昔の日本映画を見ていると、奇妙な錯覚にとらわれる。それは、見る映画見る映画同じ役者が出てくるので、「昔の芸能界は人材不足で、同じ役者を使い回ししていたのか?」という錯覚である。それくらい、同じ俳優がいろんな映画に出てくるのだ。

笠智衆、東野英治郎、杉村春子、三船敏郎、高峰秀子、加東大介などは、どんな映画にも出てくる。特に、最初の3人は異様なほどに出演作品が多いし、また重なっている。
しかも、同じ監督の作品だったらまだしも、いろんな監督のいろんな作品に、当たり前のような顔をして出てくるから驚かされる。

「無法松の一生」も、そんな映画の一つである。この作品には、笠智衆、三船敏郎、高峰秀子が出てくる。
だから、最初はやっぱり、「ああ、またこの人たちか。やっぱり昔は人材が不足していたのだな」とつい思ってしまう。
ところが、よくよく見ているうちに、やがてそうした感覚は、やっぱり錯覚でしかなかったというのが分か