2020年2月6日「海苔の日」、東京都品川区は「品川海苔」の歴史や文化を伝えるPR動画を公開しました。皆さんは、かつて品川で海苔が盛んだったことをご存じですか?実は、品川では18世紀初めから養殖がはじまり、浅草に運ばれた海苔は「江戸名産浅草海苔」として全国に知られていたそう。また、品川の漁業者が養殖方法を発明したことによって、海苔の大量生産が可能になったとも言われているのです。

今回PRする「品川海苔」は、そんな品川の海苔養殖の歴史や文化を表す総称。作品の肝となる海苔の切り絵は、品川区在住の切り絵アーティスト・田中良平さんが担当しました。生まれも育ちも品川区という田中さんが、約60枚もの海苔切り絵を作成したという繊細な作品は必見です。

海苔の養殖が盛んだった江戸時代

真っ暗な場面から聴こえてくるバイオリンの音色とかすかな波の音…。昔話がはじまるような雰囲気の中、徐々に繊細な切り絵が表れ、モノクロの味わいある世界が画面いっぱいに広がりました。

やがて明るい音楽に変わると、「品川海苔」が盛んだった江戸時代の様子が語られていきます。ナレーションを担当するのは、2017年に制作された品川区PR動画にも出演した女優の傳谷英里香さん。かつて漁師たちが海苔をとって栄えていた品川、その生き生きとした空気感を穏やかな語り口で伝えていきます。

品川の海の向こうに見えるのは富士の山。そこから少しずつカメラが引いて切り絵の全貌を映すと、当時の品川の海がいかに海苔の養殖が盛んだったかということが、生き生きと伝わってきます。しかし、水鳥が羽ばたいていなくなると「時が経ちました…」とナレーションが流れ、昭和の時代にタイムスリップします。

高度経済成長の陰で…

かつて海苔をとっていた海辺が埋め立てられたこの時代。「品川海苔」はどうなってしまったのでしょうか?

高度成長期の幕開けで、活気にあふれる街。人々は車に乗ったりテレビを見たり、新しい生活を生き生きと楽しんでいます。

そして、「1964年、東京オリンピック開幕の年!日本中がお祭りのような騒ぎ。経済都市へと発展した品川のまちも、おおいに賑わいました。」というナレーション。活気に満ち溢れた品川の様子が、切り絵の大作となって映し出されました。視聴者はその素晴らしさに目を奪われ、賑やかなその時代の空気感を想像しますが…

品川の街を見下ろしていた鳥の目をとおして、実はその高揚感の片隅で、200年以上続いた品川の海苔づくりが、そっと幕を下ろしていたことが伝えられます。

「品川海苔」を未来へ伝えよう

すると、しんみりとした時間を打ち破るような威勢の良い掛け声と共に、2020年へとタイムスリップ!とても前向きな気持ちにさせる明るい音楽が流れてきました。

次に映し出されたのは、おにぎりに海苔を巻くお母さんの手。パリパリとした音がとても美味しそうで、視聴者の食欲をそそります。

そして、「一度は消えてしまった品川海苔。その魅力を、子どもたちに伝えたい。2020年、新しい時代の幕開けです」というポジティブなメッセージが流れました。小さいお子さんに、握ったばかりのおにぎりを食べさせるお母さん。とても幸せそうで素敵なシーンですよね。「品川海苔大復活プロジェクト」の一環として制作された今回のPR動画。「大復活」と言えどあえて派手なことはせず、 “切り絵”という素朴な手法を選び、一人一人に語りかけていくように表現した点が、独自の魅力に繋がっているように感じました。

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