めるまがアゴラちゃんねる、読者の皆さま、
あけましておめでとうございます。
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めるまがアゴラちゃんねる、第072号をお届けします。
発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

コンテンツ

・ゲーム産業の興亡(84)
【特別篇】2014年のゲーム市場を読む
新清士(ゲームジャーナリスト)


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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(84)
【特別篇】2014年のゲーム市場を読む

あけましておめでとうございます。
今回は特別篇として、今年のゲーム市場がどのように動くのかを、予測していきたい。ただ、昨年同様に、極めて読みにくい年になることは間違いない。それでも、半年程度はその変化を予測はできる。そのため、今年というよりも、上半期という条件で予測できる範囲で紹介していきたい。

■スマートフォン向けのゲーム市場は、日本を中心に成長が続く。
日本は「ガチャ」システムの文化が定着したこともあり、他国に比べてユーザーの一人当たりの売上単価が高い。昨年9月頃には、日本より3倍近く多くの人口を抱える世界最大の市場だった、アメリカ市場を追い抜いたと考えられる。

アメリカに比べて日本の大きな特徴は、アンドロイド端末向け市場の大きさが、iPhone向け市場とほとんど変わらないところだ。安定的な決済環境、タイトルコピーの難しさ、回線速度の安定性など、他国に比べて優位な要因が複数あることが大きいと思われる。

また、日本市場では、完全にガラケーからのユーザーの移行が完了していないため、今年の成長余地はまだ残されている。調査会社のAppAnnieは、日本のスマホとガラケーを比較した場合、スマホのシェアを42%と見ており、それが今年66%まで伸びると予測している。

市場規模の拡大も続くとみられているため、今年も市場は、昨年以上に拡大すると考えていい。とはいえ、いずれ市場の成長は頭打ちになることは間違いなく、日本のゲーム会社はあらためて、海外進出の戦略を探ることになるだろう。しかし、欧米圏のユーザーは日本よりも一人当たりの支払金額が小さいため、進出は容易ではない。

■「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」の人気は簡単には急落しない
「パズドラ」(ガンホー・オンライン・エンターテインメント)の人気が急落することは考えにくい。MMORPG(大規模オンラインマルチプレイヤーオンラインRPG)で、04年にリリースされた「World of Warcraft(WoW)」(Blizzard Entertainment)が一強という時代が生まれた。10年にはユーザー数は全世界で1000万人を超えた記録を持っている。

月額課金制度をとっているため、パズドラとWoWは簡単には比較しにくい側面があるが、WoW対その他という状況が生まれ、後発の1億〜1億5000万ドルのコストをかけた「スターウォーズ」のMMORPGなどは、まったく刃が立たなかった。

これは日本以外の地域で人気が続いているストラテジーゲーム「クラッシュ・オブ・クラン(CoC)」(スーパーセル、10月に1500万ドルでソフトバンクが買収)、パズルゲーム「Candy Crush Saga(CCS)」(英King.com)にも言えることで、上位ゲームの優位性は簡単には揺るがないと思われる。

他方で、ソフトバンクに見られるように、スマホゲーム市場は、スマホアプリを中心とした世界規模のM&A時代に入ったと考える事もできるため、その動きが今年は活発化するだろう。特に、King.comがどこと組むのかで、市場の状況は大きく変化する可能性がある。

■ヒットタイトルのアイデアコピーはますます登場する
これらのヒットゲームに追従する形で、アイデアコピーのゲームが複数登場することになると思われる。今月に入ってDeNAは「パズ億」をリリース。このゲームは、CCSと現在のLINEのヒットゲームである「LINEポコパン」を合わせたゲームだが、オリジナリティを生みだすことに成功している。

同様に、CoCのアイデアコピーのゲーム開発も日本のゲーム会社各社が、すでに開発に取り組んでおり、今年の前半にはリリースされてくるだろう。CoCの二番煎じとして成功できるのかは激しい争いにはなるだろう。

「パズドラ」のアイデアコピーである「三国志パズル対戦」(Cygames)は、親会社のサイバーエージェントの広告宣伝力によってヒットを生みだすことができている。アイデアコピーのゲームの場合、ヒットを引き起こす決め手となるのは、広告宣伝費の力に大きく依存する。初期リリースのヒットコストが、数千万円が当たりまえとなっている現在から、ますます高くなっていき、中小にとっては厳しい状態が生まれると思われる。

これまでの「ガチャ課金」から、ゲーム終了後にもう少しゲームを続けたい場合にお金を支払う「コンティニュー課金」へのシフトが進もうとしている。「パズドラ」では「コンティニュー課金」が50%近いという見方もある。日本市場では、「脱ガチャ」で成功できるかも、今年の重要な焦点になるだろう。

■欧米と日本とではまったく違った展開になる家庭用ゲーム機
任天堂の「ニンテンドー3DS」は、年末商戦を終えてみると日本国内は好調な結果に終わっている。少なくともスマホゲームとユーザーの食い合いは起きていない。400万本ヒットの「モンスターハンター4」(カプコン)に見られるように、縮小の気配は見ることができない。低年齢層やコアゲーマー層に安定的な人気を得ており、ゲームユーザーはどちらも遊ぶ傾向がある。

ただし、任天堂は、アメリカ、欧州では、スマホ端末にシェアを取られており、そこでは苦戦をしている。一方で、「Wii U」の苦戦の改善の様子は見られず、今後も回復の見込みはないと考えられる。

欧米で11月にリリースされた「プレイステーション4」(SCE)が350万台以上、「Xbox One」が250万台以上のヒットが起きている。特に、PS4は最初の販売としては大きく成功したと言える。据置型でゲームを行う、コアゲーマー市場が予想以上に残っていると考えられる。ただ、すべてのサードパーティが、「PS3」、「Xbox360」向けへの当分の間、マルチプラットフォーム展開を行うと考えられるため、ゲーム販売の中心は旧世代の機種が引っ張ることになると思われる。

それでも、新世代のゲームでも数百万本のヒットが想定できる環境が生みだされたことは、シフトが予想以上に順調に進みうる可能性を示している。しかし、スマホゲームに押され、据置型ゲーム機はニッチ市場へと変わりつつある現状は大きく変化しないと思われる。収益性という面では、据置型がゲーム市場全体の中で、優位に立つということは考えにくい。

一方で、日本では、PS4は2月に発売されるが、PS3時代から、据置型ゲーム市場は衰退の傾向をはっきりと見せており、欧米のような大ヒットが生まれることは考えにくい。一通り、ガジェット好きが買ってしまうと、販売ペースは鈍るだろう。

日本のゲームは、すでに予算規模等や質に大きな差が生まれており、欧米各社と争うことが難しい。ワールドワイドの販売で成功できる可能性が低いPS4に向けて、ゲームを開発することに積極的ではない。海外市場は据置型が、まだ成立するが、日本では携帯型(ほぼ、3DSと考えてよい)と、スマホゲームがけん引していくことになると思われる。


今年も、お読み頂く皆様にとって有益な情報を書いていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。



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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
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