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小飼弾の論弾 #269 「学力で人間を上回ったAIと、AI時代に生まれた文学、ビッグテックが日本に積極投資する理由」

2024/01/30 07:00 投稿

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 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2024年1月23日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2024年2月6日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2024/1/23配信のハイライト

  • 株の高値更新と「経済学というのは物理学プラス心理学」
  • NISAと楽天証券と日本の景気
  • 「なんで満点じゃないんだChatGPT」と林譲治先生の新刊
  • AIエロと日本の「国家ブランド指数」
  • トホホ案件「神奈川の出願システムと富士通の郵便会計システム」
  • SLIMの月着陸と原子力電池について

株の高値更新と「経済学というのは物理学プラス心理学」

山路:さっそくなんですけど、最近なんか新聞の紙面とか見ると、えらく景気のいい見出しが。

小飼:新聞の紙面? 新聞の紙面、最後に見たのって何年前かなぁ、

山路:まぁニュースサイトでもいいですけど(笑)、そこは大きな問題ではないのですが、株価が最高値を。

小飼:株価っていう時に日経を上げたり、ダウを上げたりするっていうのもあるんだけど、ダウも日経もチェリーピックされたものなので、だから本来株式全体を語るのであればTOPIXのほうを上げるべきなんだよね。

山路:しかしチェリーピックと言いつつ、その国の経済を牽引している企業を選んでいるっていう見方もできるのでは?

小飼:そうなんだけれども、そこの部分っていうのはなぁ、ニュースの時にもやっぱりNASDAQよりもダウのほうが先に取り上げられたりっていうのは、僕はおかしいと思ってるんだけれども。昔は全株価平均とか取るのは難しかったけど、今は全部コンピューターでやってるわけじゃん。だから全株やるべきなんだよね。それは置いといても、TOPIXも2500超えてるので。

山路:株価最高値みたいな、高値が更新みたいな話が出てますけれども、これって今、日本の経済は調子いいんでしょうか?

小飼:「日本の経済」と「あなたの経済」っていうのがものすごい離れちゃったなっていう。

山路:金が回ってる奴のとこには回ってるし、そうでないとこはそうでもない。

小飼:そうなんですよ。たとえば、スーパーマーケットにしろ、コンビニにしろ、あるいはファストフードにしろ、ちゃんと値上がりしてるわけじゃないですか。あなたの給料はそれ以上に値上がりをしましたかっていったら、ぜんぜんそんなことないわけですよね。

山路:じゃあ結局、株価が高いってことで恩恵を得てるのは株持ってる人ということにはなる、

小飼:まぁそういうことですよね、直接的でも間接的でもいいんですけれども。本来であれば、これはものすごいグッドニュースなわけじゃないですか。

山路:みんなが株持ってるんだったら。

小飼:でも一つ不思議なのは、今のほうが昔よりも株を持ってる人の率っていうのは高いはずなんですよ。

山路:そうですよね。

小飼:で、株価はバブルの高値以上になったと。これ、TOPIXで見てもそうです。なのに、なんでこんなに喜びの声は少ないのだろうという。まぁでもそれはなぜかっていうふうに言ったら、要はピケティの公式の、

山路:r>g、

小飼:そうです、

山路:return on capitalは、economic growthを上回るという、

小飼:そうです。いや、だから「rがまた大きくなったね、以上」で終わってしまうんだよね。

山路:東京の不動産、平均で1億超えてますもんね。中古も確か平均で1億超えたんじゃなかったかな、東京の6区に関しては。

小飼:中古がちゃんと値が付くようになったというのは、それ自体はいいことなんだけどもね。

「アメリカもGAFAM抜いたら大して上がってないらしい」(コメント)

小飼:そうなんですよ、

山路:そうですね。これって結局、デジタル経済の拡大とその中に占めるGAFAMというか、Magnificent 7が力持っていってるよねっていう。

小飼:だから、やっぱり何らかの形でもっとお金持ってない人にお金を持たせないと、お金ちゃんと回らないよねという。あんまり景気というより、この場合は何ていうふうに言ったらいいのかな、

山路:需要の促進?

