「しんぶん赤旗」

TPP交渉加速 亡国への道、突き進むのか

2012/11/23 12:05 投稿

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2012年11月23日(金)

主張

TPP交渉加速

亡国への道、突き進むのか



 野田佳彦首相はアメリカのオバマ大統領との会談(20日)で、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加にむけた日米協議を加速すると表明しました。TPPの交渉に新たに参加するには交渉参加国の同意が必要なため、アメリカとの協議を加速するというものです。

 懸念された参加表明こそなかったものの、野田政権の前のめりの姿勢は明らかです。原則として関税を廃止し、「アメリカ流」のルールを押し付けるTPPへの参加に、農林漁業団体や医師会をはじめ反対の声が広がっています。国民の願いに反する「亡国」の企ては許されません。

事前協議でも米に譲歩

 野田政権は昨年11月、アメリカなど交渉参加国と協議を始めるにあたって、「情報収集」が目的の「事前協議」であり、すぐに交渉に参加するわけではないと説明しました。しかし、「事前協議」だけで交渉には参加しないなどというのは通用する話ではなく、実際には「事前協議」のうちから次々譲歩を求められているのが実態です。

 とりわけオバマ米政権は、日本のTPP参加の“入場料”として、牛肉・保険・自動車の3分野の「解決」を執ように迫ってきました。アメリカの業界や企業の利益を代弁したもので、受け入れなければ参加は認めないという居丈高な態度です。それをうけて野田政権は米国産牛肉の輸入拡大のためにBSE(牛海綿状脳症)規制の緩和に乗り出し、かんぽ生命の新たながん保険発売中止を表明しました。

 アメリカとの協議を加速することは、日本の軽自動車規格の廃止などをめぐってこれまで難航が伝えられる自動車などの分野でも、アメリカの要求を受け入れることになりかねません。野田内閣は3分野の交渉はTPPと関係ないと強弁し、国会議員にも内容をまったく明らかにしていません。国の将来にかかわる重大な問題を、国民をあざむいたまま突き進むのは許されません。

 TPPに正式に参加するとなると、日本がはかりしれない被害を受けることはこれまでの議論でも明らかです。例外のない関税撤廃を迫られ、コメを含む日本の農業が壊滅的な打撃を受けるのは目に見えています。弱肉強食の「アメリカ型」のルールを押し付けられれば、食の安全は脅かされ、保険がきかない自由診療の拡大で世界に誇る「国民皆保険」などの制度も掘り崩されてしまいます。

 アメリカなどTPP交渉参加国は秘密交渉を重ねており、日本がこれから参加すればその合意を受け入れなければなりません。野田政権が「守るべきものは守る」「国益は守る」ことが可能であるかのようにいうのは、国民を欺くものです。

国民的運動をさらに広げ

 国民にとって「百害あって一利なし」のTPP参加に、JAグループや日本医師会が総力を挙げて反対し、地方議会の約9割が反対の決議をあげています。いまこそ国民的運動をさらに広げ、TPP推進勢力を包囲し、きっぱり断念させることが必要です。

 TPPについて自民党の安倍晋三総裁は、参加に前向きの発言をし、「日本維新の会」も基本政策で「参加」を打ち出しています。TPP参加に反対し、協議そのものの中止を迫る、日本共産党の総選挙での前進がカギです。

コメント

(これは孫崎さんのところに書いたものですが・・)

11月20日、オバマ大統領と野田首相の間で、(30分あまりの)首脳会談が行われました。
TPPについて、伝えられているところでは以下の通りです。

(以下引用)
さらに野田総理大臣は、太平洋を囲む国々で関税の撤廃などを進める、
TPP=環太平洋パートナーシップ協定について、
「交渉参加に向けて協議することを決定した際の私の決意は、当時と今も変わっていない。
日米間における課題を乗り越えるべく協議を加速させたい」と提案しました。

これに対し、オバマ大統領は「日本が関心を持っていることを歓迎する。
問題点がまだ残っているが、協議を通して解決したい」と述べました。

NHK NEWS web (http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121120/k10013634911000.html)
(引用ここまで)  

