(2) なお、いわゆるネット右翼と呼ばれる方々の中には、TPPを中国包囲網と捉え、 賛同の意を示している方も少なくないようです。 TPPをブロック経済の一種として考えれば、この解釈には一定の理があると思います。 しかし、今月20日に行われた東アジア首脳会議での、 オバマ大統領の発言をみる限り、そうした見解は性急に過ぎるように思います。 (以下引用) [プノンペン 20日 ロイター] オバマ米大統領は20日、カンボジアのプノンペンで開催されている 東アジア首脳会議で、南シナ海や他の地域における領有権問題をめぐる 緊張緩和に努めるよう、アジア各国の首脳に訴えた。 ただ、領有権をめぐって中国と緊張関係にある日本、フィリピン、ベトナムを 明確に支持する姿勢は示さなかった。 ベン・ローズ米大統領次席補佐官(国家安全保障担当)は 「オバマ大統領のメッセージは、緊張緩和が必要だというものだ。 特に、中国と日本という世界最大の経済国の2つが こうした緊張関係にあることを考えれば、緊張を高めるリスクを冒す理由はない」と述べた。 また、オバマ大統領は再選を決めた後初めて中国の温家宝首相と会談し、 米中は貿易や投資に関する「明確な交通ルール」を定めるため協力する必要があると 呼びかける一方、中国がこれらのルールに違反しているとの批判は差し控えた。 (http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ05220121120) (引用ここまで) もしTPPが中国包囲網であれば、まず中国の知的財産権や為替制度が糾弾されるところでしょう。 しかし、日本の国内メディアが、これだけ領有権その他で紛糾したなかで、 オバマ大統領のメッセージはごくごく中立的なものでした。 なお、「民主党はダメだが、うちの党なら有利に交渉を進められる。」と 考えている党も、いくつかあるようです。 しかし、あれだけの長期間、自力でTPPの日本語訳文さえ国民に公開できなかった 与野党の方々に、日本に有利に交渉を進められるだけの力量があるとは、 残念ながら思えません。 そもそも、特定の国を利する可能性のある協定だとすれば、より一層、 日本は慎重に交渉参加の是非を議論すべきでしょう。 今後、日米の財界は、「日本が中国化する」「日本が世界の孤児になる」 といった表現で、一般国民への圧力を強めていくでしょう。 しかし、こうしたものに臆する必要はありません。 TPPに参加しなくても、大多数のアメリカ人は、 これまで通り日本と付き合ってくれるでしょう。 むしろ、途中からの軌道修正の極めて難しい多国間協定であるTPPに参加して、 現在のEU、ユーロ圏のように、国民レベルでの埋めがたい断絶を引き起こしてしまうことを、 私は恐れています。 財界の機嫌を取ることは、資本の乏しい途上国ではやむを得ない面もあります。 しかし、国内で有効な融資先が見つからず、 カネ余りで超低金利国債が発行されるようなこの日本で、 財界のご機嫌取りは大した意味を持ちません。 長い目で見て、日本が世界の人々からより愛される国となるよう、 賢明で思慮深い判断をすることを、私は望みます。 (以上孫崎さんのブロマガに書いたコメント) ともかく私の見解としては、TPPで得するのはアメリカでもごく一部の人間だけで、 またそれを推進する側も、ごく少数の人間に過ぎないということです。 そういう姿勢で、構えていけるとよいと思います。
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なお、いわゆるネット右翼と呼ばれる方々の中には、TPPを中国包囲網と捉え、
賛同の意を示している方も少なくないようです。
TPPをブロック経済の一種として考えれば、この解釈には一定の理があると思います。
しかし、今月20日に行われた東アジア首脳会議での、
オバマ大統領の発言をみる限り、そうした見解は性急に過ぎるように思います。
(以下引用)
[プノンペン 20日 ロイター]
オバマ米大統領は20日、カンボジアのプノンペンで開催されている
東アジア首脳会議で、南シナ海や他の地域における領有権問題をめぐる
緊張緩和に努めるよう、アジア各国の首脳に訴えた。
ただ、領有権をめぐって中国と緊張関係にある日本、フィリピン、ベトナムを
明確に支持する姿勢は示さなかった。
ベン・ローズ米大統領次席補佐官(国家安全保障担当)は
「オバマ大統領のメッセージは、緊張緩和が必要だというものだ。
特に、中国と日本という世界最大の経済国の2つが
こうした緊張関係にあることを考えれば、緊張を高めるリスクを冒す理由はない」と述べた。
また、オバマ大統領は再選を決めた後初めて中国の温家宝首相と会談し、
米中は貿易や投資に関する「明確な交通ルール」を定めるため協力する必要があると
呼びかける一方、中国がこれらのルールに違反しているとの批判は差し控えた。
(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ05220121120)
(引用ここまで)
もしTPPが中国包囲網であれば、まず中国の知的財産権や為替制度が糾弾されるところでしょう。
しかし、日本の国内メディアが、これだけ領有権その他で紛糾したなかで、
オバマ大統領のメッセージはごくごく中立的なものでした。
なお、「民主党はダメだが、うちの党なら有利に交渉を進められる。」と
考えている党も、いくつかあるようです。
しかし、あれだけの長期間、自力でTPPの日本語訳文さえ国民に公開できなかった
与野党の方々に、日本に有利に交渉を進められるだけの力量があるとは、
残念ながら思えません。
そもそも、特定の国を利する可能性のある協定だとすれば、より一層、
日本は慎重に交渉参加の是非を議論すべきでしょう。
今後、日米の財界は、「日本が中国化する」「日本が世界の孤児になる」
といった表現で、一般国民への圧力を強めていくでしょう。
しかし、こうしたものに臆する必要はありません。
TPPに参加しなくても、大多数のアメリカ人は、
これまで通り日本と付き合ってくれるでしょう。
むしろ、途中からの軌道修正の極めて難しい多国間協定であるTPPに参加して、
現在のEU、ユーロ圏のように、国民レベルでの埋めがたい断絶を引き起こしてしまうことを、
私は恐れています。
財界の機嫌を取ることは、資本の乏しい途上国ではやむを得ない面もあります。
しかし、国内で有効な融資先が見つからず、
カネ余りで超低金利国債が発行されるようなこの日本で、
財界のご機嫌取りは大した意味を持ちません。
長い目で見て、日本が世界の人々からより愛される国となるよう、
賢明で思慮深い判断をすることを、私は望みます。
(以上孫崎さんのブロマガに書いたコメント)
ともかく私の見解としては、TPPで得するのはアメリカでもごく一部の人間だけで、
またそれを推進する側も、ごく少数の人間に過ぎないということです。
そういう姿勢で、構えていけるとよいと思います。