「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2024年1月9日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2024年1月23日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2024/1/9配信のハイライト
- 能登地震と復興、人口流出
- 航空機事故と「安全のための仕組み」
- 地震と万博への影響
- 2024年「世界のリスク」と「アメリカの分断」
- 「ネコ動画を見ろ」と「アメリカの学閥」
- 「今の世界を読むためのSF」と「テックビリオネアーズとSci-Fi」
能登地震と復興、人口流出
山路:新年最初の配信ではあるんだけど、
小飼:のっけからすごかったですね。
山路:昨年末の段階では、弾さん、冬休みに何の漫画読んだんですかとか、『刃牙』を全巻読んだとか、そんな話をするのかなと思っていたら、
小飼:なんかいきなり大地震でしたね。
山路:さらにその地震の影響と言っていいと思うんですけど、羽田空港の事故がありと。
小飼:まぁそうか、影響はあるよな、救難機だったわけだもんね。
山路:海保のやつですよね。ということで、なんかもういきなり元旦からフルスロットルで、という感じになっておりますけれども。「実家にいたけど、けっこう揺れましたっていう」とうコメントもありますね。じゃあ能登地震のほうから、これは触れずにいられないということなんで、いこうかと思うんですけれども。今回、復興、復興じゃないや、災害の対応ちょっと遅くないですか? 気のせいですか?
小飼:遅いね。というのも、現在に至っても、行方不明者の数が動いてるじゃん、
山路:今100名くらいでしたっけ、
小飼:いや、確かに時期が悪くて、ちょうど元旦というのは当然帰省してる人たちがいて、帰省してたところで被災した方というのが多くて。僕も実家、丸焼きになった時の状況がまさにそうだったんで。
帰省してたとき。だから、全容を把握するのが難しいというのはわかるんですけど、それでも1週間経ってるわけですよね。
山路:ここの部分を切られると全然たどり着けないとか、いろいろあと船が接岸しにくいとか、そういう条件が重なっているみたいですけどね。
小飼:例えば東日本大震災の、2011年のもう12年前か、もう干支まるまる一周してるわけですけども、の時にはなかったテクノロジーもあるわけじゃないですか、Starlinkとか、
山路:本当だ、それにしてはちょっとなんか現地の様子が、いまだに1週間経って、まだ水が全然届いてなかったりとか、あるいは通信はある程度できるようになったんですよね、Starlinkの。
小飼:通信はもう回復しているはず。もちろん例えば、救護を要請するほうの通信環境が、例えばもう電気がない、だから充電もできないということで切れちゃってるという可能性はあるんですけども、少なくとも、圏外ということはないはずですよね。
山路:なんかこうあんまり、現地の人の直接の声が、
「ネットでミリオタが今の政府の震災対応を全力援護している」(コメント)
小飼:にも関わらず、当然震災があると救難の様子とかっていうのも出てきて、どこどこから誰々が救い出されました、みたいな武勇伝というのも出てくるわけじゃないですか、実際に震災から120時間後に救護されたというようなニュースが流れたんですけど、そうにしてもその手のニュースが少ないなとは思います。
「能登町が祖母の田舎ですが、すごい田舎なんですよ、家は大丈夫だそうです」(コメント)
山路:よかったですね。東京とかに住んでいるとすごい田舎っていうことの、やつが本当に体感的にわからないところもあり、
小飼:例えば日本のすごい田舎って言っても、実は田舎同士でもピンと来ないところっていうのはあると思うんですよ。例えば北海道の一番近いイオンが120kmとかね、
山路:ああ(笑)、
小飼:そういうレベルではないです。僕も能登半島は何度かドライブ行ったことありますね。輪島とか泊まったこともあるし。なので、朝市のところがちょっと、やけぼっくいになったというのはちょっとグッとくるものがありますね。なんて言えばいいのかな、本当に時期も悪かったし、起きたところも悪かったしっていうので、大変なのもわかるんだけれども。で、今日知ったんですけれども、じつはけっこう今回の震災で最初に思ったのは、こんな時にオスプレイが使えないのかっていう。
