小飼弾です。ブロマガをお届けいたします。
200 Any Questions OK
Q. 日本は原爆を持つべきでは?
弾さんはブロマガ#12で「杞憂であればよいのですが」と言っていますが、むしろ日本は原爆を持った方が国際的な立場上も有利なのではないでしょうか?
A. 他国はそれを止められない
持った方がいいかどうかの前に、まず持てるかどうかを考察しておきましょう。
まず技術的に問題がないことは確かです。むしろ原子炉を保持しているのに、原爆を作っていないことを証明する方が技術的難度としては上なぐらいです。一応IAEAの査察というものがありますが、その効果はせいぜい財務監査程度のもので、それをすり抜ける難易度は粉飾決算を通すより容易いと言わざるを得ません。核物質の裏帳簿を作るぐらいわけないでしょうね。そもそも北朝鮮のように脱退してしまうという手もありますし、IAEAお断りにしてしまうという手だってありますし、インドとパキスタンに至ってはNPTを批准してさえいません。
まだ核技術を保有していない国の核兵器製造を止めることは不可能とはいい切れません。実績もあります。1981年、イスラエルはイラクがフランスの援助で建設していたオシラク原子炉を爆撃、破壊しています。ちなみにこの作戦はF-16およびF-15のデビュー戦でもあり、米軍の主力戦闘機でもある両機は大いに武名を上げました。そのことからもわかるように、米国は同作戦を支持しています。
しかし、すでに核技術を保有している国の核兵器製造ともなると話は180度変わります。1974年の核実験を「あれは核爆発(Nuclear Explosion)ではなく核爆破(Nuclear Detonation)であって、核兵器の実験にあらず」と世界を微笑むブッダ的禅問答で煙にまいたインドは、1998年に今度は堂々と核爆発実験を行った上で保有を宣言しましたし、隣国パキスタンもこれを受けて同年に核実験の実施と保有制限を完了しました。
そして当時両国には経済制裁が課されたのですが、2001年9月11日の同時多発テロの結果、アフガニスタンにおける作戦で欠かせないパキスタンへの経済制裁が解かれ、同時にインドへの経済制裁も解かれました。
こういうのもなんですが、核兵器というのは「持ったもの勝ち」という側面があります。保有を止めるのは難しく、そして一旦保有されたら事後承諾を出さざるを得ないという点で。
それでは持ったら持ったらで、持つ価値はあるのかといえば、これまた「ある」と答えざるをえません。
かつて「中国」といえば、それは中華民国のことをさしていましたが、それまでは「中共」だった中華人民共和国が「中国」の座を台湾から奪えたのは、核兵器あってのことでしょう。同国の保有宣言が1967年。常任理事国の座を手に入れた[アルバニア宣言]はその4年後の1971年。当時米国がベトナム戦争の泥沼にはまっていたとはいえ、これだけの大逆転は核カード抜きにはありえなかったでしょう。
歴史はこうささやいています。国際政治において、核は保有しやすく拒絶しにくい、抗い難いカードと。
A. 日本にとってよいことは、あなたにとってよいことですか?
国家は核兵器を持つべきか?その答えはYesです。「脱属国」を目指すならなおのこと。
しかし本当の問題はそれではないのです。
核兵器を持つ国家は、国民を幸せにするか。
これこそ、国家ではなく国民である我々の問題であるはずです。
ここでまた歴史を振り返ってみましょう。
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