片岡義朗ブログ

再掲「リトルショップオブホラーズ」松村武くん2010/05/28@本多劇場

2016/10/15 01:52 投稿

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2010/05/30

11:58 pm

下北沢の本多劇場で「リトルショップ゚オブホラ―ズ」と言うオフブロードウェイミュージカルを観て来た。

出演者に「HUNTER×HUNTER」リアルステージで「パクノダ」役をお願いした池田有希子さん、
アニメ「りりかSOS」で主役の「りりか」役の声をお願いした麻生かほ里さんがいるのだけど、
つい行きそびれていたときに、主演のDAIGOさんと仲の良い横澤さんから声をかけられて出かけた。

めちゃめちゃエネルギッシュで面白かった。
今までに何回このミュージカルを観て来たのだろう、数えきれないくらいたくさん観て来たけど、
今回が一番僕にはしっくりして、面白かった。
DAIGOさんは、主人公のシーモアを気の弱い、
どう見てもNYCで人気者になるとはとても思えないような好青年そのままに成りきっていた。
素直だけど、人の言うままに流されて自分の人生を生きている、そんな感じがよく出ていた。
麻生さん、池田さんも元気だった。
他のすべての出演者もとても生き生きとしていた。
特にオードリー2の深沢敦さん、とんでもない素晴らしさだった。
新納慎也さんの歯医者もどうしようもない、すごい。

スキッドロウ=ドヤ街はとことん汚く描かれ、
そこに生きる人々はエネルギッシュだけど頽廃しうんざりしている。
今までと違う「リトルショップ゚オブホラーズ」がそこにあった。

実は観に行く前は、まったく期待していなかった。
だって、演出の松村くんがこのミュージカルをきちんと演出できるなんて考えられなかった。
彼の本来のフィールドは八嶋智人くんたちと立ち上げた
「カムカムミニキーナ」というかなり泥臭い小劇団だ。
ところが、驚いた。
たぶん松村くんはこの作品を自分なりに組み立てなおしたのだ。
NYの泥臭い猥雑な吹き溜まりの街、スキッドロウが
自分のいつも作っていた小劇場の世界に通ずるものがあると感じたのだろう。
NYのしゃれたオフブロードウェイのミュージカルを自分の世界に持ってきてしまった。
そしたらエネルギーが出た。
この芝居は、元々、この社会の最下層に潜むエネルギーがテーマだったのではないか。
オードリー2(一見かわいく見える不思議な花のような生物)が主役の、アメリカンドリーム、
それも何でもやっていい、なにか普通でないことをやらなかったら、社会の最下層からは抜け出せない、
他人を利用しても、脅かしても、やってはいけないと決められたことなんか関係ない、
なにかやらないと抜け出せない社会を描いたのだろう。

初演はもう28年も前のことだから、その時のNYの中では
たぶんこのテーマはUpTo Dateなテーマだったのだろう。
それを日本に持ってきたときに、こじゃれたオフブロードウェイミュージカルになってしまい、
そこが消えてしまった。
それを松村くんはたぶん丁寧に原語の台本を読み返したのだろう、そして発見した、
シーモアやオードリーと言う下町につましく生きる人々ではなく、
オードリー2の下品な「アメリカンドリーム」と
それを容認する社会をこそ描くべきだと。
その、のし上がるエネルギーの源が人間の「血」だというのは、
方法は問わないと言うことの暗喩だ、という解釈をしたのだろう。
そう考えた途端に、この芝居はいつもの「カムカム」の芝居と大して違わない根元を持つことになった。
まるで、活火山のふもとの間欠泉のように、
松村くんの演出がドロドロと流れ出し時折ブワーッと吹き上げている、絶好調だ。

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