山路:しかし他のヘリは、
小飼:当然、自衛隊が持っている一番大きなヘリですね、チヌークとかは当然、投入されてたんですけど、震災の時に一番見かけるやつがいないぞと思ったら、止まってたんですね。UH-60、
山路:ブラックホーク、
小飼:実は4月に、沖縄で、宮古島で自衛隊の偉い人を乗っけてたやつが落ちたという事故があったじゃないですか、そこから止まってたらしいんです。
山路:ずっとなんだ、
小飼:え!? こう言うのもなんですけど、オスプレイ止まってたよりも大ごとですよっていうのも、一番飛んでるやつなので。
山路:それって今まで支障なかったんですかね、みたいな、
小飼:いや本当に今までどうしてたんだよっていう。で、UH-60だけなのか、確か宮古島で落ちたやつっていうのは陸自のやつですよね。でも、例えば海自の護衛艦に乗っけてるやつとかっていうのも、タイプは同じなんですよ、名前は違うけど、UH-60じゃなくてSH-60とかだったりするんですけど、まで止めてたのかという。
山路:なんでこの辺のところの事情って、もうちょっとメディアで報道しなかったんだろうなっていうのはありますね。弾さんみたいに色々、これのニュースをチェックしてた人も、知らんかったわけですもんね。
小飼:ちょっとびっくり、でも本当に見かけないじゃないですか、本当に自衛隊の救難ヘリって言って真っ先に思い出すのが、ブラックホークですからね。たぶん、いわゆる西側で一番使われてる機体だと思います、
山路:でもそれが投入されたこと自体はいいことなんだけども、結局原因究明はできなかったってことですよね、止めてたってことは。
小飼:どうなんだろうね、だからヘリのせいにしてたのか、あるいはヒューマンエラーっていうことにしてたのかっていうのがちょっとわかんないんだよね。オスプレイ、いつ飛行再開するんだろうねっていう。
山路:こういう場合って、オスプレイってやっぱり他のヘリなんかよりも便利に使えたりする?
小飼:いや、猫の手も借りたいというのか、投入するヘリは多ければ多いほどいいわけで、確かにオスプレイが最適なわけではないけど。一番いいのはたくさんUH-60があることなんだけれども。
山路:なるほどね、
小飼:チヌークじゃ大きすぎ、うん。
山路:最低限の輸送のメソッドは、UH-60が復活したことでなんとかなるということではあるのか。
小飼:民間のやつだって来るはずですよね、ドクターヘリとか。なんでこんなにヘリコプターが少ないのかなっていうのはすごい思いましたね。他の震災とかと比べても。まさにヘリコプターがでなきゃできないことが本当に盛りだくさんの状況なのに。もちろん道路とかっていうのは直さないと、本格的な復旧とかっていうのは無理なんですけれども。
「こんな時に災害用の空飛ぶ車があれば」(コメント)
山路:(笑)
小飼:まさにその空飛ぶ車に一番近い存在というのがヘリで。自衛隊が持っている、一番よく使う空飛ぶ車というのがUH-60なんですよ。それが、つい昨日だっけ、まで飛んでなかったっていう、これはちょっとショックだな。
「政府は助ける気がない気がしてしまう、北陸の人間としては」(コメント)
山路:やっぱりそういうふうに感じてしまうところはあるんだ、現地出身の人としては。なるほど。
「元旦の夜、ヘリの音がしたから、助けに行ってると思ってた」(コメント)
小飼:あとあれだよね、とりあえずおおすみがLCACを載せて行ったわけですよね。ここでおおすみとLCACというのは、なかなかいい組み合わせだと思うんですけれども、
山路:LCACって何ですか?
小飼:LCACってホバークラフト、
山路:ああ、
小飼:おおすみというのは揚陸艦ですね。
山路:遠浅の海なんかで、やっぱりこういうところには揚陸艦で行って、実際に接岸するのがホバークラフトであるみたいな。ホバークラフトってあんまり活躍するとこ、見ないですよね。
小飼:いや、揚陸要素では非常に使い手があるんですけど、
山路:災害とかっていう文脈で?
小飼:輸送というのは軍隊のかなり重要な任務で、救難活動にも直結するんですよ。だから、こう言うのもなんですけれども、平和の時に使えるものとしてはすごい大きいんですよね。
山路:ホバークラフトとかけっこう維持費も大変とは聞きますけどもね。
小飼:最近はホバークラフトじゃなくてヘリでもいいじゃないかという意見が、LCACを開発した米軍おうでもあって。米軍のヘリ空母というのは要は揚陸艦で、ヘリだけではなくてF35とかも、
山路:F35も?
