日本では、1980年から女性が強くなる。その象徴的存在が薬師丸ひろ子なのだが、その割にこのことを知る人は少ない。

というのも、「強い女性」というと多くの人がフェミニスト的なキャラクターや意思や態度がはっきりしている人のことを思い浮かべるのだが、薬師丸ひろ子の場合はそうではないからだ。彼女は、むしろそのイメージの逆である。フェミニストでないのはもちろん、意思も態度もはっきりしていない。

そして、そのはっきりしていないところが魅力なのだが、実はそこのところこそ彼女の強さの源泉なのだ。だから、分かりにくいのである。

薬師丸ひろ子は、分かりにくい。だから、多くの男を魅了した。年上の角川春樹や高倉健や松田優作、また名だたる監督たちはもちろん、同世代や下の世代のファンも魅了した。

そんなふうに、「分からない」というのは強さだった。その意味で、薬師丸ひろ子は「分からないという魅力」の発見者ともいえた。