の中の駒なのだ。国といった全体のために命を削り、相手の命を多く奪えば国が守れる。とてつもない世界が戦のあった時代の真実なのだ。下手に生き残ろうとか考えて一人も切れないまま切られては、国としてはたまったもんじゃない。武家の侍は本当に命をかけて日常を過ごしていたのだ。


「だから、下足は絶対に揃えない。命をいかに綺麗に捨てるか。その決意を作り磨くのも道場の役割だったのだから。道場には命を捨てる程の覚悟を持って入る。その結果、磨かれた武芸で生き残るのは勲章になる。最初から生き残るような甘い考えではかえって身の危険を増やす。だから道場に入る際には下足は揃えない。下足を揃えるということは帰る前提があるということだから。生きて帰る気があれば下足は揃える。帰る時に綺麗に揃ってたほうが自分の下足を見つけやすいから。でも命を捨てるのなら帰りは必要ない。道場では命をかけて稽古に励む。その気持ちを持って道場に入る。だから下足を揃えると怒られる。これが古流武術の道場に入る際の礼節なんだ」


現代とは違う礼節もある。そのことを知れば少し古流武術に近くなる。別に普段靴を汚く脱ぎっぱなしにする必要などない。この事実を知った上で時代に合わせて靴はきちんと揃えればいい。知らないで靴を揃えるだけでは足りないものを知った上で揃えれば少しずつ自分の中に入ってくる。


色々な古流武術の時代の話を聞かせて頂きながら僕は先生の下に通い、色々なことを学ぶ。学びとは、積み重なると同時に変化していかなければ足りない。始めに学んだものに次を重ねることを続けてゆくと、始めに学んだものが徐々に変化を始める。それが武術の学びの秘訣だ。


ある日、先生から死穴(しけつ)という口伝を教えて頂いた。人の顔には4つの穴がある。目、鼻、耳、口の4つの穴。4つの穴を死穴と呼ぶ。そこに口伝に従い距離を詰め自分の指を差し込む。口伝に従い苦痛に耐える相手を投げ捨てたり、そのまま首を折ったり、穴に差し込んだ指で切り裂くように穴から指を動かす。教わっていた時にはそれ程感じなかったけれど、それから死穴の捕らえ方を日々続けていると、少し気分が悪くなった。


格闘技の時代からずっとシャドーをやっていたから、僕は目の前にいない相手をシャドーしながら現実にいるように作り出すことが出来る。シャドーボクシングのコツは動きの早さや力強さじゃない。いないはずの相手を本当にいるかのように作り出し感じることが出来ればシャドーボクシングが上手くなったと言える。強くなるのにはスパーリングが欠かせない。スパーリングは実際の感覚に近い感覚で練習出来るからだ。何しろ相手と試合に近い感覚で実際に打ち合うのだから、実戦に近い練習としては最適だ。


ところがスパーリングは試合に近い分だけ試合に近いダメージも負ってしまう場合がある。プロで強くなるということは2つの作業の使い分けが上手く出来る必要がある。安全で尚且つ実戦的な練習。安全なだけでは本当に実戦になれば全く役に立たない。シャドーボクシングやミット打ち、サンドバックをいくら上手に打てたとしても、実戦で役に立つのかはやってみなければ分からない。だから実際に試合をやる格闘技ではスパーリングが欠かせないのだ。スパーリングをやって試合の感覚を知りその状況で同じように、シャドーやミット、サンドバックを打つように練習を繰り返す。


 

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