小飼:需要というのか、お金の流れなんだけど、まさにお金の流れなので、currencyなんですけれども。だから、ちゃんとcurrencyしてないという。

「東京の土地バブルまだ続くと思う?」(コメント)

小飼:えーとですね、中国のおかげで続いちゃいますね。今日本の資産が、土地も株も上がってる一番の理由っていうのは中国の人が買ってるからだというふうに、僕は見てます。というのも、それはリアルタイムではわかんないからね。誰が買ってるかというのは。

山路:中国の金持ちのキャピタルフライトなんですか?

小飼:けっこうフライトしてるよね。この株価のニュースでたぶんもっと大きなはずのニュースというのはTSE、東京株式市場が全世界株式の2位に返り咲いたという、

山路:え? ドルベースで?

小飼:ドルベースでも。いや、ずっと上海だったんだけども。

山路:それは日本株が?

小飼:さらに同様の大きなニュースとしては、インドの株式市場が香港株式市場を抜いたという。

山路:それは当然っちゃ当然、

小飼:それは喜ぶニュースではないんです。なんでそうなったかというと、確かにインドの株式市場が成長したというのはあるんだけども、それ以上に香港の株式市場の値が下がってるの。
 だから、どっちもネガティブな理由で順位を上げてるんです。

山路:香港から資金が逃げてるんだ。

小飼:そうなんです。

山路:それでインドとか日本に行ってるわけだ。

小飼:少なくとも株式市場的にキャピタルフライトは起きてるんですよ。あんまいいことじゃないです。

山路:なんか、株価が上がってうわーやったみたいな話ではぜんぜんないわけなんですね(笑)。株価一つ取っても。

小飼:だから、株価が景気に連動してない、というね。

山路:景気ってしかし、そもそも何なんですかねっていうことをさっきナオヤさんにも聞かれたところなんですけれども。何なんですか? 景気っていうのは。バブルの時、バブル景気って言ったじゃないですか。

小飼:僕はじつはバブルを知らないというのか、経験してなかったんですよ。だから、僕の世代であればバブル経験してるはずなんですけれども。僕の妻とかも1年上の、バブル経済真っ只中でそれをちゃんと浴びてたんですけど、僕はちょうどその頃日本にいなくて(笑)、遠目で見る立場だったんですよね。

山路:弾さんは、日本のドットコムバブル的なものは経験したけれども、という感じですよね。じゃあ、でも景気のいいっていうのはあったわけでしょう、弾さんがCTOとかやってた時なんか。あの時期は。

小飼:今考えると局所的なものではあったよね。ただ、今ほどペシミスティックではなかったね。なんだったっけ、1999年の7月に世界が滅びる云々という、

山路:ノストラダムスのあれね、

小飼:だから、それの後だったということもあるし。

山路:99年無事に抜けたからとね(笑)。これ結局、景気ってこのコメントにもありますけど、景気イコール大勢のお気持ちなんですか?

小飼:うん、そう思うよ。

山路:バブルの時だってそんなに金持ってない奴が大騒ぎしてましたもんね。

小飼:どっちかっていうと、経済学というより心理学、僕は前から言ってるんだけど経済学というのは物理学プラス心理学だと。じつは心理学が占める割合のほうがずーっと大きいんだよね。

山路:モノを買うかどうかなんてね。

小飼:だけど、物理は切り離せないわけ。どんなにお金があっても、たとえば熟練工の数というのは急に増やせないわけね。お金さえあれば、万博も、能登半島の復興も両方できるでしょっていうのは、お金だけ見ればそうなんだけども。

山路:ヒト、モノがないやろっていう、

小飼:そうそう、ヒトモノはどうなのかという、そこも切り離せないんだよね。本当にない袖は振れないわけですよ。だから、いくらお金積んでも地球は一挙に二つになるわけではないので。

スタッフ:すいません、ちょっと今の少し衝撃的だったんですけど、わかってはいるけど衝撃的だったんですけど。じゃあこの失われた30年って言われているんですね、

山路:まぁ言われてるよね。

スタッフ:ですよね。っていうのもひょっとしたら、気持ち一つでなんとかなってたかもしれないってことではない?

小飼:いや、それはすごいあるよ。

山路:そうなのですか?

小飼:すごいあるよ。だから、僕はもう気持ちが8割、いや9割5分くらいだと思ってる。

スタッフ:だから、このいわゆるロスジェネとか失われた30年とかっていうラベリングそのものも、けっこうこのネガティブな効果としてはデカかったかもしれない?

