近年、和食業界では職人不足が喫緊の課題となっています。コロナ禍の影響でさらに状況が深刻化するなか、未来を担う若手職人を自社で積極的に育成しようと、職人志望者が未経験からでも実店舗で働きながら学べる「板前オープンスクール」を開講していました。
この取り組みは大きな注目を集め、職人志望者からの「板前オープンスクール」への応募増加にともなって、新たな受け入れ先として職人育成店舗2号店を品川にオープンすることになったといいます。銀座本店同様、営業時間外の店舗はスクール生の研修の場として活用。営業中には、一定のレベルに達した新人職人もカウンターに入ります。店内はカウンター10席と完全個室13室からなり、新人職人の接客はカウンター席のみで行われます。提供メニューも異なり、カウンター席では銀座店同様のおまかせコース1本の提供となっています。
また、『SUSHI BANYA KAI 品川店』のみの企画として、「スクール生ランチ」を販売しています。カウンター10席限定で、スクール生が握り、接客まで行います。「大トロ」「中トロ」「生雲丹」といった握りや、いくらや鮪かき身などを盛り付けた〆の「KAI丼」まで全16品。8,000円台相当の料理内容のコースを、4,840円(税込)というお値打ち価格で提供されるというもの。
職人の世界は徒弟制度、厳しくつらい修行を経て一人前になるという時代はもう過去のものになりつつあります。職人志望者が未経験からでも実店舗で働きながら学べるという「板前オープンスクール」は、若手のやりがいを引き出しながら、技術も磨くという一石二鳥の運営となっているところが素敵な施策です。
また、技術を磨くためには実地訓練が欠かせませんが、「スクール生ランチ」としてリーズナブルに提供されるとあれば、喜んで練習台になろうという来客も多いはず。開講後、たちまち人気になり受講待機者が出てしまったのもうなずけます。少子高齢化がますます進むなか、人材不足や人材育成で頭を抱える業界は各種あると思いますが、従来のやり方を見直した工夫次第では新人を呼び込むことは可能だという好例がありました。