しかしぼくは、最近初めてこの作品を見た。当時は見ていなかった。
なぜ今になってこの映画を見たかといえば、アシスタントの女の子が教えてくれたからだ。彼女は、子供の時にこの映画のあるシーンを見て、強い衝撃を受けたのだという。
それは、オーディションのシーンだった。オーディションを受けているダンサーの女の子が、バレエを踊れなかった。バレエのレッスンを受けていなかったのだ。
それで、演出家で審査員のザックは、その女の子に「帰りなさい」と退場を促す。バレエが踊れなければ、このオーディションは受ける資格はない、というわけだ。
しかしながら、その女の子は必死に食い下がる。そうして、見よう見まねで周囲のバレエを真似て踊り出すのだ。
すると、それを見たザックは、立ちあがってこう怒鳴るのである。
「Don't dance!(踊るな!)」
そうして、女の子に再び退場を命じるのである。さすがの女の子も、今度は泣きながら逃げるように会場を後にしていった。そうして、二度と戻ってくることはなかった……
アシスタントの女の子は、それを見て非常なショックを受けたというのだ。
「やめろ」と言われても必死に踊っているから、てっきりザックはやさしい言葉をかけるのかと思った。あるいは、そういう根性を評価して、逆に合格にする――くらいまで想像した。
ところが、映画のザックはそれとは正反対のことをした。不合格どころか、怒鳴りつけて追い返したのだ。
それがトラウマにさえなったと、彼女は説明してくれた。
そんな彼女の紹介がとても面白かったので、興味を抱いて見てみたのだ。
コメント
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>>2
そうですね。その中間のところで嘘をつき、他人を夢見心地にさせるのが表現者だと思います。
(ID:124050)
岩崎さんがあのエンディングの演出について、どう思われたかお聞きしたいです
(著者)
>>5
エンディングというのはみんなで列になって踊る場面でしょうか?