第5回 あなたはよく言えば殺風景な顔の女を思い出せるか?
一期一会というように出会いは大事にしなければならないが、愚鈍な私は相手の名前はおろか顔すら思い出せないことが多いので難儀する。
今朝もだ。私は同年代の女性から声を掛けられた。
名前も顔も思い出せない。
「しばらく!元気してた?」声を掛けられて名前が出てこないときは、軒下ツバメの巣の様子など無難な話で時間を稼いだり、共通の知り合いでは?という名前を推察、それを次々と挙げて相手を揺さぶるなどして模索するのが常である。
しかし、告げられた名前も、供えられた顔面もまったく見知らぬ女性。他人の空似の可能性もある。慎重にあたらねばならない。
彼女によると私たちは中学のクラスメイトで同じ部活に所属していたらしい。担任の名前を訊ねてみるが見事に正解。
件の女性の、一重の目と薄い唇が正確に逆二等辺三角形の位置に設置された、よく言えば殺風景、悪く言えば地味な顔面が不気味さを増大させる。
降参だ。名前を尋ねようとすると…「フミコ君ローンに苦しんでるんだって?」と詐欺臭い感じに遮られる。
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