めるまがアゴラちゃんねる

2013年9月第3週号

2013/09/16 10:24 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第058号をお届けします。
発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

コンテンツ

・言論アリーナ ご報告 2013年8月21日放送分
どうなる消費税増税? どうする社会保障改革?【霞が関政策総研】

・ゲーム産業の興亡(68)
ゲーム市場の収益性を悪化させるiPhone
新清士(ゲームジャーナリスト)


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・言論アリーナ ご報告 2013年8月21日放送分

どうなる消費税増税? どうする社会保障改革?【霞が関政策総研】

アゴラ研究所の運営する映像コンテンツの「言論アリーナ」。中立の立場から政策を打ち出す政策家として活動する石川和男さんの番組「霞が関政策総研チャンネル」も放送している。8月21日の放送は、「どうなる消費税増税? どうする社会保障改革?」を放送した。

出席者は東京財団研究員で政策コーディネーターの、元衆議院議員の亀井善太郎氏、元財務官僚で、法政大学准教授の小黒一正氏が務めた。モデレーターは東京財団上席研究員、政策研究大学院大学の客員教授を兼ねる石川和男氏だった。

■今何が話し合われているのか

自民党が勝利した参議院選挙。しかし年金・医療といった社会保障の財源をどうするのか、またその負担増によって深刻になる財政赤字問題にどのように対応するのか、明確に争点とはならなかった。今回の番組では専門家を交えて、来年に予定される消費増税の行く末、またその目的である社会保障改革を考えた。

8月に社会保障制度国民会議が最終報告案をまとめた。こえは首相官邸に置かれた、政府と有識者の会議。今後社会保障をどうするのかを検討するものだ。70歳以上の自己負担を2割にする、大病院の受信で負担を増やす、介護を地方に分ける、年金の引き上げ(中長期課題)、子育て支援拡充などを盛り込んだ。

今後のスケジュールは、政府からプログラム法案が秋に出されるというものだ。高齢化の進展は大きく、財政負担の拡大が危険な状況になっている。しかし、年金の支給開始の延長、減額、徴収方式の見直しなど、「抜本的な対策は行われていない。それに手と付けないと、消費税30%にならないと財政がなりたたなくなる」(小黒氏)という。

ただし、社会保障には1年ごとに1兆円ずつ増えている。「「社会制度を持つのか」という国民の負担に答えなかった」と亀井氏は分析した。

このままでは破綻してしまう。しかし、その悪影響は、立場と、影響が違う。しかし「高額所得者の方が、ショックが小さいことはたしか」(小黒氏)という。亀井氏は、「働く場がない、働く成果のない社会を次の世代が生きることになる」と世代間の問題を指摘した。

■問題をどのように解決するのか

問題は、正確な事実に基づき、議論と擦り合わせをすることが必要だ。抜本改革は、基本的には、「受益を減らす方向でしかない」(石川氏)。「有権者は賢明で、話せばそれを受け止める」(亀井氏)。しかし、「それが擦り合わせの中で、国民の意見がなかなか反映されない」という。

問題はかなり複雑だが、「すべての始まりは情報ではないか」と亀井氏は指摘した。これらの答申の情報は、いずれも政府発の情報で、かなり楽観的な数字が盛り込まれている。国会直属の調査機関をつくり、政府・行政の動きと向き合う中で審議を重ね、国民的議論を行うべきではないか」とまとめた。

(アゴラ編集部)



特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

・ゲーム産業の興亡(68)
ゲーム市場の収益性を悪化させるiPhone

既存のゲーム会社にとって、iPhoneは悪夢以上の何者でもなかった。09年内に登録されたアプリの数だけでも、米国市場で、約7万1000。そのうち、ゲームのカテゴリーに分類されるアプリは約3万1000。ハイペースでアプリの数は増加しはじめた。(※1)

ただ、その時点では、家庭用ゲームと比較するとレベルが高いと言えるようなゲームはあまり存在しない。それでも、ゲームとしては十分に遊べると考えられるようになりつつあった。その流れを決定的なものにしたのが、低価格や無料でリリースされるゲームの登場だ。

