「ベル・ファームさんの次郎柿と百合根の饅頭」は、次郎柿の食感と甘味を生かすため、歯応えのある生だけでなく、「百年柿園ベル・ファーム」の加工品であるサクサク食感の「次郎柿チップス」と完熟した次郎柿のジャム「うんだらべぇ(ジンジャー)」が使用されています。
百合根のペーストに「清須ライスセンター」(豊橋市)の米粉を混ぜて、柿ジャムを包んだ饅頭に、酒粕と白味噌、さらに昆布とカツオの出汁でうまみも足した餡かけという組み合わせ。仕上げに加えられたのは、豊橋の歴史ある発酵食品「濱納豆(はまなっとう)」です。
柿は甘みが強い反面、酸味がほとんどなく、料理に使われるイメージがあまりない食材。ふぐ・日本料理 大村屋」4代目の近藤真弘さんは、「デザートだけでなく、白あえやごまあえ以外の料理でも使えるところを知ってもらい、家庭で作るきっかけになることで、次郎柿の価値がより高まれば」とコメントされています。
一方、ベル・ファームの鈴木美有紀さんは、「予想外の使い方。加工品も使ってくださり、ベル・ファームのすべてを詰め込んだような料理に感動しました。料理の一品として、お出汁と合わせるという意外性が本当に驚きでした。次郎柿はどうしても普通に生のまま食べるイメージが強く、こんな風に料理に使えるんだと皆さんに気づいてもらえたら嬉しいです。大村屋さんは豊橋駅からすぐ近くなので、豊橋市民ではない方にも豊橋には次郎柿があると知っていただくきっかけにもなると思います」と喜びのコメントを寄せています。
マッチングは市町村別農業生産額が全国14位の豊橋市が、「食と農のまち推進プロジェクト」の一環として昨年度から進めているものです。なかなか知り合う機会のない飲食店、菓子店と農家の橋渡しを行政がすることで、地元の新鮮でおいしい農産物を活用した料理を新たなに生み出し、身近に食べられる環境を整えることで地産地消を促す目的があります。
今回グランプリを獲得した「ふぐ・日本料理 大村屋」以外にも、「キッチンイマイ」や「とんかつ和食 武蔵総本店」「一期家一笑」「鉄板焼き とらのこ」「スパゲッ亭チャオ本店」など、豊橋市内13店舗で農家とコラボした新メニューを提供しています。
日本一の次郎柿産地でありながら、市民の中にも「柿は購入するものではなくもらうもの」というイメージの強さがありました。その価値観を払拭するためという共通の思いが込められ、今回料理の一品として成立したコラボメニュー。なかなか繋がることのない生産者と飲食店を、自治体がマッチングする機会を提供することで、実現しているところがポイントです。
地元の農産物の地産地消を目的としていますが、意外な発想の新メニューが豊橋市を訪れるきっかけとなる可能性もあり、継続していくことで地域創生としての施策としても効果が得られそうな施策事例がありました。