限界が浮き彫りに
政府の特定秘密保護法の運用を監視するとして衆参両院に設けられた情報監視審査会は3月30日、初の報告書をそれぞれの院の議長に提出しました。両報告書の記述から、審査会が秘密の提出や説明を政府に求めても、提出するか、どう説明するかは政府の判断次第という実態が浮き彫りになりました。同時に、“チェック機関”というには程遠い審査会の限界も明らかになりました。報告書には、政府が2014年に指定した特定秘密382件(約18万9000点)の運用に関する調査の経過や結果などが記載されています。
質疑の概要を掲載した衆院審査会の報告書によると、国家安全保障会議(NSC)4大臣会合の結論について、委員が「特定秘密とならないものがあるのではないか」と議事録の開示を求めたのに対し、政府は「同会合は総理の下、率直な意見交換が目的。非公開が前提」と答えるなど、自分たちの都合の悪い情報の提供をかたくなに拒む政府の姿勢が垣間見えます。
「周辺有事」に関する「外国の政府との協議の内容」などとする特定秘密の「外国」の国名について、政府は「答えは差し控える」などと答弁。自衛隊の部隊行動基準(ROE)の取り扱いについての質問には、特定秘密ではないが「公開は差し控えている」と答弁。秘密保護制度のもとで秘密のベールが何重にも張り巡らされている実態の一端が明らかになりました。
報告書も「特定秘密ではない事項にも答弁を差し控えることが多かった」などと記述しています。しかし、衆院審査会は運用改善を求める「意見」を報告書に記載しただけで、審査会がもつ「勧告」権の行使に踏み込みませんでした。政府に特定秘密の内容の提示を求めたのも1件のみでした。
参院審査会の報告書からは、法務省が秘密事項のリストで特定秘密を取り扱う職員の範囲を黒塗りにして提出したり、防衛省の10件の特定秘密の名称が同じだったことがわかります。外務省が秘密を取り扱う職員の範囲の一部を部局の名称とするなど、政府側が何でも秘密としようとしている実態が明らかになりました。これらは、委員の指摘で一定の改善がなされました。
同審査会では15年12月、民主の委員が国家安全保障会議と警視庁の特定秘密計2件の提示を求める動議を提出しましたが、自民公明の委員が反対して否決。委員への提示は計4件にとどまりました。
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