「自分」というものは存在しない。それは、科学ではもうずいぶん前から証明されている。
それ以前に、そもそも人間には「自分」がいなかった。自分は発明されたのだ。
発明されたこと自体はいつか分からないくらいの昔だが、広まったのは19世紀だ。産業革命に伴って、近代化が訪れた。その訪れとともに「近代的自我」が生まれ、広まったのである。
この近代的自我こそ、自分である。だから、つい最近定着したものなのだ。まだまだ歴史が浅い。
しかしながら、定着したらこの概念は、人類に非常にしっくりきた。近代以降の社会を生きるのに必須の概念となり、しかも今では、まだ意識が芽生える前の乳児のときに潜在意識に植えつけられるので、ほとんどの人が疑えない。そういう非常に強力な存在となったのである。
『2001年宇宙の旅』という映画があって、テーマの一つが「機械が意思を持ったらどうなるか?」というものだ。劇中では、コンピューター
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