小飼:デカかったというよりも、なんでこんなしょぼい仕事をしてるのにこんなにもらってるんだっていう論法が流行ったでしょ。いや、だから特に大阪だと維新がそれ流行らせて。

山路:バスの運転手の給料高いとか、そういうやつですよね。

小飼:そうそうそう。でも、それをやったら却って格差が広がってしまったと。プチ・クメールルージュをやってたわけですよ。

山路:人の心を折る政策をやって、精神的な無力感をみんなが持つようになっちゃったっていう。だからこそ、それを反転させようと新聞なんかも躍起になって、株価が上がって、うまくいってるっていう感じのことをやってるんじゃないかと思うけど。

スタッフ:弾さんもおっしゃったように、すごいニュースって言われたことは俺の耳には入ってきてないですし。なんとなく株価は上がってる、しかも最近よく出てるのはバブル以来っていう言葉をよく聞くようになり。

NISAと楽天証券と日本の景気

小飼:いや、だから資産は上がってるのよ。土地も建物も株価も。

「NISAに全フリしてますけど、やめといたほうがいいですか?」(コメント)

小飼:それはどれくらい資産を持ってるかっていうのにもよるけれども。結局NISAにしろ、iDeCoにしろ、その果実を回収するっていうのは爺婆になった後なんだよね。結局のところ、そこまで待てますか、というお話でもある。

山路:それが待てるのであれば、NISAでやってる積立投資っていうのはドル・コスト平均法(で悪くない)ということですすよね。

小飼:それでやっぱり思い起こすのは、楽天証券の山崎さんだよね。このあいだ食道がんで亡くなった、65歳で。

山路:何をやったんですか、

小飼:たぶん、日本でインデックス投信を一番推した人なんじゃないかな、山崎さん。

山路:それって、株の初心者には良かった話ではないですか、全般的にいえば。

小飼:いや、だけどそれを言ってた本人が65歳で死んじゃったってさ、

山路:本人は果実を受け取れなかったっていう意味ね、

小飼:ダメじゃん。でも、よくあることなんだよね。そうそう、ちゃんと将来に備えて積み立ててたら、将来がバッサリなくなってしまったという、それまたよくあることなんだよね。若くして亡くなるっていうのも、もう珍しいことではないんだけど、でもよりによって、なんでインデックス投資を推してた人というのがバッサリなくなっちゃうのかなって。

山路:あと10年、20年生きないと元取れんぐらいだろうっていう感じの、

小飼:そうそうそう、お前まだ生きとったんかいぐらい、ねえ。

「そういえば楽天グループ大丈夫なのかな」(コメント)

山路:これは楽天証券の文脈で言ってんのかな。

小飼:いやー。綱渡りしてますね。

山路:ただ楽天グループが大きくコケたとしても、楽天証券が消えて、べつにそれで証券口座を持ってた人が困るってわけではないでしょうから、それは大丈夫でしょう。

小飼:まぁでも楽天カードとかかなり便利なので(笑)、楽天グループがなくなってしまうというのは、かなりもったいないけど。でも前にも言ったように、No one is too big to failなんですよ。だから、コカすには大きすぎるものというのはないんです。国ですらそうです。前にも言っている通り。日本クラスの国でも、人類はその1つや2つなくしたところで大丈夫なんです。

山路:安心しました、とは言えないですね(笑)、そう言われても。

小飼:個人的にはやっと面白くなってきたか、なんですよね。

山路:どれについて(笑)?

小飼:こう言うのもなんですけども、楽天ってモバイルに手を出さなければ安泰だったように見えるじゃないですか。実際にそうだったと思います。でも、安泰でなくなったっていうことは、そこで経営が必要になったわけです。

山路:経営者が死に物狂いに頭使わないといけないという、

小飼:そうそう、安泰の状態であればマネジメントは必要ないんですよ。ほっとけばいいんですよ。

山路:その文脈で言うんだったら、最近めちゃめちゃ日本企業、不正が相次いでるじゃないですか。

小飼:そうなの。

山路:あれって、そういう同じことと言えるの?

