めるまがアゴラちゃんねる、第064号をお届けします。
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コンテンツ
・ゲーム産業の興亡(75)
ソーシャルゲームはどこで収益をあげるのか
新清士(ゲームジャーナリスト)
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特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)
ゲーム産業の興亡(75)
ソーシャルゲームはどこで収益をあげるのか
ソーシャルゲームを遊ぶユーザーの心理の説明を始める前に、もう一度、ソーシャルゲームの一般的なビジネスモデルについておさらいをしておきたい。
■家庭用ゲームとかけ離れた販売ルールを持つソーシャルゲーム
ソーシャルゲーム(=ソシャゲ)は、元々はソーシャルネットワーキング(SNS)上で、遊ぶことができるゲームサービスと考えられてきたが、現在は、その意味は広がって解釈されている。スマートフォンなどでも、無料からゲームを遊ぶことができる、アイテム課金方式のゲームであれば、ソシャゲと言われる。
今は、日本ではフィーチャーフォン(=ガラケー)向けのサービスとして急成長したディー・エヌ・エー(DeNA)やグリー、海外では、Facebookだった時代から、急激にiPhoneやAndroid端末といったスマートフォンに市場にシフトが続いている。
家庭用ゲーム機の時代では、5800円なりの固定価格でメディアを購入し、ユーザーはそれを一度購入すると、それ以上の追加の課金が求められることなく、遊ぶことができるというルールになっていた。しかし、ソーシャルゲームの場合は、ゲームそのものはダウンロードして無料で遊びはじめることが開始できる。
一方で、ゲームを有利に進めていくためには、アイテムを購入して遊ぶ必要がある仕組みになっている。09年頃に、DeNAやグリーのゲームがヒットするようになるにつれ、当初は違和感を持って社会的に受け止められた。あまりにも、これまでの家庭用ゲーム機が前提としていたルールとかけ離れていたからだ。
■消費されるデータにお金を払うことの一般化
ある家庭用ゲーム機のゲーム開発者は、「釣り★スタ」(グリー)でゲームを進める中で、「一本2000円もするような釣り竿が壊れる」とツイッターの中で、09年頃、戸惑いと反感を持って発言している。釣りを有利に進めていくためには、竿やリール、ルアーなど、実際の釣りに登場するようなアイテムを購入しなければならない。
しかし、より大きな魚を釣ることを狙うならば、より性能の高い釣り竿といった有料のアイテムを購入しなければならない。そして、一定時間釣りを行うと、もう一度釣りを行うためには、数時間程度の規定の待ち時間が経過を必要とするようになる。また、サービス直後にはその機能がなかったが、現在では「サオみくじ」と呼ばれる「ガチャ」システムも導入されている。少しずつ時間をかけて、ゲームを進めていくことができるが、難易度が高くなるにつれて、非常に時間がかかり、ゲームに苦戦するようになる。
ユーザーには、課金をするためには、基本的には選択肢が3つ用意されている。一定金額で販売されているアイテムを購入して、より性能の高い竿などで大きな魚を狙うか、一定の待ち時間を省略するためにお金を払い。今すぐにゲームを再開するのか、ガチャを利用してより高度な手に入りにくいアイテムを狙うかという選択肢だ。今では、ただのデータにもかかわらず、ユーザーが「壊れる竿やリール、ルアー」を手に入れるためにお金を払うことが、違和感なく定着している。
「釣り★スタ」は、ガラケーから11年5月にスマホ向けのアプリとしてリリースされた。08年にリリースされた古いゲームだが、現在でもiPhoneのApp Storeのトップ売り上げランキングで、月に一度は10位以内に入ってくる寿命の長いゲームだ。ユーザーをひきつけるゲーム内イベントが定期的に繰り返されていることが、人気を保っている理由と考えられる。グリーのソシャゲの中でも、安定した人気を保っている。
■一部の高額課金のユーザーに支えられる収益
ソーシャルゲームに課金するユーザーは、ゲームを実際に遊んでいるユーザーの5%前後と考えられている。大半のユーザーは無課金で遊んでおり、一通りゲームを遊び飽きてしまえば、無料のゲームがひしめく中、簡単に別のゲームに切り替えてしまう。そのため、ゲームユーザーを新規に獲得することと、現状遊んでいるユーザーに継続して遊んでもらうのかの2点が、収益を出し続けるために非常に重要なポイントになっている。
アイテム課金の仕組みに対しては、社会的な困惑と共に、ユーザーの心理を、お金を払わせるように誘導するように巧みに操っているのではないかとする批判が絶えなかった。特に、2012年に「コンプガチャ問題」が登場したときには、ソーシャルゲームが「射幸心を煽っている」という聞き慣れない言葉が登場した。
ところが、現在では「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー・オンラインエンターテインメント)が大ヒットしているように、社会的にアイテム課金への理解が定着しつつある。むしろ、ゲームを固定価格で販売するゲームを遊ぶことの方が、バカバカしいと考えられるようになりつつあり、アイテム課金モデルを利用する事をかたくなに嫌っている任天堂が苦戦を強いられる状況に変わって来ている。
「ユーザーがお金を払ってくれる=ユーザーがゲームを楽しんでくれている」という理解はゲーム会社全体に浸透している。しかし、一部のユーザーしかお金を払っていないにもかかわらず、こうした状況はなぜ生まれているのだろうか? 多くのゲームでは、継続して遊ぶユーザーのうち、「毎月の高額課金を支払っているユーザーが、売り上げに貢献している割合が圧倒的に高い」ことが知られている。なぜ、こうしたことが生まれるのだろうか?
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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin
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