この会談内容から知り得る限り、交渉締結に前のめりなのは、
分裂状態の党内で、TPPについて踏み絵まで迫ろうとしていた民主執行部の方で、
オバマ大統領がそこまでこのTPPに関心を持っているとは考えにくいところです。

少なくともオバマ大統領にとって、TPPがそこまで重要度の高いテーマならば、
わずか30分で会談が終了することは無かったでしょう。

民主党内の、あの長期間の紛糾と比べると、何ともあっさりしたものです。


私のTPPに対するスタンスは非常に単純です。

あくまで個人個人のレベルで、自分が得すると思う選択をすればいいだけです。


たとえばTPPについて、経団連に代表される財界が賛成するのは当然です。

彼らはTPPで、生産拠点の海外移転がさらに容易になるのと同時に、
「輸出割り戻し税」・・いわゆる消費税の還付によって、大きなボーナスも得られます。
(もちろんこれは、海外移転する資本力のない中小企業には縁のない話でしたが・・)

なお、タイ政府は今月の18日、TPP交渉に参加する方針を示しましたが、
これは現在進展しているTPPの本質を象徴する出来事とも言えます。

2012年現在、タイは年間210万台もの自動車を生産し、
東南アジア最大の自動車輸出拠点となっています。

また、日系メーカーによる生産の割合が非常に多いのも特徴で、
タイで生産される自動車をブランド別に集計すると、
トヨタ、三菱、マツダなどの日系企業だけで、実に90%にも達します。

(参考 日本アセアンセンターHP内
タイ自動車研究所 所長 ワンロップ・ティアシリ
「タイ自動車産業におけるビジネスチャンス」)

そして、自動車逆輸入のお得意先である日本が参加する可能性が高まった以上、
タイ政府が国益のために、TPPに前向きな姿勢を示すのは、
国家として正しい判断だと私は思います。

もちろん、そうした海外移転や逆輸入等によって、多大な利益を得る大企業が、
それに賛成するのも当然の話でしょう。


・・しかし、日本国内の「労働者」にとって、この変化がもたらす結果は何でしょうか?

これだけ円高不況が叫ばれる中で、たった数%の関税撤廃のエサに釣られて、
国内雇用に多大な悪影響を及ぼすであろうこの協定に、自ずから賛同の意を示すことが、
どれほど危険なことかは言うまでもないでしょう。

もちろん、財界がスポンサーであるマスコミは、
「開国か鎖国か?」「揺れる農業関係者」といった形で、
TPPの本質を見誤らせる報道を続けるのでしょう。

けれどもこの協定が、保険金融や知的財産権など、様々な分野で
交渉が積み重ねられてきたものであることは、ここで改めて強調しておきます。

(なお、ニコ動投稿に関わる方には、とくに、福井健策さんが書かれた
「ネットの自由」vs著作権、を一読することをお勧めします)

No.10 145ヶ月前

(2)
なお、いわゆるネット右翼と呼ばれる方々の中には、TPPを中国包囲網と捉え、
賛同の意を示している方も少なくないようです。

TPPをブロック経済の一種として考えれば、この解釈には一定の理があると思います。


しかし、今月20日に行われた東アジア首脳会議での、
オバマ大統領の発言をみる限り、そうした見解は性急に過ぎるように思います。

(以下引用)
[プノンペン 20日 ロイター]
 オバマ米大統領は20日、カンボジアのプノンペンで開催されている
東アジア首脳会議で、南シナ海や他の地域における領有権問題をめぐる
緊張緩和に努めるよう、アジア各国の首脳に訴えた。

ただ、領有権をめぐって中国と緊張関係にある日本、フィリピン、ベトナムを
明確に支持する姿勢は示さなかった。

ベン・ローズ米大統領次席補佐官(国家安全保障担当)は
「オバマ大統領のメッセージは、緊張緩和が必要だというものだ。
特に、中国と日本という世界最大の経済国の2つが
こうした緊張関係にあることを考えれば、緊張を高めるリスクを冒す理由はない」と述べた。

また、オバマ大統領は再選を決めた後初めて中国の温家宝首相と会談し、
米中は貿易や投資に関する「明確な交通ルール」を定めるため協力する必要があると
呼びかける一方、中国がこれらのルールに違反しているとの批判は差し控えた。
(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ05220121120)
(引用ここまで)

