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小飼弾の論弾 #267 「ダイハツ不正事件と日鉄のUSスティール買収に見る製造業の行方と、生成AIに明け暮れた2023年の振り返り」

2024/01/04 07:00 投稿

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 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2023年12月26日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2024年1月9日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2023/12/26配信のハイライト

  • ボイジャー通信障害と「USスチール買収と製鉄業の規模感」
  • 「エンジニアでなければできない不祥事だった」ダイハツと日本の「淀む金」
  • 「万博と談合」と「パナマ運河に異常気象の影響」
  • Googleの広告ビジネスと、買ったモノ
  • 2024年の展望について
  • 新NISAと投資、株式市場の今後

ボイジャー通信障害と「USスチール買収と製鉄業の規模感」

山路:今年、最後の配信ということで、後で今年の振り返りをしようと思うんですけども。とりあえず、新しいニュース。ろくでもないニュースが多いので、ちょっと明るいニュースから言ってみましょうか(笑)。多少なりとも楽しげな。

小飼:楽しいの? これ。

山路:いうふうな、タイトルだけ見るとそう見えるんですけれども、ボイジャー1号、1970年代に打ち上げられて、

小飼:76ですね、

山路:もう海王星の向こうに行き、しかも設計の想定を遥かに超えて今でも現役だという、

小飼:そうなんですよ、今でも通信ができるという。確か親子3代でプロジェクトに関わってるっていう人がいるんだっていう、

山路:マジで(笑)? もうドラマ化決定じゃないですか、それ。その長生きしているボイジャー1号がシステム障害が起こって、

小飼:一番最初の映画の『スタートレック』で宇宙人に捕まるんですよね、ボイジャーが。どっちだっけ? 1号のほうか、2号のほうか。それをちょっと彷彿させますね。

山路:劇場版でタイムトラベルするやつあったじゃないですか、その最後で、なんかそのファーストコンタクトのやつに戻ってくる話ってありませんでしたっけ?

小飼:どうだったっけ?

山路:あーすいません、私、テレビシリーズの方は観てなくて。

小飼:一番最初の映画『スタートレック』って何年前だ? いや、だから、もちろんミスター・スポックも生きてたわけですよ。レナード・ニモイも亡くなっちゃったけどね。

山路:あれって、スタートレックの舞台は23世紀とかでしたっけ? 21世紀じゃないですよね、確かもうちょっと後でしたよね、22か23かなんかそんなようなものできたんですけど、なんか現実の世界って意外に未来っぽいのはAIくらいなのかな(笑)、

小飼:いや、でも例えば『スタートレック』と比べて、iPhoneのほうがよっぽど出来がいいし、『スタートレック』のコミュニケーターってあるじゃないですか、「Beam me up!」ってやるやつですね、よりは今のスマホのほうが遥かに高機能だし。

山路:しかし、ボイジャー1号で言うとこれなんか、1970年代に設計したやつとか関係したエンジニア、天才ぞろいだったってことなんですか、これは。

小飼:アポロのコンピューターにしてもすごいけれども、

山路:ファミコン以下とか言われてますよね。

小飼:もちろん。だからこそデバッグしきるのかなと。要は全体が小さいので。

山路:しかも宇宙空間だったら逆に、なんていうか計算はしやすいわけですもんね。重力の影響とか、そういう要素っていうのは地球上の話じゃなくて、宇宙空間の物体の動きとかっていうのは計算しやすかったっていうことなのか、

小飼:まぁ宇宙というのは基本的に静かなところだからね。あとボイジャーの成功の秘訣の一つとしては、地上に完全なレプリカがあるんですよ。だから、そこで全部テストできるんですよ。

山路:さすがに重力の影響はいかんともしがたいところはあるだろうけど。

小飼:重力とか、まぁ宇宙線ですとか、だから全く100パーセント同じ環境にいるわけではないけれども、少なくとも同じハードウェアを積んだものに同じソフトを入れたら同じように動くというが期待できるわけですね。

山路:じゃあ今回の通信障害も、地上でなんやかんやある程度試してから、

小飼:それは必ずやってる。けれども、もう既に信号が届くまでに何時間かかるんだっけ? そういうところなので。
 あれだよ、SSHでログインとかっていう世界ではないからね。実はもうインターネットのプロトコルであるところのTCP/IPはもうタイムアウトしちゃって、そのままでは動きません。