小飼:F35載せてるんですよ、それとあとLCACが載るようになってたんですけど、一番新しいやつというのはLCACを省こうという方向に一度行きかけたんですよね。なんですけれども、やっぱりないと戦車とか揚陸させるのが大変じゃないかということで、また再びLCACを乗せられるようにしたみたいです。
山路:皮肉な話ですけど、そういうところの上陸作戦みたいなことを訓練しているところが、そういう災害でも強かったりみたいなところがやっぱりあるってことなんかもしれないですよね。
小飼:そうですね。
山路:あと今回災害で、さっき弾さんがちょっと言ってましたけども、Starlinkがもうすでにけっこう、
小飼:大活躍、
山路:350台無償提供、なかなか気前のいい話ではありますけどね。
小飼:こういう時には強い。こういう時には強いので、現地の生の声というのも、もっとどしどし上がってよさそうなんですけども、どうしちゃったの能登半島で被災した皆さんという感じで。
山路:これよく言われる救援物資、いろんな救援物資あると思うんですけど、それとかっていうのを空中投下みたいなものって、
小飼:(コメントを見ながら)マスクが絡んでいるかどうかはわかりません、
山路:日本法人とは言ってますけどね。
小飼:少なくとも日本法人が350台でしたっけ、
山路:これ、空中投下、救援物資の空中投下でボンボンボンボンって落としていくとかっていうのは、そんな簡単なことではないんですか?
小飼:それは落とすのは簡単だけども、でも、落としても拾ってもらえないとダメなので、やっぱり空中から何らかの形で補給するというのは、コミュニケーションが大事なんですよ。でもそのコミュニケーションは確保されているはずなんですよね。なので、あとはヘリを持ってけばっていう感じなんですけど、ヘリあんまり飛んでないという。
山路:やっぱり、なんとなく印象ですけど、リソースの配分がうまくいってないような印象を受けはしますよね、
小飼:他の自然災害と比べて。ただ半島で被災してしまうと、特に道路とかがやられるとなかなか直らないというのは、房総半島の事例というのがあるじゃないですか、未だに直ってない道がある。
山路:あー、なるほどね。
小飼:東日本大震災の時にも言ったんですけども、そもそも復旧するのが、再投資するのが適当かというのも、あるんですよね。東日本大震災の時にはものすごい防潮壁を、海が全く見えないぐらい、山陸の海岸に展開したわけですけれども。じゃあそれで人の流出が止まったかというと全然そんなことはなくて。
山路:そこで流出している人も、ある意味元気な人から流出していくわけですよね。
小飼:そうなんですよ。
山路:私たちは東京に住んでいたりするから、もっとせめて中核都市に住めばいいのにとか気楽に思っちゃうんだけど、それができにくい人ほど、どんどん不便なところに残っていくみたいな、
小飼:だから引っ越さない人は引っ越さないし、たとえ借家住まいでも引っ越さないという意思というのは、日本の法律というのはものすごく強く尊重するわけですよね。
山路:ただ本当、この『論弾』で何回か言っていることですけど、撤退戦はちゃんといろんなところで考えないといけないというか。
小飼:成功事例がないわけじゃないんですよね。例えば夕張とかも、大夕張のほうは、三菱がやってたほうというのは、きれいに撤退しているんですね。今シューパロダムの底になっているところですね。
山路:本当に、住んでいた人が別のところに移ってから生きていくための生活の基盤まで提供できるのかみたいな話とかね、
「高齢者は引っ越しにくいだろうね」(コメント)
山路:本当、何十年とかかけて税金なりとか、そういうものでインセンティブつけるとか、補助金やったりとか、少しずつ移していくしかないんだなとは思いますけども。何これ、
スタッフ:山田町という町の防潮堤を建てたはいいけど、という話、NHKの『クローズアップ現代』から、まとめてくださったんで、
小飼:防潮堤は見に行ったよ。というのか、国道45号線が全通した直後ぐらいに走りましたよ。
「自然淘汰でいいんじゃない」(コメント)
山路:まぁ、それができるんであれば、国の役割はずいぶん楽なんだろうけど。うーん、まぁそこでなかなか見殺しにできるものではないということなんでしょうけどもね。
スタッフ:本当に、2年ほど前に弾さんにお話聞いたときに、基本的には移動の自由があるので、というふうなベースに立って考えるということですよね。
小飼:移動しない自由もあるんですよね。だからこれは単純にインセンティブで動かすというのもあれだけど、でも例えば、じゃあそういう事例が全くないかって言ったらそんなことはなくて、例えばさっきも言ったように夕張の半分とかっていうのも移動しましたし、あとダム建設でダムの底に沈んじゃう集落とかっていうのが当然、集団移住とかをしているわけですよね。