■社員数20名の企業が月に100万ドル売り上げる
リズムゲームの「Tap Tap Revenge」(米Tapulous)は、iPhoneの同時発売を目指して開発されリリースされたことで、大きく成功した。過去に存在するもののアイデアをiPhone向けに翻案した典型的なゲームで、音楽に合わせて、タッチスクリーンをタップして高得点を目指すというゲームだ。

シンプルなゲームシステムだが、なによりも無料から数ドルであったために、多くのユーザーが遊ぶようになった。TapulousはiPhoneの発売を狙って立ち上げたベンチャーのゲーム会社だ。このゲームは100万ダウンロードに達している。翌年の6月までに5〜600万ダウンロードが行われたと考えられている。

このゲームは、調査会社のcomScoreによると当時のiPhoneのユーザーの1/3がダウンロードしたと考えられている。ロイターの09年12月の記事によると、この会社の収益は月に100万ドルに達していると同社が認めていると書かれている。その段階で、シリーズ累計で2000万以上がインストールされ、6億回以上遊ばれていたようだ。当時の社員数は20名であったために、十分に収益を出していたと考えられる。

「Tap Tap Revenge」は諸手を上げて作り込まれたおもしろさがある、とまでは言い切ることはできる水準ではない。もちろん、ゲームそのものやり込み要素は多いが、それでもすごいゲームとまでは言いきれないのだ。しかし、音楽ゲームを遊んでいたユーザーのなかには、こうした水準の低いゲームであっても、これまでのゲームよりも劇的に安いのであれば、それで十分と考えるユーザーが出てくるようになった。

09年4月に発売された「Doodle Jump」(米Lima Sky)は、さらに素朴なゲームで大成功したゲームだ。ロケットを背中に背負ったタコのようなキャラクターを、ただジャンプさせ、上空へと跳ね上げていくだけのシンプルなゲームだ。0.99ドルで発売されたが、11年12月までに1000万ダウンロードを達成している。社員数はわずか3名の会社であるため、たかが1ドルのゲームであっても大きな収益を出すことができることが証明されるようになった。

■無料か数ドルのゲームがゲーム市場を破壊する
無料か、数ドル程度の極端に安い価格であり、また、ネット流通を使った仕組みでなければ、1年間で600〜1000万本ものダウンロードを実現することは不可能に近かった。一方で、iPhoneのアプリの価格に慣れてしまったユーザーは、50ドルで販売されている家庭用ゲーム機向けのタイトルを購入することはなくなっていく。

iPhoneで低価格のゲームが発売されるたびに、そのゲームジャンルは家庭用ゲーム機では終わりへと一気に追い込まれるのだ。iPhoneの成長に合わせて、小さなベンチャー企業が大きく成功した事例と言える。こうした素早い動きには、既存のゲーム会社は付いていくことが難しかった。

もちろん、iPhone向けのアプリ市場は、供給過剰市場にすぐに変わってしまい、社員数が数名の企業でなければ成功することが難しい市場へとすぐに変貌する。「Tap Tap Revenge」は、早期参入によってメリットを享受した会社であり、さらに単純な技術を使って開発された「Doodle Jump」のヒットは、時代にマッチした「運」の部分が確実にある。

他の企業が戦略をコピーしても、ヒットすることは容易ではないのだ。例えば、「Doodle Jump クローン」と呼ばれる同じようなゲームシステムを持つゲームは、次々に登場するが、オリジナル以上の成功を果たしてはいない。技術が低いからといってアイデアコピーをすればヒットするというものでもない難しさがある。

08年に熱狂的に受け入れられたiPhone市場は、09年には多くのベンチャー企業にも収益を生みだすことは難しいと考えられるようになった。収益を出せる企業は、ダウンロード数がトップのごく一部のゲームに限られており全体としてはごく一部だった。「ゲーム市場そのものの収益性を悪化させただけで、メリットを享受することができたのはアップルのみだ」という、ゲーム関係者の恨み節も09年に入ると言われるようになってきた。

(※1)148apps.bizによる ちなみに13年8月末現在では、全体のアプリ数は約87万8000で、ゲームは15万3000。



□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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