片岡義朗ブログ

再掲「ヒョウイズム」畑雅文くん爬虫類企画2014/09/14@シアターモリエール

2016/10/26 16:05 投稿

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2014/09/14

9:53 pm

「ヒョウイズム」(爬虫類企画)をシアターモリエールで観てきた。
作・演出がニコミュWS受講者の畑雅文くん、プロデューサの脇坂兵吾くんも出演俳優にもニコミュWS出身者が
林 瑞貴・吉田 翔吾・渡辺 龍太くん、
青木 満理子・石井 麻莉・大谷 咲子・尾崎 桃子・福田 沙織さんといて
観に行くのが僕としてはとても楽しみだった。


めったにないくらい面白かった。
脚本が良く書けている。
演出がよーく考えられている。
俳優もしっかりと魅せてくれた。


まずは脚本に感心した。
今の世の中を何かしら映し出していない演劇なり、
アニメでも漫画でもあらゆる娯楽作品は今の世の中に存在する意味がない、
と僕はいつも主張していて、これは何も僕だけが言っているわけではなく、
多くの人がそう言っていることなのだけど、そこがこの芝居にきちんとたっぷり入っている。

それが何かは劇場で観てほしい。
その今を映し出している何かしらに向かって冒頭からまっしぐらに、
いや、しょっちゅう脱線しながら、行きつ戻りつしながら、笑いを取りながら、十分な伏線を張りながら、
一目散に劇的なクライマックスに向かって走っている。
脚本に流れるぶれない起承転結の根幹のストーリ-と
それを実体化したスピーディな台詞の投げ合いの面白さ、凄い。
脚本のスピード感も感心したセンスの一つだ。

観終わった後のズシリと来る重い思い、
こんな事態に直面したら、自分はどうするだろうな、良くある話だけど、
こんな風な事件の解決もあっていいな、でもこの通りの解決ってお芝居でしかできない、
でも渦中の人物の心の中はこんな風な動きになるだろうし、
現実の社会ではそうした解決できない思いを胸に抱きながらやはり、
苦しい思い背負いながら、生き続けるんだろうあ、人生は難しいな、
でも、昔つらかった人は今もつらい気持ちのまま生きてるってこと忘れちゃ駄目だな、
なんてどうどうめぐりする思いを舞台から投げつけられた。


演出のセンスも抜群だ。
狭いモリエールの舞台、バックヤードは無いに等しい都会の繁華街の小さな劇場、
そんなとこに32人もの俳優、しかもおおよそは技術の低い経験の浅い俳優使って何すんだ、
おおかたノルマで一人30枚売らせて960枚もらった、と損しない数の役者使って、
録に台詞も渡さず、役名も無し、出番は一瞬、
みたいなせこい芝居だったら即刻退席するぐらいの気持ちで観に行った。
ところが100分の芝居見事に32人の役者を使いきっている。
どの一人にもちゃんと役柄があり中にはいくつもこなしている人もいて、
見事にストーリの上でどの役も居なくてはこの芝居が成り立たない脚本になっていた。
それを狭い舞台で使い切るステージんグのうまさ、並大抵なことではない。
ここはさいたま芸術劇場ではないのだから。

笑いの場面がなければ相当暗い話だけど、
そこをこの演出家は分かっていて、笑いにまぶし、俳優の配置の絶妙さで目をくらまし、
隕石みたいな奇想天外のアイディアに度肝ぬかさせ、と言うかありえねー、
なんて感想で一瞬気持ちをはぐらかし、
女のハダカだけでなく男のハダカも使って視覚的刺激を喚起し、
ありとあらゆる手を使って、この今の社会の抱える難問を、
楽しい演劇にしたててみせ、かつ秘かに深く観客の心に遅効性地雷を仕掛ける事に成功している。


畑くん、ただものではない。


駄目だしはいくつかあるけど、お芝居全体の素晴らしさに比べれば取るに足りないものだ。
でも僕の演劇感想にダメ出しがないとアイデンティティーが無くなるみたいなので、二つ言っておこうかな。

一つは音楽だ。
僕の意見は、
BGMは場面の感情なりその場面で語りたい物語の中身に即した音楽ではいけないような気がする。
悲しい場面に悲しいですよと観客のこころをダメ押しするような音楽は無くていい。
場面にそのままフィットするよりも、もっと大きな広い状況とか
繰り返し使うテーマメロディにテーマ性を仮託する音楽か、
リズムの強弱でその場面の先に待ちうける運命を先だしするとか、
こういうのは僕の一つのアイディアで、もっといい使い方はあるはずでは演出家は考えてみてほしい。

もうひとつは、ギャグの作り方で、
ある人間を馬鹿にすることで取る笑いは僕は好きではない。
小保方ネタが数回出てくるけど、観客には受けていたけど、こういうのは品がない、やめておいた方が良い。
もっと切れ味鋭い笑いを大量に創っていたし、そんなセンスのある人がこんなギャグ、作る必要ないと思う。


久しぶりにセンスのあるとても深い芝居を作れる作・演出家を見つけた。
まだ後一日ある、みなさん観に行ってください。
10年後に、あの畑くんの4回目の演出芝居観てたんだよ、と自慢できることになると思う。
1960年代に六本木の地下の小さな自由劇場で吉田日出子さん観たことあるんだよ、
と僕が今でも語れるように。

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