山路:UDPなら動くみたいな話(笑)? そんなことも、

小飼:いや、UDPとかではなくて、でもタイムアウトしちゃいますね。

山路:しかし、さすがにそういうネットワークエンジニアとか、ソフトウェアエンジニア、これ胃が痛くなりそうな感じしますね。

小飼:いや、本当に。

山路:やりたくないですよね(笑)。

小飼:クラウドにSSHでログインするのとはわけが違いますからね(笑)。

山路:なんか甘やかされてますね、もうすっかり今のエンジニア(笑)。

小飼:でも、その程度だってやっぱり緊張しますよ、サーバー再起動かける時というのは。

山路:このNASAで使われた、ボイジャーとかに使われた技術ってなんかこの民間にフィードバックとかされているものがあったりするんですか?

小飼:信号のエラー訂正処理とかっていうのは、ボイジャーの頃に確立された技術を洗練したものを使ってますね。

山路:へぇー、

小飼:有名なところだと、LDPC、日本語だと低密度パリティ検査符号?

山路:それがもう有線LANなり、無線LANなりにそのまま、

小飼:そうです、だからそれのおかげで10gigabit Etherとかも動くんですよ。だから、それよりも、なんでLDPCが使われるようになったかっていうと、計算アルゴリズムとかも良くなったんですよね。昔は計算が複雑すぎて使いづらかったんですよね。だから、もう少し軽めのリード・ソロモンとかが使われてたんですけれども、今や、

山路:ハードウェア的なものっていうよりも、そういう数学的なところがこの宇宙開発なんかで開発されて、それが民間に応用されたっていうところが、

小飼:民間に応用されたか、どういう経路なのか。同じ技術が使われてますよというのは。

山路:なんか意外なとこでつながってきてますね。じゃあ、ちょっと明るいニュースの、素晴らしいニュースの後で軽い、じゃあ軽いちょっとクソみたいなニュースいっておきましょうか。この辺とかどうですか(笑)。

小飼:あー。うーん、「またお前」感、満載だよなぁ。

山路:これってどういうことなんでしょうか。脆弱性を診断する、

小飼:お名前ドットコムというのは要はDNSのレジストレーションを商売でやってるわけですよね。

山路:前々回とかでも出てきたような。

小飼:それでまぁ安いので有名なんですけども、そこでドメインをレジスタしてる客のサーバーを勝手に診断する。脆弱性診断というのはまぁ攻撃するわけですよ。

山路:そうなんですか(笑)、

小飼:そうなんですよ。

山路:すごいこう、ポートスキャンみたいなことを、

小飼:まぁまぁ、要するにポートスキャンです。早い話がポートスキャンです。

山路:で、それが何か見つかったら、その客のところにあんたのとこ脆弱性あるよ、と。

小飼:そうそうそう、勝手に診断して勝手に診断書を送りつけるという。そのうちのいくつかは客になってくれるだろうという魂胆なんだろうけれども。

山路:これってサーバーに負担とかかけないんですか?

小飼:だからもちろんかけるけれども、その程度でコケるサーバーというのはちょっとショボすぎてインターネットに公開しておくべきではないと僕も思いますけれども。それでも例えば地方自治体のサーバー、例えば図書館のサーバーとかっていうのはその程度の負荷でも落ちちゃったりした事例があるわけですよ。だから、これは脆弱性診断ではなくって、確か高校生だったっけな、図書館のウェブサービスをウェブスクレイピングしてたら、それが攻撃とみなされてっていうことがありますよ。インフラハック事件。

山路:それはその高校生にちょっと同情するとこありますけどね。さすがにそれで落ちるとは思わんやろみたいな。

小飼:あったあったあった。

「それヤクザのやり口」(コメント)

小飼:そうなんですよ。

山路:これはなんていうか罪に問われるようなものではなくて、どっちかというと道義的とか、そういう話?

小飼:まぁそうですね、はっきり言って。道義的にどうよという。

山路:で、このお名前ドットコムをやってるのが、ネットで診断をやってるのがGMOの、

小飼:ちょっと参考として、

小飼:そうなのよ、だからこれよりは負荷かけますね、脆弱性診断のスキャンというのは。

山路:そんな商売があるのかと思いましたけどね。じゃあ、もうちょっと、これはクソじゃなくて、いいかどうかっていうのは、どう判断するのか難しいところなんですけど、大きなニュースとして、この日本製鉄の話をいっておきましょうか。これ、デカくないですか?

