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【谷川貞治の人生のホームレス】 第27回

2014/02/22 19:34 投稿

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1.『続・平謝り』 〜格闘技界を狂わせた大晦日10年史〜

この10年間、格闘技は未曾有の盛り上がりを見せたが、結果的にそれを盛り上げたK-1もPRIDEも崩壊してしまった。そこには様々な原因があるが、良くも悪くも一番の原因は大晦日イベントにあった。テレビ局も含めて当事者の谷川貞治(元K-1イベントプロデューサー)が『平謝り』にも書いていない内幕を綴って、検証する。

●第27回 2009年-③ 戦極との攻防。7対7全面対抗戦の裏側

2009年の大晦日は、「魔裟斗引退試合」という大きな目玉が作れたので、早い時期から安心した気分でいました。しかし、その時期に戦極は石井君のデビュー戦を発表。Kダッシュに入った後、石井サイドから僕の方に何らかの連絡があるかと思っていましたが、それは全くありませんでした。僕はなぜ石井君とKダッシュがテレビもない団体をデビュー戦に選んだのか不思議でした。僕の方から連絡するのを待っているのかと思いましたが、そんな気配さえありませんでした。

一体、何を考えているのだろう?

その理由はしばらくしてはっきりしてきました。というのも、石井君のマネージャーのSが、いろんなテレビ局の編成に戦極の放送の話を持ちかけているという噂が伝わってきたからです。つまり、オリンピックの金メダリストとして話題になった石井君のデビュー戦なら、テレビ局は必ず食いついてくるだろうとSは踏んだのです。だったら、すでにテレビ局と深いパイプを持つK-1の我々にコントロールされるよりも、逆にコントロールしやすい戦極と組んだ方がメリットがある。「石井がいるからテレビ局は放送するんだよ」という強い立場で、戦極から高いファイトマネーを取ったり、マッチメイクでイニシアティブを握ろうと考えたのでしょう。そうであるならば、我々が眼中にないのはよく理解できます。

でも、本当に石井君だけでテレビ局は放送に踏み切るのだろうか?

まずTBSは我々が握っているため、戦極の入り込む余地はない。日テレは猪木祭り、フジテレビはPRIDEのコンプライアンス問題で、今さら大晦日に格闘技をやるはずがない。テレ朝も新日本プロレスとガッチリやっているから、K-1も何度かアプローチしてみたが、まず可能性は薄いだろう、そう思っていました。KダッシュのSはなかなかのやり手なので、一体どうするのかと様子を見ていましたが、そのうちテレ東での放送が濃厚だという話が伝わってきました。

なるほど、おそらく石井君サイドは戦極と契約する際、地上波のテレビ放送を必ず実現させることを条件に入れているはず。戦極の親会社のドン・キホーテがその気になれば、テレ東なら番組の枠買いも可能でしょう。石井サイドとしては、最悪テレ東という保険を持ちながら、他の地上波テレビを当たっていたのでしょう。しかし、案の定他のテレビ局は全く関心を持ちませんでした。ということは、ドン・キホーテがスポンサー費を払って番組枠を買い、大晦日にテレ東でやるのが濃厚。テレ東は大晦日に『ハッスル』をやったこともあり、それだったらあり得る話です。ただ、テレ東なら大きな競合相手にもならないし、戦極の知名度から考えても大して気にする必要ないんじゃないかと思うことにしました。だったら、勝負してやろうじゃないかと……。

ところが、テレ東以外のテレビ局で一つだけ、石井君に興味を持ったところが出てきました。それは、他ならぬ『Dynamite!』を放送しているTBSだったのです。Sは顔見知りのTBSの編成局長に「大晦日、Dynamiteを5時間以上放送するなら、石井のデビュー戦をその内の1時間でも放送できないか?」と、何度も提案したてきたそうです。ちょうど2年前、『Dynamite!』と『やれんのか!』を二元中継したようなことを持ちかけていったわけです。しかし、TBSもFEGと契約している以上、FEGの同意なくしてそんなことはできない。『やれんのか!』の時はFEGからTBSに持ちかけた話。でも、打倒紅白を目指すTBSとしては、魔裟斗の引退試合だけでなく、そこに石井君のデビュー戦があった方がいいに決まっています。とは言うものの、石井サイドも、戦極も自分の方からFEGに頭は下げたくない。なんとかTBSが英断して二つのイベントを放送してくれないかと迫ったのです。そして、とうとうTBSから僕の方に連絡が入ったのです。

「これまでいくつもの他団体とうまくやってきた谷川さんのこと、なんとかうまくやれないか」と。

面倒なことになったな、と思いました。僕としてはPRIDEチームとは今後一緒にやっていくつもりだったので、『やれんのか!』との二元中継は自分たちの方からTBSに提案しました。しかし、将来の話し合いのない戦極には母屋を取られるようなもの。まして、散々振り回された石井サイドに今さら頭を下げたくもありませんでした。それでも、編成局長からの話でしたから、僕は芸能界のドン、Kダッシュの川村龍男会長に電話することにしました。

「会長、どうすればいいんでしょうね?」

 

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