うすきせんべいは、江戸時代の参勤交代のための保存食が起源といわれる、大分県臼杵市の食文化のひとつです。伝統製法を用い、生姜蜜を刷毛で木目を描くように一枚ずつ手塗りされ、まるで工芸品のような逸品。生姜の香りと甜菜糖の上品な甘味が豊かにか広がるおせんべいです。昔は20社以上あったとされるうすきせんべい業界は、現在は約7社まで縮小しており、そもそも7社もあるということすら認識されていないのが現状です。
そこで、後藤製菓は業界で最も古い老舗として今回のリニューアルを通して、もう一度「うすきせんべいの灯火」を大きくしながら、次の100年後に紡いでいきたいと考えています。
今回のリニューアルに際して、「美味しさをかさね、笑顔を+(プラス)する。」という新ミッションを掲げ、この新ミッションから生み出した、後藤製菓としての新しいシンボル(新ロゴマーク)を全面にあしらうことで、ものづくりへの思いを表現。これまでのうすきせんべいは、国宝臼杵石仏が全面に印刷された特徴的なパッケージでした。近年、中身の味はもちろん、100年間職人が1枚1枚ていねいに紡いだ、誰もが目を奪われる「“食べられる”工芸品」のようなクラフト感への評価が高まっています。しかし、それと同時に旧パッケージでは、この“真の魅力が伝わらない”との声も寄せられていたことも考慮して、全面的にパッケージをリニューアル。
また、FSC認証紙、バイオマスインキ、ゴマやヤシの実の再生紙を利用するなど、環境配慮もこれまで以上に実現しました。そして、より美味しいうすきせんべいを提供するために、自らの手で一から生姜を育てる自社栽培も開始。これまで培ってきた生姜加工技術を駆使し、永年愛され続けてきた美味しさの秘訣であるレシピについても再度見直しもしています。その結果、より生姜のピリッとした辛みや風味が豊かに香る、さらに美味しくなった「生姜の幸 うすきせんべい」に仕上がっています。
100年を超えて愛され続けてきた、うすきせんべい。しかし、観光土産としての利用が最も多く、コロナ禍で一時は売上7割減の影響を受け、職人の休業も余儀なくされたといいます。そんな最大の危機をきっかけとした今回のリニューアル。後藤製菓が今日まで100年以上残り続けてきた意味、これから残り続けていく意義を、「私たちは、臼杵の食文化と笑顔の灯火を大きくしながら次につなぐ、リレー走者である。」と明文化して、実践しています。長く変わらずにいたパッケージの大幅リニューアルは、新たにユーザーに認知し直してもらう必要があるので勇気のいる施策ともいえますが、次々と新商品が投入される観光土産市場においては、目新しさは武器になることもありそうです。リニューアルによる効果はどうなのか、気になる事例がありました。
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