小飼:まぁデカいけれども、こう言っちゃなんだけども、中国の製鉄がデカくなりすぎて、これもあんまり大きく見えなくなっちゃったね(笑)。

山路:2兆円って。

小飼:2兆円という金額よりも、いちおう製鉄なのでどれだけ鉄を作ってるかっていうので、USスチールってあれじゃないかな、1500万トンとかそんなもんじゃないかな。

山路:名前がデカい感じするから、上のほうにいるのかと思ったら、けっこう下のほうなんですよね、順位的に見たら。

小飼:まぁそうですね、今や中国がすごいことになっているので、中国の大躍進前っていうのは大抵、粗鋼生産量、まぁ要するに鋼の生産量っていうのは日本とソ連とアメリカがトップ3っていう感じで、だいたいそれがそれぞれ1億トンずつぐらい。じゃあここで問題です。今の中国の生産量ってどれぐらいでしょう?

山路:もうわけがわからないほど上回っちゃってるってこと?

小飼:桁が1個違う。10億トン。

山路:はぁー、

小飼:はぁーでしょ。なんて言えばいいのかな、日本は2位とか3位、だいたい1億トンぐらいでずっと来てるんですけれども。

山路:USスチール、さっきなんか1500万トンとか言いましたっけ。全然じゃあもうなんていうか、中国の製鉄業の視点から見たら大きなニュースではないってことなんだ。

小飼:そうですね。ただ中国はけっこう、10億トン作ってる割には会社がいっぱいあるという感じで。ちなみに会社として世界で一番鉄を作ってるのはミッタル・スチール、インドの会社。

山路:中国で製鉄業がやっぱりこんな盛んっていうのは、その中国の需要が、

小飼:需要があるから、

山路:内需がすごかったっていう。

小飼:だから、道路も高層ビルもいっぱい建ててるでしょ。だから、それは鉄なんがなきゃ、当然建てられないわけで。だから前人未踏ですね、中国の今の粗鋼生産量というのは。

山路:じゃあこれが本当に、今年何回か出ましたけど、恒大とかそういう不動産大手なんかがいろいろまずいことになってるじゃないですか。その辺で建設とかそういうところでガクンと落ち込んだりしたら、かなりヤバいことになる?

小飼:その可能性は、ヤバいかどうかはわからない。

山路:国外に鉄が輸出される?

小飼:むしろありがたいことかもしれないというのも、ものづくりの中で一番CO₂を排出するのが製鉄業だから(笑)。

山路:CO₂排出するのは中国に任せといてみたいなことができるってこと(笑)? つまり全体として減るからいいって意味?

小飼:まぁそういうことですね。

山路:でも中国国内でダブついた鉄が海外市場に出るということもありそうではないですか?

小飼:どうなんでしょうかね、そこは。いや、ほとんど内需のためなんです、中国の粗鋼生産のすごいところというのは。かつては日本からとかも輸入してたりもしてたんですよ。あともう一つのポイントとして、日本とかアメリカとかっていうのは、鉄に関してはもう成熟してるので、今言った日本製鉄とかUSスチールとかっていうのは、鉄鉱石をコークスで還元して鋼を作ってるんですけど、そうではなくてリサイクルの鉄がどっさりあるんですね。アメリカ国内の需要っていうのは、もうリサイクル鉄のほうが、

山路:リサイクル鉄のほうが大きい?

小飼:大きい。

山路:へー、なんか思ってたのと全然違う、

小飼:そのほうが安上がりでエコではある。

山路:「都市鉱山」的な話ですもんね。

小飼:ただ、やっぱりものすごい高性能な鋼というのは、リサイクルするとどうしても不純物が入っちゃうので。

山路:一から作ることになるかもしれない、

小飼:だから一定以上の品質のものっていうのは、リサイクルではできない。

山路:一からやるなり、まぁリサイクルするしてもコストはかかっちゃうみたいな形になるわけだ。

小飼:毛沢東がもう土法炉という、有名な。

山路:ゴムタイヤ燃やしてなんか、

小飼:そうそう、大躍進の。だから、それはあまり効率が悪くて大失敗したんですけども、今の中国はまともに高炉を作って、それで普通に鉄鉱石とコークスから、鉄を作ってます。