小飼:同じことっていうのと、

山路:そういう、つまり経営をしなくて済んだから、日本経済って良くならなかったんですかと。

小飼:経営される側が、経営する側を甘やかしすぎたというのはあるよね。

山路:それは従業員ってこと?

小飼:そうそう、従業員が会社に対して。国民が政府に対して。

山路:まぁ日本企業の従業員って、休み取らせてくれとも言わないもんね。休み取らせてくれってちゃんと強く詰め寄れば、マネジメント層はそれでやりくりするための頭を使わなきゃいけなかったはずなんだけども。それをやらなくて済んでたわけだから、甘やかしてたわけなんでしょうね。

小飼:甘やかしてたわけです。不正をしてまで、甘やかしてたわけです。

スタッフ:甘やかしについてなんですけど、この場合だと政府が企業を甘やかしてたってこともあるんでしょうか。

小飼:それもあります。

山路:コラって怒んなかったような気が。

小飼:SBI証券に対する行政処分の軽さというのは、ちょっと呆れたね。

山路:日興コーディアルとかに関しても(笑)、いろいろそうですよね。

スタッフ:じゃあぜひ、国民側としては企業にお賃金をあげろと、

山路:これって賃上げがまず先決みたいなことをよく最近言いますけど、賃上げって企業にあげろっていうものなんでしょうかと。

小飼:それは労組の仕事だな。

山路:そうそう、つまり政府が民間企業に求めるのは違うのではないかと。

小飼:でも前にも言っているように、そもそも労働の対価以外にお金をもらう手段がないっていうこと自体、当たり前でないの。だから、パンデミックの初期の頃に10万円配ったじゃん。あれが1回こっきりだったっていうのは、本当にもったいないね。あれを継続するべきなんだよ。

「お二人はNISAガチ勢ですか?」(コメント)

小飼:僕はNISA口座を解約しちゃいました。あまりに制約が強いので。

スタッフ:すみません、それ旧NISAですか?

小飼:旧NISAです。でも、旧NISAだろうが、今のNISAだろうが、金融機関を一つに絞らなきゃいけないっていうのは変わらないわけです。だから、無税な代わりにものすごい縛りもきついわけですよ。

スタッフ:その縛りって、けっこう大きいんですね。一つに絞るって、わからないんで私は、それは。

山路:このガチ勢っていうのがよくわからないけど、NISAの枠をいっぱいまで使うっていう意味かな、ガチ勢っていうのは。

小飼:1800万は、ちょっと僕は、

山路:はした(笑)。

小飼:はしたとまでは言わないまでも、その1800万のためにやらなければいけない縛りが大きすぎる(笑)。

山路:このNISAの1800万の枠って、老後資金2000問題への回答ですよね(笑)、

小飼:そうなの。

山路:NISAでちょっと増やしたら、2000万足りるでしょって言ってるみたいな気がするんですけど(笑)、あとは自分でやってねと。

スタッフ:でも、あの当時と比べて、

山路:あの当時とは?

スタッフ:だから2000万問題っていうのが話題になった当時と比べて、

小飼:今でも別にぜんぜん終わってるわけじゃなくて、むしろ悪化してるかもしれない。

スタッフ:円安が進んでて、倍必要になったりとか、

山路:ああ、なってると思うよ。

スタッフ:いや、そんな笑顔で言わないでくださいよ(笑)、2000万どころか、4000万とか、

山路:2000万とかぜんぜん足らないと思ってる。

スタッフ:でも枠、1800万じゃないですか、

山路:NISAで買える枠が1800万だから、その1800万で買ったやつが増えた分っていうのはべつにいいわけやん。

スタッフ:足りるかな、

山路:たとえば、それが1800万が3600万になってるかもしれないじゃんっていう話。

スタッフ:足りるかな?

山路:老後資金問題でも出てきた、あのモデルがそもそもまずいと思ってる。夫は40年間ちゃんとした会社に正社員として働いてて、専業主婦の妻がいて、みたいなそんなモデルで老後資金2000万円足らないって言っても(笑)。そんなん大抵の人に当てはまんないでしょっていう。(年金と貯金だけで暮らそうとすれば)大抵の人はたぶんもっとかかりますよね。おそらくは。ただそういうことを言うと、社会不安が起こるから言わないんではないでしょうか。

スタッフ:景気のためには、こういう話題はしないほうがいいって感じですか?

