第36回 あなたは偽老人としてのレジスタンスを貫けるのか?
認めたくないが最近私は老けたようである。四十才。自分ではまだまだ若いつもりだが世の中は私をヤングに見てくれていないらしい。ただただ悲しい。
今日は電車で吊り輪に掴まっていただけで、若者に席を譲られた。素晴らしい若者だ。こんな若者がいるなら、この国の将来は明るいねと素直に喜べないのは、若者からみたら私は席を譲らなければならないほど加齢、衰弱した存在であるということだから。
けれども若者の善意には応えたい。私はゴホゴホとワザと咳をしてから、ワリーワリーつってその席に腰をかけた。病人のような真似をしたのは、老人扱いに対する抵抗であった。私は老人ではなく、若干体調を崩しているだけなのだ、というレジスタンス。嬉しかった。けれども悲しかった。なにより悔しかった。でも座ると快適なのは人間の哀しき性。
着席の快適さでうつらうつらしている私の前に、老人が現れた。本物の老人である。
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