もしTPPが中国包囲網であれば、まず中国の知的財産権や為替制度が糾弾されるところでしょう。

しかし、日本の国内メディアが、これだけ領有権その他で紛糾したなかで、
オバマ大統領のメッセージはごくごく中立的なものでした。


なお、「民主党はダメだが、うちの党なら有利に交渉を進められる。」と
考えている党も、いくつかあるようです。

しかし、あれだけの長期間、自力でTPPの日本語訳文さえ国民に公開できなかった
与野党の方々に、日本に有利に交渉を進められるだけの力量があるとは、
残念ながら思えません。

そもそも、特定の国を利する可能性のある協定だとすれば、より一層、
日本は慎重に交渉参加の是非を議論すべきでしょう。


今後、日米の財界は、「日本が中国化する」「日本が世界の孤児になる」
といった表現で、一般国民への圧力を強めていくでしょう。

しかし、こうしたものに臆する必要はありません。

TPPに参加しなくても、大多数のアメリカ人は、
これまで通り日本と付き合ってくれるでしょう。

むしろ、途中からの軌道修正の極めて難しい多国間協定であるTPPに参加して、
現在のEU、ユーロ圏のように、国民レベルでの埋めがたい断絶を引き起こしてしまうことを、
私は恐れています。

財界の機嫌を取ることは、資本の乏しい途上国ではやむを得ない面もあります。

しかし、国内で有効な融資先が見つからず、
カネ余りで超低金利国債が発行されるようなこの日本で、
財界のご機嫌取りは大した意味を持ちません。

長い目で見て、日本が世界の人々からより愛される国となるよう、
賢明で思慮深い判断をすることを、私は望みます。
(以上孫崎さんのブロマガに書いたコメント)

ともかく私の見解としては、TPPで得するのはアメリカでもごく一部の人間だけで、
またそれを推進する側も、ごく少数の人間に過ぎないということです。

そういう姿勢で、構えていけるとよいと思います。

No.11 145ヶ月前

(追記 知財について)
原典:Electronic Frontier Foundation
原題:Japan Was the First to Ratify ACTA. Will They Join TPP Next?
URL:https://www.eff.org/deeplinks/2012/10/japan-ratify-acta-will-they-join-tpp-next
著者:MAIRA SUTTON
日付:October 26, 2012
ライセンス:CC BY( http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/us/ )

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)
は、インターネットにおける2つの大きな脅威だ。TPPは太平洋を越えて拡大し
続けており、メキシコとカナダは、ニュージーランドで行われる次のラウンド
から参加する。 ACTAについて言えば、この夏のACTAの敗北 [*1] はだんだん
と疑い深いものになってきている。これら2つの協定はともに知的財産権に関
する条項を含んでおり、その両方ともがデジタルにおける権利やイノベーショ
ンにネガティブなインパクトを与える恐れがある。そしてこの駆け引きの中心
に座っている国が日本だ。

1カ月ほど前に、日本の衆議院は、欧州での敗北によってもACTAは死んでいな
いと確認をした上で、ACTAを無風のうちにあっという間に通過させてしまった。
ちょうど1カ月の間に、日本の2つの立法府は事実上何も議論をすることなくACTA
を承認してしまったのだ。背景を知らない人は驚かれるかもしれないが、署名
式のホスト国を務めたことを含め、ACTA交渉における先導的な役割を果たした
ことから、世界で一番最初にACTAに批准する国には日本になるだろうと思われ
ていた。日本は昨年12月に8カ国によって調印されたあとの唯一のACTA批准国で
あるとはいえ、日本のこの動きは、調印国がこの全面的な知的財産権を強化す
る協定の発効のための努力を放棄していないことを如実に示している。

日本のTPP参加についてはより複雑な状況だ。日本ではACTAがその批准後に非
常に注目を集めているが、ACTAへの反対はTPPに対する一般市民の抗議活動に
比べると小さく見える。ACTAやTPPへのデモ活動は主に農業ビジネスの分野に
よって支えられながら続いているが、これらの協定によってデジタルに関する
権利が晒されるリスクについての日本語の資料 [*2] も出現し続けている。TPP
問題が国民にとって政治的により不人気なものになるにつれ、TPPを前にすす
めることは現政権にとって大きなリスクとなる。それにも関わらず、日本のビ
ジネスリーダーたちはTPP参加に向けて日本を動かすことに強い関心を持って
いる。

