第九章「愛こそすべて」
33
二学期に入ってからしばらく経って、朽木碧の舞台の稽古が皆生駅近くで始まった。
テレビ局のリハーサル室を使ったその稽古場に、ぼくとエミ子は学校が終わるとよく遊びに行った。それは、碧と会うことも一つの目的だったが、もう一つには、プロの舞台というものがどのように作られるのか、興味が大きかったからだ。
ぼくらは、舞台については単に碧の友人というだけで全くの部外者だったが、碧が演出家の人に話をつけてくれたおかげで、自由に見学させてもらえるようになった。碧は、役どころもとても重要なものだったが、演出家の人にもとても気に入られているらしく、そうした話もすぐにつけてくれた。
それで、大喜びしたのはエミ子だった。なにしろ、彼女はもともと趣味で変装してしまうくらいに芝居のファンで、だから鑑賞するのはもちろん、それが制作される舞台裏にも大きな興味があったのだ。
そのため、
ここから先は有料になります
ニコニコポイントで購入する
チャンネルに入会して購読する
- この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。
-
絵本の価値はいつ生まれるのか、またそれを体系的、継続的に生み出していくための方法は?(前編)(1,689字)
-
一覧へ
-
絵本の価値はいつ生まれるのか、またそれを体系的、継続的に生み出していくための方法は?(後編)(1,908字)
コメント
コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。