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小飼弾の論弾 #43「監督のばかうけ発言すらネタバレ?ファーストコンタクトSF映画『 #メッセージ 』のすごさを全力で解説」

2017/06/09 07:00 投稿

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  • 小飼弾
  • 映画
  • メッセージ
  • ファーストコンタクト
  • SF

「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
今回は、5月22日(月)配信のニコ論壇時評から、映画『メッセージ』のネタバレ解説をお届けします。

次回のニコ生配信は、6月19日(月)20:00。ゲストは、ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で知られる、会計士で作家の山田真哉氏です。
テーマは、「僕らが生き残るためのマネー戦略」。
「残業せずに、給料を上げるには?」「無理なくお金を貯めるための方法は?」「FXに手を出しても大丈夫?」など、個人のためのマネー戦略と働き方を語り合います。
お楽しみに!

文字で異星人とコミュニケーションを図るファーストコンタクトSF

山路:じゃあ最後、映画『メッセージ』について語りましょうか。

小飼:アンケート作れます?

山路:まだ見てない人が多いですね。

小飼:「知らなかった」(コメント)というのがある。

山路:上映館数結構少ないですよね。しかも、日本での公開、遅くないですか。

小飼:全世界で一番遅かったんじゃないかな。これ去年の秋の映画です。

山路:半年以上たっているんですよね。しかも、オスカーでもいろいろ賞をとっているのに。

小飼:なるべくあらすじのネタバレは避けたいんですけども、この映画をなんで見るべきか、あるいは、見てしまってはいけないかというお話はなるべくしたいと思います。ここまでは公式のあらすじにも書いてあったことなんですけども、ひたすら宇宙人と筆談する話です、これは。

山路:確かにおっしゃる通りですね(笑)。

小飼:なんでこんなのが映画になるのと思うでしょ?主人公のお姉さんは言語学者で、語学の天才なんですけども。政府が最初に彼女を呼びだした時、宇宙人の音声を聞かせるんですが、まあ要領を得ない。何がなんだかわからない。当然ですね。そこで彼女は筆談を始めたんですよ。もしかしたら話しても分からないかもしれないけど、書いたらわかるかもしれない。

山路:そうしたら反応があった。

小飼:そう。よくある異星人コンタクトもののSFの場合、異星人の方が大抵高い科学技術力を持っている。『メッセージ』に出てくる”ばかうけ星人”の皆さんも……。

山路:宇宙船がお菓子の「ばかうけ」に似ていると。

小飼:ばかうけ星人の皆さんも、やはり地球にはない技術を持っている。宇宙船をこんな風にたてるくらいですから、人類よりは進んだ技術を持っているんですけども。でも、大抵のコンタクトものでは、異星人の方が頭がいいから、人類の言葉なんかすぐに覚えちゃう。

山路:そうですね、翻訳機を持っているのは、宇宙人ですよね、大体。

小飼:宇宙人はテレビ放送とかを傍受しちゃって、地球人とコンタクトする頃には、地球人の言葉なんてペラペラだよーというのが多い。例えば、『コンタクト』という映画では、最初に宇宙人が地球に送り返してきた言葉というのが、ヒットラーによるベルリンオリンピックの開催宣言。でも、『メッセージ』では、宇宙人が人間語を話してくれない。世界12か国に同時に現れたんだけど。

山路:北海道にも現れていますよね。

小飼:北海道、やたら人気あるよね。『コンタクト』の時も、北海道が舞台になってた。

山路:とりあえずロケに行きたいだけなんじゃないかっていう気がしなくもないですけど、映画スタッフが。

小飼:で、ひたすら、ばかうけ星人たちは母国語を書くんですよ。

山路:まどろっこしいですよね。全然スムーズに意思疎通がいかないというか。

小飼:そんなのが、どうして映画として成立するのって言ったら、このまどろっこしさ自体がこの映画の重大なテーマにもなっているから。どういうことかっていうと、そもそもコミュニケーションというのはそんなに簡単に成立しないものなんだと。
 これがスペースオペラとかましてや異世界ものですよっていったら、コミュニケーション問題初めからなかったりするでしょ。異世界なのにね、普通に日本語話していたりする。日本に限らず、外国のSFもそう。なんでヨーダは英語を話せるのとかね。
 そもそも宇宙人は発声器官からして違うわけですよ。実は発声器官というのがなくても、文字によるコミュニケーションの方が、文化あるいは肉体の差を乗り越えやすい。まず筆談するっていうところがリアルだったよね。
 ばかうけ星人たちの文字は、墨で円になっているんですよ。それが書道家が揮毫したみたいで格好良いんですけど、実はそれは文字じゃなくって、文なんです。

人の思考は言語によって規定される?

山路:それが表義文字ということなんですよね。

小飼:セマグラムという言語。

山路:これ造語ですよね。

小飼:漢字などのイデオグラムつまり表意文字を使っている我々には、比較的わかりやすいコンセプトではあります。アルファベットなどの表音文字の言語から見ると、漢字の1字は1Word。表義文字は、1文を一遍にバーッと書ける。

山路:だけど、この言語の特徴はそれだけではないと。
 
小飼:ここでサピア・ウォーフの仮説が登場します。彼は実在する地球の言語学者で、使う言葉が変わると考え方も変わると主張しました。物事をどう捉えて、どう考えるかっていうのも言葉に支配されているんだと。

山路:例えば日本語だったらその、それが否定なのか肯定なのかっていうのは、文を最後まで聞かないとわからないみたいなことっていうのも人の考え方に影響を与えると。

小飼:そう、そもそも物事の考え方を言語が規定しているんだっていう説を唱えている人です。これをテーマにした『バベル17』という作品もあ、宇宙人の言葉を習得したお蔭で頭が良くなっちゃったという。

山路:今回の話というのは、頭良くなるどころの話ではないですよね。

小飼:さあここから、結構なネタバレなので、ネタバレ絶対いやだーという方は、音声を切ってください。表義文字がわかる人にだけ、ネタバレですと言えたら面白いんですけれども(笑)。

 

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