2014年4月第1週号
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めるまがアゴラちゃんねる、第084号をお届けします。
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・ゲーム産業の興亡(96)
アメリカからのゲーム業界最前線報告(2)ソーシャルゲームバブル再び
新清士(ゲームジャーナリスト)
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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)
ゲーム産業の興亡(96)
アメリカからのゲーム業界最前線報告(2)ソーシャルゲームバブル再び
3月25日、フェイスブックが3Dの仮想空間(VR)を実現するヘッドマウントディスプレイ米Oculus VRを20億ドルで買収すると発表した。前週のGame Developers Conferenceで、OculusDevelopment Kit 2(DK2)を発表したばかりだったため、衝撃を持って受け止められた。12年に創業したばかりの同社が、わずか1年半でこれほどの価値へと変わったことは、VR技術への高い期待と評価を現しているという見方ができる。
ただし、別の見方もできる。
GDCの会場で、何度か議論として出ており、興味深く聞いたのは、今がシリコンバレーを中心にIT関連技術に対して「バブル」が、再び起きているという見方だ。
■ソーシャルゲームバブルの象徴Zynga
ゲームに関連する企業では、2011年12月に上場したFacebook向けのソーシャルゲームで大きく成功した米Zyngaが、バブルの象徴として上げられる。2007年創業の同社は、2010年に10社ものソーシャルゲーム会社を買収し、2013年1月には、2億6500万人を超える月間のユーザー数を集めることに成功していた世界最大のゲーム会社に躍り出ていた。
しかし、上場の公募額では10ドルだったが、その後、業績は悪化していることが明らかになり、急激に低下。翌年の3月には、2.09ドルにまで下がるという状態になった。12年7月には、前年の1300万ドルの黒字から、3844万ドルの赤字へと転落している。
Zyngaが失敗した要因としては、Facebookが世界で7億人以上のユーザーへと広がる過程で波に乗って、世界中のユーザーを得ることに成功したことが上げられる。
元々、アイテム課金型で提供されていたゲームであるため、ユーザーの課金比率は10%以下で、なおかつ、Facebookを利用するユーザーは、お金を支払う方法をもたない発展途上国のユーザーも多かった。実際は、月ユーザーの支払金額の平均は、8セント程度に過ぎなかった。数億人という単位のユーザーを抱えていれば、安全ということはなく、やがて、ゲームの人気が下がり始めると、急激に業績は悪化した。
さらに、Zyngaの状態を厳しい立場にすることになったのは、12年以降に急成長をしてきたスマートフォン市場への対応に遅れたことだ。Facebookを中心に事業展開をしていたZyngaの中心となるユーザーは、PCブラウザーで遊ぶユーザーだった。
「Zynga Porker」といった一部の定番タイトルだけは人気を得ることができたが、「Farm Ville」など、同社の人気ゲームを移植はしたものの、ゲームのインターフェイスの好みの違いや、類似ゲームに押されるなど、Facebookの時のような有利な立場を大半のゲームで築くことができなかった。
■攻めの姿勢に転じたZynga
その後、Zyngaはインターネット上での「カジノ」へと展開する可能性を模索しているが、結果を出せていない。リストラを繰り返し行い、会社の再編を進めている。
ただ、今年に入り、攻めへの姿勢も見せている。1月には、300人以上、全従業員の15%のリストラを行っている。同時にミドルウェア開発とゲーム開発事業を行っていた、英NaturalMotionを5億2700万ドルで買収することを発表している。同社は、3Dキャラクターの動きをなめらかに見せるアニメーションを作成する技術を持っており、それをスマートフォン向けに使いやすくするように技術開発を続けてきている。
こうしたZyngaの不採算部門のリストラや、スマートフォン向けタイトルへの取り組みを進めようとしている考えられたことが好感され、株価は3月上旬には5ドル台、ピーク時で5.79ドルを付けている。Zyngaの現在の時価総額は38億ドル。ガンホー・オンライン・エンターテインメントが70億ドル、韓国Nexonが35億ドルと比較すると、時価総額は決して低いとは言えない。株価が2ドル台であったことを考えると、かなり回復はしてきているとはいえるだろう。
■Zyngaのバブルとは今のソーシャルゲームバブルは違う?
Zyngaは自社が人数を集めていることを売りとし、ベンチャーキャピタルなどからの投資を利用して、様々な企業を積極的に買収。それにより、時価総額をつり上げて行くという手法を通じて、上場にまで持っていくことに成功した。ただ、実際には、売上は、それほどでもない張り子の虎であることが、上場後に明らかになり勢いは失速した。Zyngaの失敗は、ソーシャルゲームバブルを終わらせたと言ってもいい。
しかし、スマートフォンに戦線が移動しても、勝ち組負け組が決まろうとしている現在、新しいバブルが生まれつつあるのだ。この成功例が、先々週に紹介した上場申請に入っている「キャンディクラッシュサーガ」の英Kingであり、「パズドラ」頼みのガンホーであり、ソフトバンクに30億ドルで買収された「クラッシュ&ドラゴンズ」のフィンランドのSupercellが代表格として上げられる。
Zyngaとの違いでありリスクである点は、1タイトルへの収益依存率が極めて高い点だ。そのブームがいつまで続くのかが不明瞭だ。一方で、強さは、事実として利益を上げているという点だ。「バブル状態ではあるが、利益が出ているので単純なバブルとはいえない」という意見も出ていた。バブルは、何をきっかけにはじけるのかを予測することが難しいが、今は、バブルを中心にマネーが動いているのも事実だ。
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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin
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