「引っ越し費用は政府予算から出ても、仕事があるかね」(コメント)
山路:まさにそういうところで、けっこう田舎ほど地縁で持っているところはあるじゃないですか、生活の基盤が、
小飼:地縁ごと引っ越すっていうのもあるわけですよね。
「この次元には合わない少子化対策に任せておいたら、日本人は自然淘汰で、絶滅したよ」(コメント)
小飼:でも、こう言っちゃなんだけども、前にも言ったように、前にもというのか、この番組で何度か言っているように、日本がなくなっても、世界がなくなるわけではないんですよね。
山路:あと世界の多くの国は、もうちょっと仕事なくなった時には、みんな動いている印象があるんだけどな(笑)、なかなか日本はまだそれでも暮らしやすいってことなのかもしれないですけどね。
「商売やっている人とか厳しいかもね」(コメント)
山路:確かにそれはそうですよね。地元の人相手の商売だと、なかなか動けないところはありますよね。
小飼:いやーでも、なかなかの観光地でもあるんだよね、たとえば輪島とか。
「輪島市とか輪島塗りとかの職人も多そうだから、引っ越しちゃうとね」(コメント)
小飼:ただ自然に任せておくと、けっこう危険な廃墟が出来上がるというのは、鬼怒川温泉の例とかでも。
山路:ここのところで政府が人の非難を食らうことをやたら恐れている感じがあるんですけど、そういう時こそマイナス面をちゃんと受けてやるべきことはやらなきゃいけないというふうには思うんですけども。
小飼:まぁでもそれは選挙制度があるところでは難しいといえば、難しいよね。
スタッフ:そうなんですよ、今日来る時のニュースで、
「加賀屋はもうだめかな」(コメント)
スタッフ:マグニチュード5.5の地震があったってニュースを見て、まだ群発地震ということで続いている、
小飼:それは続きますよ、それは続きますよというのか、じつはその意味では終わらない。その意味では東日本大震災だって、まだ余震というのは残ってますよ。
山路:あー、なるほどね、東日本311のやつがまだ残っていると、
小飼:残ってますよ、まだ時々余震きますというのが三陸沖で揺れているやつというのは全部、余震にカウントできる。
航空機事故と「安全のための仕組み」
山路:へえー。その地震の影響もあって、その次の羽田のほうにもつながってくるわけなんですけども。
小飼:翌日になかなかクるものがあるよね。
山路:この海保機、能登地震の支援物資を積み込んでたらしいですけど。
小飼:ただ能登地震とは言っても、目的地は新潟だったらしいですけれども。確かに揺れた、震源は能登ですけれども、全国的に揺れたわけですよね。東京も揺れたそうじゃないですか、ちょうど僕は横浜で散歩してて、僕自身は体感してなかったんだけど、ちゃんと揺れたみたいですね。
山路:多少は揺れましたよね。多少は、というレベルでしたけど。私、事故の翌日に羽田空港に行っておりまして、
小飼:そうらしいですね。
山路:滑走路の端っこのほうに黒いものが見えて、iPhoneの望遠レンズでやったら、これは事故の残骸じゃないですかっていう。それを翌日に、とりあえず残骸は残っているとはいえ、普通にもうかなりの便が通常時刻で時刻通りに動いてたりっていうのが、それがびっくりしましたけどね。
小飼:すごいといえばすごいけど、
山路:ただ本当に私が乗る便の2、3便前までは欠航だったりもしたから、本当にギリギリのスケジュールだったんだろうなとは思いましたけれども。
小飼:これは羽田で一番いい滑走路なんですよね、事故が起こったC滑走路は。何を持っていいかっていうと、陸上から離れてて、かつ一番距離が長いやつで、視界ゼロの時にも、自動着陸ができるんですよ。
山路:へええ。
小飼:ただ羽田の強かったところというのは、もう3つ滑走路があるところで。そのおかげで。
山路:オペレーションが難しかったからっていう話? つまりは。よく航空機事故、この番組でも何回か取り上げますけど、そういう時に責めちゃいかんよっていう関係者を、
小飼:いや、そうしたらもう次に業務上過失事故で立件する予定とか言ってて。これだから、Why Japanese people?というやつで、
山路:今リンク出したやつ、航空安全推進連絡会議の議長が激おこな声明を(笑)、そんな刑事事件の捜査として責めとったら、もう事故の究明進まんやろうがっていう、
小飼:ただ日本の場合は、まだその辺、法をきちっと整備しきってないところがあるんですよね。
山路:どっちを優先するか?