山路:日本製鉄のUSスチール買収って、べつにどっちにとってもそんな悪い話ではないように思うんですけど、だけどアメリカの労働組合、すごい反対が起こってるそうですね。

小飼:だからやっぱりノスタルジックバリューはあるでしょうね。いや、でもそれを言ったらさ、半導体のメモリーとかでも起こったことなので。だから別にUSスチールが国営企業のものになったとしても、例えばアメリカの国防とかに何らかの影響があるかって言ったら、そりゃないっすよ。それを言ったらさ、東芝がウエスチングハウス買ったほうがよっぽどヤバかった。

山路:確かに。しかも日本企業が海外の、特にアメリカ企業の買うのって、バブルの時の日本の振る舞いを彷彿させるのかなとかも思ったり。

小飼:そういうことではなくて、でもそれを言ったら、さっき言ったように世界で一番大きな製鉄会社というのはインドのミッタルというふうに言ったのは、ヨーロッパの製鉄業者を買ったからですよ。だからオーナーは誰でもいいんですよ。製品作ってくれさえすれば。

山路:なるほどなぁ。でもそこのところで感情を完全に切り離せないというのが大変なところだなぁとも思いましたけどね。

小飼:やっぱり、象徴的な産業だしね。

山路:だけど、このコメントでありましたけど、「USスチールって世界27位なんだ」っていうことを、アメリカ国内の人もあんまり知らないんじゃないかって気がしますけどね(笑)。反対してる人も含めて。

小飼:そもそも鉄がどうやって作られてるのかっていうのを、知らない人のほうが多いでしょうね。

「エンジニアでなければできない不祥事だった」ダイハツと日本の「淀む金」

山路:じゃあ今度はわりと大きなクソなニュースを。

小飼:うわー、そびえ立つクソ来たー。

山路:年末にぶち込んできましたよね(笑)。

小飼:キター。

山路:23年、最後にでかいやつ来ましたけど。

小飼:フォルクスワーゲンのディーゼルゲートというのが霞むよね、これ。

山路:影響が大きすぎてまだみんな、全体像が見えてないんじゃないかという気もするんですけど、どうですかね。とりあえず国内外での出荷は停止した、

小飼:よく、こういう企業不祥事があると悪いのは経営だって言うじゃん。まぁでも、もちろん経営者は責任をどの道、免れないんだけども、よくあるのは、部下は全然悪くないって言うんだけども、ことこれの場合っていうのはちょっと免責しづらい。

山路:そうなんですか?

小飼:それはなぜかっていうと、具体的にどうやって不祥事をするかというのを決めてたのが、彼らだから。

山路:現場の。

小飼:だから、上の人はとにかくテストにパスしろとしか言ってないけど、例えば具体的にテストの時だけバルブを取っ替えるとか。
 エアバッグのテストの時に時限装置を仕掛けとくとかっていうのを考案して、実施したというのはその現場の人たちなので。

山路:なんかクリエイティビティあふれてますね(笑)。

小飼:だから言われたことをやっただけですっていう言い訳はもうできないので。できません、それは。不祥事のレポートの最後に、社員たちは真面目なのだから、必ず立ち直れると思いますって言うけれども、こう言っちゃなんだけども、真面目に不祥事をしたとこなんですよ、問題は。真面目だから、ダメなの。エンジニアでなければできない不祥事だったの。

山路:専門家が専門家の知識を生かして。

小飼:はい、その通りです。例えばブラック経営の病院があったとしましょう。そこで外科医が手を抜いたとしましょう。器具をお腹の中に忘れたり、意外と多いみたいですね(笑)、そういう事故って。それって外科医を免責できますか? 病院の方針でやったのかもしれないけど、具体的に手術をしたというのは、その外科医ですよ。だから、技術者は免責できない、これは。

山路:これって、それに関わった人間というのを、具体的にとっ捕まえるとか、ペナルティを喰らわせることになる、

小飼:いや、どうすればいいかというので、僕、これで思い出したのはルワンダのジェノサイド。

山路:えっ、ルワンダのジェノサイド?

