「三銃士」小野田龍之介くん出演を観た。
善意に満ち溢れた舞台、客席を埋めた家族連れは喜んでいた。
こういう舞台があることはとても良いことだと思う。
聴きたかった小野田龍之介くんの唄も聴くたびに力が増していて、さすがの実力だと思った。
彼の唄は気持ちいい。声量豊かで大きく歌い、
それでいて歌に素直に取り組んでいて、
心にストレートに入り込んでくる。
歌に真面目なんだろうな、って改めて感心した。
楽屋で、一つ気になったセリフの四季風発声は、
この春に出演していた「ウエストサイドストーリー」の名残が癖になって残ったのかと思い、
クセになってたらやばいよ、ってたずねたら、意外な答えが返ってきた。
癖になんかなってませんよ、今回は観客にお子様が多いので、
意識的に大きく口を開けセリフを分かりやすくと届けようとしてるんですよ、
分かってますよ、次の芝居観に来てくださいよ、普通にやってますから、
と大きな声で語ってくれた。いいですね。
いつもは自分を前面に出しすぎ過ぎ感のある宮下くんも、今回は素直に役柄にはまっていた。
英国貴族の衣装も似合い、立ち居振る舞いも控えめに堂々として脇役の務めを十分に果たしていた。こういう芝居ができるようになったのは年齢のせいか、
経験積んで進化したってことなんだろうなって納得した。
でも舞台はテンポが悪く間延びしてだらだらと長い。
もっと濃縮すればあと15分は充分に短くできて、もっと面白く楽しめたはず。
演出家に必要な演出センスの中の時間感覚がこの人にはたぶん無い。
ストーリーの流れに沿って舞台上ではたんたんと場面が進行していく。
でも演出って時間の進行をコントロールして緩急を付け、
物語に山坂の盛り上がりをつけることもその役割の重要な一つだろう。
時間を盗んだり、時には重ね合わせて進行を早めたり、意図して間延びさせたり逆行させたり、
物理的に正しい同一方向への単一の時間の流れではなく、
ストーリーの重要度やその場面で観客の目を奪う必要などの目的に従って時間の流れを制御する、
そのことで観客の脳内をクラクラさせて舞台上の物語に濃淡が付き、
より登場人物の心の風景が観客に伝わる、
こうした時間のコントロールも重要な演出家の腕だと僕は理解している。
この人はそれができない、よいしょ、どっこいしょって物語はノタノタと進む。
盛り上がりが創れない、物語は段取りに従って同じテンポ感で淡々と進み予定調和で終わる。
だから今一歩心に迫る感動が起こらない。
もう一つミュージカルというには程遠い音楽の構成で、この演出家はお粗末。
ミュージカルってうたったなら、なにかテーマに即した主旋律を聞かせてほしい。
その主旋律を軸にしてほんのいくつかのメロディをリプライズで使い分け
ミュージカルとしての音楽性を作っていく、って王道がほしかった。
個々の音楽は素敵だったのでそんなことをしてくれなかったことはまだ我慢できたけど、
テーマ曲がカーテンコールでボケてしまって残念。
この物語のテーマは少年の成長と友情と忠誠みたいなことだろう。
でもカーテンコールであたかもテーマ曲のように歌われたのは、
「イギリスに行こう」で、これはテーマ曲ではない。
この歌は覚えやすいかもしれない、でもこの物語のテーマは別にイギリスに行こうではない。
そんなこと自明のはずだが、たまたまいいメロディができたからこれをテーマソング風に扱おう、
ってずいぶん安易な決め方だ。
日本のミュージカルの原点ともいうべき日生劇場が創るミュージカルなら、
これがミュージカルだという王道を行ってほしかった。
でも楽しめたので、楽屋に小野田龍之介くんを訪ねほめちぎってきた。
「カンタレラ」で共演した野田和佳子さんも一緒にパチリ、
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