山路:少なくとも、メディアはそう思ってるんじゃない?老後資金2000万問題をあんまりリアルに考えすぎると不安になりすぎる人が出ちゃうから、言わないようにしてるんじゃないですか(笑)。

スタッフ:でも備えなきゃいけないですよね、老後は誰にでもやってくるわけですからね。

山路:橘玲さんとかはよく平気で言うけどね(笑)、暗い話を。

「結局そういう不安が不景気の正体なのかもな」(コメント)

山路:まぁそういうことですよね。ちゃんと2000万を増やさなきゃいけない云々かんぬんって言うんじゃなくて、仕事があってちゃんと働いていけば、日々の生活だけじゃなくてプラスアルファのことができるみたいな希望が持てたら、それはべつに景気が良くなる話だと思うんですよね。べつにその2000万貯めろ、3000万貯めろってことが実現できなくても、ちゃんと働いた以上のお金がちょこっと得られれば、それだけで人のマインドは変わるものだと思うんですけど。

小飼:いや、逆説的だけれども、働かなくても得られるお金が誰にでもあるっていうふうに持っていくべきなのよ。

山路:まぁそれはそうなんですけど。ベーシックインカム的な話ですよね。

小飼:いや、だから太陽電池の電力っていうのはさ、お前が足で漕いで発電したのかって言ったら、違うでしょ。

山路:これまぁ本当に、太陽電池の効率とかがめちゃめちゃ良くなって、すげえ発電量増えてきたら、それだけで暮らしは賄えるわけですもんね。

小飼:だから、その辺の草でも食ってろという名言があったけど、でもその辺の草というのはあなたが生やしたわけではないよね。

「集団生活すればいい?」(コメント)

山路:それはライフハックとしては一つの考え方ではないですかね。やっぱり、あまりにもみんな個人で暮らすようになって、生活コストが上がっちゃったところはあるかもしれないと思うけど。

小飼:そこ、どうなんだろうな。

山路:確かに個人で使えるサービスが増えたから、個人で暮らせるようになったけど、その分コストが上がってるってことないですか、気のせいですか?

小飼:どうなんだろう、いや確かにまとめて住んだほうがエネルギー効率は上がるはずではある。ただ、あまり過密だと、今度は冷やすためのエネルギーというのが必要になってくる。確かに適切な密度というのはあるんだよね。

スタッフ:ここはですね、私はシェアハウス歴が4年ぐらいあったんで言えますけど、2人以上、3人以上集まると、今日本で話題になっている派閥ってやつができまして、そこのエネルギーコストもなかなかのものになるんじゃないかな、なんて思うんですけど(笑)。

山路:そういうムラ社会、イエ社会が嫌でどんどん核家族とか個別化してきたが日本の歴史だもんね(笑)。確かにその心理的なデメリットはある。「ユダヤ人は2人集まると3つの派閥ができる」でしたっけ、

スタッフ:そうなんですか(笑)、

山路:みたいな話がありますけどね。

「電気エネルギーで食べ物を作れたらいいのに」(コメント)

小飼:まぁ実際のところ、植物はまさにそれをやってるわけですよね。葉緑体の中で起こっていることというのは、まさに電力で二酸化炭素から有機物、炭水化物を作っているんですよね。いや、本当に電力なんですよ。
 だから人間が光合成するっていうのは無理だっていうのは、僕自身も試算してます。だから、外部に頼るしかないんだよね。そこの部分っていうのは、残念ながら。ちゃんとリンク出します。

山路:それは光合成の試算の話?