小飼:はい。前世紀の終わり頃にやった、

山路:フチ族とツチ族。

小飼:そうです。だから、国民の2割ぐらいが刑事犯。これって裁きができるのかと。

山路:それは難しいな。何をどうすればいいのか、ちょっと見当がつかないですね、多すぎて。

小飼:そうなんですよ。これ、ダイハツだけのことではないじゃないですか。トヨタ傘下だと、日野もやらかしてるんですよね。

山路:もう日本の自動車業界、何らかの形でみんな不正やってたのかみたいなイメージはしちゃいますよね。少なくとも海外の人にとっては。これってトヨタの責任はどう思います? トヨタの責任に関して。

小飼:いや、もちろんある。だからそれは免れない。こう言っちゃなんだけれども、要するにトヨタのプロダクトが良かったというのは、儲からないプロダクトを他に押し付けてたからっていう見方だってできるわけですよね。

山路:ジャストインタイムとかっていうのも、結局、運送業者に押し付けてないかみたいな、トヨタの前でずらっとトラック待ってるやろみたいな、

小飼:そうそうそう、在庫コストを運送業者に押し付けてはいないかというね。で、トヨタの決算は、空前の黒字だったでしょ(笑)。

山路:それは子会社から吸い上げてるからかもしれないという(笑)。

「車関連の会社にものすごいブラックが多いのなんでだろう」(コメント)

山路:確かに、車といえばビッグモーターとかもありましたしね、まぁ車関連、製造ではないけど。なんなんだろうなぁ。この、伝統的、

小飼:でかい産業だけあって、不祥事をやらかした時に目立つということはあるでしょうね。

山路:あとは、昔ながらの製造業というのが、今の時代に稼ぎ頭でなくなりつつあるところもあるみたいな。

小飼:そうは言っても、トヨタは稼ぎ頭でもあるわけじゃん、日本にとって。

山路:まぁ、そうですけどもね。

小飼:いや、でもなあ、今、軽自動車を作れているところっていうのは、スズキ、ダイハツ、ホンダ、あと三菱か。で、スバルが辞めちゃったんだよね。実は軽自動車みたいな薄利多売なものを作って儲けを出すっていうのは、けっこう偉いことなんだよね。しかも単に薄利というだけであって、軽自動車であっても衝突安全とかっていうのも確保しなければいけないし、すごい大変なわけですよ。ただ、それを作れるのであれば、それは、

山路:確実に売れる商品だっていうこと、

小飼:日本では確実に売れる商品なので。だからすごいことなんですよ。軽自動車を作って、それを飯のタネにしてるっていうのは本当にすごいことなんですよ。どの自動車メーカーにもできることではない。あまりに難しいので、難しいけども、あまりに需要があるので、軽自動車を作ってないところもOEMで作ってもらってるじゃないですか。

山路:トヨタ自身が、

小飼:トヨタ自身もそうだし。日産のサクラも作ってるの、三菱ですしね。

「でも、昔と違って軽自動車が高額です」(コメント)

小飼:そうですよね。だいたい今、真っ当な軽自動車って言うと150万ぐらいはしちゃいますよね。でですね、実は軽自動車っていうのは無理してるところもあるんですよ。なんて言えばいい、理想のコンパクトカーよりもちょっと小さいんですよね。

山路:安全性とか出力とか?

小飼:そう、例えば軽自動車のエンジンっていうのは660ccがマックスじゃないですか。これってけっこう小さなエンジンを無理して動かしてるっていうこともあるんで、一回り大きなフィットやヤリスより燃費悪いんですよ。

山路:じゃあ本当に軽自動車が日本で売れるのは、単純に税金の問題?

小飼:そうです。はい。でも、その軽自動車もけっこう年々大きくなってたんです。あの有名な45万円スズキアルトの頃というのはエンジンも550ccでしたし、最高時速も80キロだったんですよね。でも、ちょっとそれじゃ衝突安全とかを確保できないっていうことで、一回り大きくして、一回り大きくしたのでエンジンも一回り大きくしないと動かせませんよねっていうことで、660ccになって今に至ってるんですよね。だから今の軽自動車というのは、元祖ミニよりもデカいです。

山路:これって軽自動車という規格は維持したほうがいいんですか?