小飼:というのか、日本の場合は業務上過失致死に相当する案件を免責するっていうこと自体が、法の枠組み的に難しい。
そもそも一種の司法取引なので。だから本来であれば、これは刑事犯なんだけれども、より大きな社会的便益のためにあえて免責しますよっていうのは、日本というのは大陸法だと実はできなかったんじゃなかったっけ、
山路:EUとかにも同じ問題があるってこと?
小飼:ある、
山路:そうなんですか、
小飼:ある、
山路:ああ、なるほど、
小飼:御巣鷹山の事故の時はどうしたかっていうと、一番悪かったのはボーイングなんですよね。だから修理をきちっとしてなかったボーイングなんですよね。なんですけども、外国法人であるがゆえに、
山路:日本の捜査機関の、
小飼:日本の法で裁けないという。
山路:ある意味、そういう言い訳を用いて原因究明を進めたってことなんだ、
小飼:そういうことです。じつは日本の法でもそういう免責を勝ち取れるケースというのが一つあって、それは容疑者が米軍の場合。
山路:はー、これ難しい話なんですね、意外に。単純に警察の先走った行動というわけでもないんだ。
小飼:航空機事故の場合というのは重過失ではない、重過失というのは要するに「故意に」ですね。だからテロ事件でもない限りは、要は過失は免責するっていうのは、航空行政で一番重要な米国法がそうなっている、というのは確かなんだけど、それ全世界的なものかといったら、そうでもないんですよね。
山路:これしかし、航空業界、国を越境してそういうものを作らないとダメな気はしますけどね。
小飼:実際にしているというのか、なんだかんだ言ってaviationにおけるアメリカの影響力というのは甚大で。だからいまだにヤードポンド法ですし、
山路:そりゃそうだ、そりゃそうですね。
小飼:航空管制というのは日本人同士でも英語でやりますし。そのおかげで事故ったんじゃないの、というツッコミも今回ありますけれども。
山路:飛行機つながりでいうと、もう一つ、アメリカのほうでまたでかいのがあったじゃないですか。
小飼:こっちのほうが、フェイタリティは幸いにしてなかったけれども。飛行中にドアが吹き飛ぶじゃなくて、それよりもより深刻なんですよ。ドアをつけるオプションがある外壁なんですよね、もう少し正確に言うと。だから吹っ飛んだのはドアではなくて、ドアを取り付けることが可能な普通の外壁なんですよ。なんでそうなっているかというと、LCCの場合というのは乗客をすし詰めにしたいじゃないですか。同じ機体でも、高級なエアラインの、例えばJALとかANAとかの機体と、ピーチとかジェットスターとかの、要するにLCCの機体では客席の数が違うわけですよ。ただし客席の数を増やしても、客席いくつに対して非常ドアをいくつ設けなければいけない、というレギュレーションがあるわけです。だから、そういうふうにした場合というのは非常ドアをつけなければいけない。今回パネルが吹き飛んだアラスカ航空というのはLCCではありません。だから、ドアじゃなかったんですよ。ドアじゃなかったところが吹き飛んだ。
山路:より怖いじゃないですか(笑)、
小飼:より怖いです。しかもボーイングで一番たくさん作られている、
山路:この737 MAX 9が、
小飼:はい。
山路:へええ、
小飼:そうでなくても、737 MAXって、ずっと飛行停止を食らっていたわけじゃないですか。
山路:それはMAX 9ではないんですか?
小飼:MAX 9も含まれています、
山路:MAXシリーズ全部ということか、
小飼:MAXシリーズ、全部止められていたわけですよ。
山路:しかも飛行中にドアが飛んだやつって、去年の終わりに就航したばっか、ほぼ新品だった。いろいろ事故を究明しているみたいですけど、プラグドアにボルトの緩みなどを発見みたいな、同型機なのかな。これって結局、そもそもボーイングの設計がよろしくないってことなんですか、
小飼:いや、でもシリーズ累計1万機以上の、ベストセラー中のベストセラーなわけですよ。なんですけれども、一番最初の737と、今の737ではかなり違うんですよね。同じなのは名前と機体のざっくりした大きさぐらいじゃないか、というぐらい違うと言えば違うんです。
山路:うがったというか見方ですけど、結局同じような型名の飛行機みたいなふうに見せかけとくことで通りやすくなるみたいな?
小飼:いや、何が利点かというと、パイロットの免許が同じですむんですよ。だからものすごいコスト要因なんです。
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