米国の貿易交渉をリードしている米通商代表部(USTR)はこの状況をよく理解
している。このような状況をうけて、日本のTPPについての関心を高め、そし
て参加を呼びかけるために、USTRは日本のコミュニティのために"日本とTPP"
と題したイベントを数週間前にロサンゼルスで開催した。[*3] スピーカーは、
日本、韓国、及びAPECを担当するウェンディー・カトラーUSTR補佐官 [*4] 、
そして新美潤ロサンゼルス総領事 [*5] だった。そのイベントは、海外と取引
する日本人のビジネスオーナーがTPPによってどれほどのメリットを得るのか
を伝えるもの──つまりUSTRによる明らかなテコ入れだった。

USTRは日本だけをターゲットにしてこのようなイベントを開催しているわけで
はなく、米国内、そして海外でも開催している。例えばTPP参加交渉が行われ
たベトナムやオーストラリア、ニュージーランドでも開いているし、来るメキ
シコ会合の期間中にも開催を予定している。彼らがこのような地元コミュニテ
ィにフォーカスしたイベントを開催する主な理由は、一部の利害関係者だけで
はなく広く意見を伝え、聞いているというかたちをとることで、TPPのプロセ
スが不透明だとする批判を逸らすためと考えて間違い無いだろう。しかし、こ
うした会合は公開範囲が狭く、限られた関係者しか参加できず、一般市民の出
席が難しいこと [*6] を考えると、USTRが自らが透明であると主張したとして
も、その主張には疑問を呈せざるを得ない。

そうしたイベントの大半は、TPPの必要性と重要性を伝えることに費やされる。
そのレトリックは従来通りで全く変わるところはない。しかし、そのイベント
ではいくつかの注目すべきコメントがあった。新美総領事は、日本政府が最優
先事項の一つとしてTPPを見ているが、日本中で国民から反対の声が上がって
いることに加え、交渉参加にあたっては他の交渉参加国の合意が必要になるこ
とが参入障壁となっている述べた。

米韓FTAの交渉を主導したUSTR補佐官のカトラー氏は、最も興味深いコメント
をした。彼女がUSTRで仕事を始めた20年以上前には、議会のメンバーに交渉の
状況について説明し、交渉内容によって利益を損ねることがないと伝えるため
に費やせる時間は、勤務時間の4分の1しかなかったという。しかし、最近では
米議会議員との会合に彼女の勤務時間の75%は費やされていると彼女は断言す
る。

これが意味することは、我々の利益を説明するために議会のメンバーにプレッ
シャーを与え続け、秘密主義の貿易交渉に立ち向かうことが今まで以上に重要
になってくるということだ。TPPとACTAは両者とも知的財産権を拡張し、私た
ちのインターネットの自由に脅威をもたらす手段である。そしてその反対運動
は徐々に日本や世界中で勢いを増している。日本政府がTPP参加へ準備をして
いると言われているが、日本国民の反対の声がその進展を遅らせることに成功
していると聞いて心強く思っている。

私たちが米議会に圧力をかけ続けることを支援してほしい。そして交渉は真に
透明であるべきで、さらに市民社会や公益団体も交渉に含めるように我々が主
張していると伝えてほしい。


[*1] 欧州議会におけるACTA否決を指している。

[*2] 「福井弁護士のネット著作権ここがポイント ACTAはマイルド? TPPと
の条文比較で見えてくる“本当の狼”とは」が例として挙がっている。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20120914_559390.html

[*3] http://www.jas-socal.org/Default.aspx?pageId=824060&eventId=459333&EventViewMode=EventDetails

[*4] http://www.ustr.gov/about-us/biographies-key-officials/wendy-cutler-austr

[*5] http://www.la.us.emb-japan.go.jp/web/m01_05_16.htm

[*6] 日米協会に加入するには年75ドルの会費が必要。

No.12 145ヶ月前
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