小飼:あ、リンク見つけた、今出しますね。

「人間の細胞に葉緑体を埋め込むしかない」(コメント)

山路:人間みたいに動こうとすると、それだけでは足らないと思うな。

小飼:それだと、人間の面積で足らないというのは。だけどもね、ウミウシくらいだとできちゃうんだよね。葉緑体を自分のところで持ってて、全部賄うというのは。

山路:まぁウミウシになりたいとはあんま思わんけどもなぁ(笑)。じゃあちょっと金の話が出たところで、

小飼:ウミウシとかサンゴとか。

「なんで満点じゃないんだChatGPT」と林譲治先生の新刊

山路:AIのほうに行きますか。学力で人間を上回ったんじゃねえのっていう話。GPT4のChatGPTで共通テストを解いてみると、数学以外は人間の平均点を上回りましたよと。なかなかすごい話ですよね。

山路:さらにDeepMindがAlphaGeometryという新しいAIモデルを発表しまして。それっていうのは、幾何学問題を解く、数学オリンピックってあるじゃないですか、世界中から数学得意な奴が集まって難しい問題にチャレンジする。その金メダル銀メダル銅メダルとあるんですけれども、このアルファジオメトリーは銀メダリストよりもいい点数を取って、金メダリストに肉迫する成績を取ったという(笑)、幾何学問題でも。

小飼:でもこう言うのもなんだけど、どちらもすでに答えがわかっているというのか、逆に答えを先に用意して、そこから問題を作った問題というのを解かせているわけですよね。

山路:しかし、それって人間用の受験の入試問題だってそうではないですか?

小飼:だからまさにそうで。本来の学力というのはこれから学んでいく力、のはずですよね。未知のところから新しいデータを受け取って、それを解釈する力ですよ。ところがこの場合というのは、新しいデータというのはないわけですよね、過去問なわけですよね、解いているのは。だから、それ学力って言っていいの? でもさ、我々自身、そういうのを学力だと勘違いして言っているところはあるよね。だから、それは本来の学力とは何ぞやって言ったところで「学ぶ力」だよね。(今の学力は)学んだことを思い出しているだけだよね。

「学ぶ力を判定しているという試験ってあるのでしょうか?」(コメント)

小飼:そもそもそういうテストというのをきちっと作れてないよね。そう、こう言うのもなんですけど、いわゆる学力テストというのはテストすべきことをテストしているのとはちょっと違って、テストできることをテストしているに過ぎない。

山路:まぁコストも安いですね、過去問でシュシュッと(笑)。

小飼:まぁそういうことなんです。

山路:だって学ぶ力なんて、それを判定しようと思ったらどれだけのコストがかかるかわかったもんじゃないから。

小飼:まぁそうなんですよ。

山路:それにしても共通テストの平均点60点ぐらいで、ChatGPTがそれをさらに上回ってるということで言ったら、今世の中の人が「学力」、まぁカッコつきの学力って思ってることに関しては上回ったとも言えるのでは?

小飼:でもさ、過去問を全部食わせてこの程度かっていうのはあるね。

山路:ああ。

小飼:なんで満点じゃないんだと。満点近い点数を出すやつというのは、人間にすらいるわけですよ。過去問を全部解いてない人間にすら、いるわけですよ。過去問、全部解いたんだろう、お前らと。それでその程度かと。

山路:なるほどね。

小飼:こういうのもなんだけど、学力という意味ではものすごい非効率だよね。これだけ膨大なデータを食って、月並みの、ちょっとできる高校生程度にしかできないのか。

山路:なるほど(笑)、そういう見方もあるか。うーん。

小飼:ものすごい効率悪いよね。

「今年どのくらいAIのおつむ良くなると思う?」(コメント)

小飼:いや、だからやっぱりこれも、何をもって比較するのかという。

山路:OpenAIがニューヨークタイムズから訴えられた事件で、サム・アルトマンはニューヨークタイムズの新聞記事、べつに必要ねえよと。AI賢くするのに、だって生物学、高校レベルの生物学マスターするのに教科書1000冊も読まないだろって言い放ったという(笑)。

小飼:でも、実際にはさ、10万冊くらい読み込んでるわけだよね。それでこれだよ。ニューヨークタイムズの記事も必要ないとは言いつつ、でもそれは売り言葉に買い言葉で言ったのであって、そもそも最初のうちというのは食わせられるだけ食わせてたじゃん。ニューヨークタイムズというのは、有料であれば過去記事、全部読めるんだよね。実際にニューヨークタイムズの記事を調べればわかることというのは、そのまま答えてたわけだよね。思い出してただけなんだよ(笑)。記憶力がいいだけで、これってさ、本来のコンピューターじゃん(笑)。だから、じつはものすごい新規性が薄かったな、という。我々が学力だと勘違いしていることというのは、じつは単なる思い出す力だったんじゃないかと。

 

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