めるまがアゴラちゃんねる

2014年7月第1週号

2014/06/30 13:47 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第098号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・ゲーム産業の興亡(108)
フィンランドゲーム産業報告:フィンランドから見える世界の資本の動き
新清士(ゲームジャーナリスト)


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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(108)
mixiの「モンスターストライク」に何を見て、今後をどうみるか?

mixiのアクションRPG「モンスターストライク(モンスト)」が6月26日、累計利用者数が900万人を超えたと発表が行われた。6月5日に800万ユーザーを突破したと言う発表が行われたばかりで、1ヶ月かかることなくユーザー数が増加し続けるブーム状態が続いている。株式分割前の6月18日には、株価は19,640円を付けていた。ソーシャルネットワークサービスとして、今後の回復の可能性がないとみられていた1年前の終値は1,456円だったことを考えると、バブル的な株価の状態といってもいいだろう。

すでにパズルゲーム「パズル&ドラゴンズ」のガンホー・エンターテイメントや、「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」のコロプラなど、特定タイトルの大ヒットでいきなり業績が急成長したケースが過去にもあるため、多くの投資家が同じパターンが発生すると踏んで投資を行ったものと考えてよいだろう。mixiは突然ゲーム会社として復活した。


■変化する「運」の土台

なぜ、モンストのこれほどまでのヒットが続く理由を説明することは容易ではない。過去に率直に説明しているが、筆者は今年初めの段階では、ここまでのヒットになるとは予測ができなかった。それでも、ヒットからは、世界的な普遍的な現象といえる、繰り返されるスマホゲームヒットのパターンを読み取ることができる。

このヒットのパターンは、全世界的にスマホゲーム市場で、繰り返されている。先週先々週と紹介したフィンランドのロビオ・エンターテインメントのパズルゲーム「アングリーバード」が20億ダウンロードという途方もない数のダウンロード数を得たのも、最初に人気が出た後に、爆発的にヒットしたケースだ。

また、スーパーセルの戦略ゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」も同様だ。また、上場したイギリスのキングエンターテインメントのパズルゲーム「キャンディクラッシュサーガ」も同様のケースだ。

リリース直後で、それぞれの地域で、初期のヒットが生まれると、好循環を引き起こし始めるようになる。ダウンロードがダウンロードを引き起こし、ユーザー数を急激に増やし、予想できないほどの売上と利益をもたらすようになる。ただし、ヒットする条件は、どんどん時代の変化に応じて変わっていく。

そもそも、アップルのコンテンツ流通サービスのiPhone用の「AppStore」だけで、15万本のゲームが溢れかえっている状況で、その最初の人気を得ることは難しい。インターネット広告のテクニックなど様々な手法が考案されているが、黄金律は存在しておらず「運」による要素は確実にある。ただ、その「運」の土台も、時代状況の中で、刻々と変化していく。


■アングリーバードに見る「運」の土台の変化

何度かこれまでも指摘しているが、特にスマホゲームでは、過剰集中が起こりやすい傾向がある。AppStoreや、アンドロイド端末用の「Google Play」といったコンテンツ配信サービスの仕様上の影響が大きい。

ユーザーはダウンロードランキングを見て、どのアプリをダウンロードするのかを決める傾向がある。上位にあるゲームほど、人気のあるゲームだと考える。下位ランキングのゲームを探して遊ぶという熱心なユーザーは、割合としては高いとは言えない。特にランキングのうち、「トップ売り上げランキング」で上位を獲得すると、さらに上位集中を起こしやすいために、人気が加速度的に増加しやすい。

もちろん、さらにスマホゲームの寿命は数ヶ月から1年と寿命が長いため、一度多くのユーザーを獲得すると、ネットワーク効果が発生し、ますますユーザーを獲得する現象が起こる。

現在は、世界的に「トップ売り上げランキング」が、ユーザーの人気を集めるバロメーターになっているのは、この数年で起きた大きな変化だと言っていい。

ロビオは「アングリーバード」によって、高い世界的な認知度を獲得した。10年に、大人気を得たときには、1ドルで販売するか、無料で広告付きモデルの展開によって成功したことが大きかった。世界中のランキングで「トップ有料」と「トップ無料」のランキングに、常にいることが当たり前だった。

ところが、11年頃にアップルが「アプリ内課金」を整備したことで、状況は大きく変わった。現在のスマホゲームの中心となるアイテム課金型モデルへとシフトした。

ロビオが、4月に発表した13年度の売上高は1億5600万ユーロ(2億1600万ドル)、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)が3650万ユーロだった。12年度の売上高は1億5220万ユーロと、若干上昇しているものの、EBITDAは7680万ユーロだったため、大幅に減少している。

スーパーセルが、13年に「クラッシュ・オブ・クラン」の大ヒットで13年1〜12月の売上高が8億9200万ドル、EBITDAが4億6400万ドルへと急成長していることからも、ビジネスの中心がシフトしてしまったことがわかる。1ドルアプリで、大きな成長を生むことは難しくなってきている。

現在でも、1ドルで販売される「アングリーバード」はアメリカでは30位内に付けており、日本でも50位以前ごと、定番アプリとなっている。ただ、日本では、以前ほど人気のアプリとは言えなくなりつつある。ロビオは、ゲームを低価格にして、キャラクターの浸透を図り、ライセンスしてマーチャンダイジングによるビジネスに力点を入れてきた。売上47%を占めているほどの展開をしている。

しかし、日本では、12年に、タイトーがゲームセンターのプライズでアングリーバードを扱ったが、現在はその姿を見かけることはなくなっている。

ブームを過ぎたコンテンツが、盛り返すことは容易ではない。現在は、アングリーバードは、サンリオが日本でのマーチャンダイジング化の権利を持っているが、勢いを盛り返すのは、難しいのではと筆者は考えている。


■まだ伸びしろと勢いを感じさせるダウンロード数の変化

「モンスト」がローソンとタイアップを行い、対象商品を購入すると、「かぐや姫」といった限定キャラを入手できるといったキャンペーンを行っている。ヒットするコンテンツに乗るのがマーチャンダイジング戦略の基本であるため、まさにブームの最中にあることを強く感じさせる。

「モンスト」の人気がいつまで続くのか、というのは、やはり予測が難しい。ただ、困ったことにそれを正確に予測することは、容易ではない。ただ、パズドラと比較すると、まだまだ伸び代があると見ることができる。パズドラは、ガンホーの発表では5月27日に2800万ダウンロードにまで達している。

800万ダウンロードを達成したのは13年の1月30日で、900万に達したのは2月18日だった。「モンスト」は、大体20日前後という同じようなペースで、800万から900万ダウンロードを達成しているため、まだ増加するとも見ることができる。「パズドラ」は、その後、ほぼ毎月100万ダウンロードのペースを維持し続けている。

着目すべきは、このペースがいつまで続くのかということだろう。ロビオのケースからは「運の土台は、いつかは崩れると考えられる。ただ、少なくとも、今後、数ヶ月は崩れると思われる要素は見当たらないようにも思える。


□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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