第29回 人生の奈落から『映画の奈落』を考えたんだも~ん!
体が打ち震えほど感動する映画がある!≪※編集部注:書き出しに相当使ったであろうエネルギーにはたいへん敬意を表しますし、初っ端から突っ込んで申し訳ないとも微かには思いますが、あまりにも面白いので、ここは原文ママとさせていただきます! あ、もちろん「体が打ち震えほど」の“る”が抜けてる部分のことであります!≫
今回、紹介する『北陸代理戦争』こそ、そんな映画の1本である。
軟弱になった21世紀の日本人。
そんなフニャチン日本人にビンタをかまし、「真に男が生きるには、戦うことこそ大事なのだ」と、強烈に訴えてくる映画である。
この『北陸代理戦争』は、いろんな意味で象徴的な映画である。
まず、この映画を監督した深作欣二の最後のヤクザ映画だったこと。
次に、『仁義なき戦い』以来の実録ヤクザ映画の最後の作品だったこと。
そして、何よりも劇的だったのが、この映画の主人公のモデルとなった北陸の組長(当時、“北陸の帝王”と呼ばれた川内組組長・川内弘)が、映画公開のすぐあとで射殺されたことだ。
それも、映画のなかで襲撃された同じ喫茶店で射殺されたのである。
まさに、この映画がきっかけとなって、現実に殺人事件(「三国事件」と呼ばれている)が起こってしまったのだ!
さらにビックリするのが、この映画の内情をディープに取材した本『映画の奈落、北陸代理戦争事件』(伊藤彰彦、国書刊行会、2400円)が今年の5月に発行されたことだ。
時間がたった(映画公開と射殺事件は1977年)とはいえ、あまりにもタブーなテーマをよくぞ書いてくれたものだ。
また、売れないだろうこの本をよくぞ発行してくれたものだ。
『仁義なき戦い』ファンのひとりとして、著者と出版社に最大の拍手を贈りたい。
≪※編集部注:W杯ネタに続き、またもや何の脈絡もなく、テーマに映画を持ってくる筆者・ミッキー竹本にも拍手を贈りたいです。≫
著者・伊藤彰彦はこの本のテーマを序章でこう記している。
[事件には三つの“挑戦”が関わっている。第一に、モデルとなった川内弘の巨大組織、山口組に対する挑戦。第二に、脚本家高田浩治の『仁義なき戦い』とその作者、笠原和夫に対する“挑戦”。最後に、親分を殺された川内組の若衆たちが、暗殺隊を組織し、親分の敵を取ろうとした“挑戦”である]
映画『北陸代理戦争』は、一言でいうなら「ごっつうエゲツない」映画である。
冒頭からして、エゲツないシーンから始まる。
主人公(松方弘樹。福井・川田組組長)が、自分の親分(西村晃。富安組組長)を雪の中に埋め、首だけ出させて、脅しのためにジープで首をはねようとするシーンなのである。
日本映画史上、冒頭エゲツないシーン・ナンバー1に輝く見事なシーンである。
この迫力に満ちたシーンの裏には、事故も起こっていた。
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