小飼:だからこれも日本の行政の鬼子ですよね。発泡酒みたいなもんです。

山路:第3のビールとか(笑)、

小飼:でも、ただ軽自動車規格があったおかげで生まれた名車というのもけっこうありますね。だから、軽トラとかは傑作ですよね。アメリカとかでも売れちゃったりしてますよね。

山路:すごい中古が人気らしいですもんね。

小飼:そうなんですよ。

山路:これってただEVとかが今後普及してくるんだったら、軽自動車のクラスみたいなのもEVで、

小飼:というのか、軽自動車こそEV化が楽なんですよ。サクラ売れてるでしょ? 日本ではアンチが多いEVも、サクラは売れてるわけですよ。

山路:そうかそうか。で、しかもそういうコンパクトなEVだったら、海外でも売れそうですしね。意外に、そこに商機はあるのかもしれない。

小飼:ところで、こういう不祥事が出て、全工場が止まるっていうのはすごいよね。

山路:あと海外で、例えばフォルクスワーゲンの不正ってすごい懲罰的な制裁金を食らったじゃないですか。海外で何らかの形で懲罰的な制裁を食らったりとか、あるいは大規模なリコールになったりとかっていう可能性はないんですか?

小飼:まぁ幸か不幸か、輸出車は、あんまり輸出してないので、ダイハツは。軽自動車メインだけあって。

山路:そうか、そうか、あの車種はほとんど軽自動車か。だから、海外でデカいやつを喰らうことに関しては、あんまり心配はいらないわけなんだ(笑)。

小飼:まぁ、それでも全工場止まるわけだね。

山路:何でしたっけ、関連する取引先8600だったか、なんか1万近いんですよね。

小飼:軽自動車とは言え、自動車というのはそういうものなんですよね。

山路:もうちょっとしたらトヨタがEVで負けて、愛知のほうとか大変なことになるかなと思ったけど、それ以前にダイハツの影響で愛知のほうの雇用、大変なことになりそうな気配が見えてきましたけどね。

小飼:ダイハツの工場、九州にあるんじゃなかったっけ、それはともかくとして。

山路:一番でかい工場は愛知のほうじゃなかったですかね、ダイハツ。でまぁ、このちょっとどんよりするニュースが出たところで、ついでにもう一つだけ、どんよりするニュース、ちゃちゃっと済ましちゃいましょうか。日本のドル建てGDPが世界21位に。

小飼:per capita(1人当たり)でね。

山路:そうそう。これ、イタリアの下に来たんですよね。ほぼ韓国と同じ、韓国より1位上だけど、まぁだいたい似たようなもんと。なんなんすかねという、順調に落ちてるじゃないですか。

小飼:でもその一方で、大企業の決算を見ると過去最高益っていうところが多いわけですよね。だから、どこに問題があるかというのはこれはわかってるわけですよ。要は、底辺の人たちにもっと金を渡さなければいけないというのは、明らかなんですよ。そう、だから『弾言』我々が書いてからどれくらい経つの?

山路:14年ぐらい? 15年か、

小飼:その時に「淀む金」っていうこと言ったんだけど、まさにそれですよ。

山路:ひどくなってますよね。

小飼:ひどくなってます。

山路:富裕層とか増えてるんですもんね。金額的にも数的にも。いや、弾さんもう金使わないしね(笑)。

小飼:無理。ごめん。

山路:いらないものはタダでもいらないと思ってるもんね、弾さん(笑)。いやー本当に、特に日本って内需が大きいのに、そこで内需を活発にしてしかるべき、

小飼:内需を罰してるからね。

山路:消費税上げたりとか。

小飼:で、イヤでも出ていく費用というのが今年はやっぱり大きくなった、やっぱり円安というのはコンシューマーにとってはもうマイナス要因なので。だから、普通に燃料代とか電気代とかイヤでも出ていく費用が上がるっていうのは、これはやっぱり円安のせいですからね。

「格差が広がっているのかな」(コメント)

小飼:広がってます。

「万博をやって金を使おう」(コメント)

小飼:いや、だから違うんですよ。

山路:その万博のとこに使われる金って、みんなのとこに回る金だったらいいですけど、そうじゃないですもんね。それこそまさに淀む金の代表的な例というか。

小飼:パンデミックの時に10万円配ったけど、1回こっきりだったでしょ。だからあれを続けてたら、話は違ってたかもしれない。

 

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