石原莞爾と東條英機:その11(2,185字)
板垣征四郎は1885年(明治18年)に岩手県岩手町で生まれた。彼にとっての最重要人物は、父方の祖父、佐々木直作だった。
佐々木直作は、1817年に生まれた盛岡藩士だった。長じると藩校の先生をしたり、藩主の剣術の指南をしたりした。卑近な言い方でいうと「剣道の偉い先生」で、藩の重要人物であった。
盛岡藩は、1868年、直作が49歳のときに起こった戊辰戦争で敗れる。このとき、盛岡藩の重要人物だった直作は逮捕されると、江戸に護送され、しばらく増上寺に幽閉される。
ここで、直作は一旦人生を終わらせられる。武士として戦争に負けたのだ。その責任は明らかで、もはや死ぬしかなかった。
ところが、直作が負けたことで、江戸時代が終わってしまった。自分の価値観だったら切腹するところが、負けたせいでそれすらできなくなったのだ。
おかげで、直作にとっては「死にきれなかった」という思いが強く残った。江戸時代までだったら
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