僕のプロデューサー経験は、2.5系ミュージカルでは、
「星闘士星矢」から始まり、「姫ちゃんのリボン」「赤ずきんチャチャ」「水色時代」と少女舞台と、少し毛色は違うけどまごうことなき2.5の「こち亀」を作り、
もっとアニメと2.5を融合させたいと思い、アニメ化の段階から舞台を意識してアニメ「HUNTER×HUNTER」をプロデュースし、その主要キャラクターの声を演じる声優さんたちがそのまま同じキャラクターを舞台上でも演ずるミュージカル「HUNTER×HUNTER」を作った。
その延長線上にキャラクター性へのアプローチをイケメン俳優に変更して
「テニスの王子様」を作ったら大きな波紋を呼んだ。
この舞台を続ける間に、それぞれ「テニミュ」とは趣の異なる
「DEAR BOYS」「エア・ギア」や「ギャラクシーエンジェル」などの作品をいくつか作り、
別ジャンルに挑戦と思いニコニコに移り、「カンタレラ」でボカロミュージカルに挑戦し、
「千本桜」を作って自分なりの納得感のある新しい舞台が出来上がったところで、
僕の中で作りたいコンセプトが見つからなくなった。
もちろんこれらの2.5系ミュージカルを中心にした舞台は、
それぞれの作品ごとに脚本。演出、作曲、作詞を始めとする舞台のクリエーターたちと
役者の仕事であるし、もともとはそれぞれの原作があり、
車田正美・水沢めぐみ・秋本治・富樫義博・許斐剛他の先生と
黒うさPさんを始めとする創造主の卓抜な仕事があってのものなので、
僕が作ったと言ってもそれはただの2次著作物の制作に参加しただけに過ぎないのだけれど、
でも2次著作であったとしてもプロデューサの仕事にはそれなりに熱量と工夫が必要だし、
モチベーションを高く持たないと原作の名を辱めることになるので、
絶壁の淵に立つ覚悟がないとやってはけない、と僕は思っていた。
なので、プロデューサーを無期限にお休みすることにした。
ところが見つかった。
それが「監獄学園」だ。
コンセプトは僕は出していない、作・演出の畑雅文くんがやりたいと言いだしたのがこれ、面白い原作があるので2.5舞台をギャグで作りたい、が彼のコンセプトだった。
もともと僕にはクリエイティブセンスはない、ただあるのはこの原作が面白い、原作を別の表現に移し替えるにはこういう方法が良い、という作り方の方法論だけだ。
それは自覚しているので、自分なりのモチベーションから始まらなくても、
脚本のセンス、演出センスが抜群のこの気鋭の作家に思い通りの舞台を作ってもらいたい、
その舞台を用意するのが僕のモチベーションになる、と納得してこの舞台は始まった。
自分のつくりたい舞台ではなく中身は才能のある他人に任せて作る、自分はそれこそ、場を用意するだけ、でもそういう感覚は悪くない、今までは、そうは言っても自分なりのミュージカルはこのように作る、作品のコンセプトはこれだ、ミュージカル化にはこういう定理が必要だ、とか脚本段階から舞台化への過程では、作りには参加していた。
それが「テニスの王子様」が完成形に到達しこれ以上の2.5は自分では作れないと思い、
別ジャンルの「千本桜」も出来上がり、こちらも僕の中では完成形に到達した。
だからもうやめたと思ったのだけど、でも、人に才能があるかないかを見分けるのはプロデューサーの大事な感覚だ。感覚は一生無くならないと言う仮説に組したなら、僕にもまだそれが残っているはずだと思い、畑雅文くんをもっと世のなかに押し出したい、これがこの「監獄学園」の動機だ。
まだ畑くんの舞台観たことない人も既に知っている方も、
彼の初のミュージカルへの挑戦舞台、是非観に来てもらいたい。