めるまがアゴラちゃんねる

2013年6月第2週号

2013/06/10 08:27 投稿

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めるまがアゴラちゃんねる、第046号をお届けします。
発行が遅れまして、大変申し訳ございません。

コンテンツ

「言論アリーナ」報告 2013年6月2日放送
もう日韓の歴史問題にケリをつけよう 田原総一朗、片山さつき、ケビン・メア、池田信夫(司会)

・ゲーム産業の興亡(56)
「90年代末から重要性が知られるようになるオープンビジネスモデル」
新清士(ゲームジャーナリスト)


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「言論アリーナ」報告 2013年6月2日放送

・もう日韓の歴史問題にケリをつけよう 田原総一朗、片山さつき、ケビン・メア、池田信夫(司会)

日本最大級の言論プラットホーム・アゴラは、運営するインターネット放送、アゴラチャンネルをリニューアルして、ネットチャンネル言論アリーナとして放送を始めた。6月2日の第一回放送は「もう日韓の歴史問題にケリをつけよう」と話題の従軍慰安婦問題を取り上げた。

出席者は田原総一朗氏(ジャーナリスト)、片山さつき氏(参議院議員)、ケビン・メア氏(元米国国務省日本部長)。司会は池田信夫アゴラ研究所所長が務めた。この問題の繰り返しをどのように止めるのか。米国の知日派、そして政治家など、多様な立場の人を集めて議論をした。

日曜日にもかかわらず、ニコ生の視聴者数は3万3000で、コメントが4万1000という今までアゴラの放送した番組の最高記録だった。コメントを見ると「韓国の嘘を放置するのか」といった声が多く、慰安婦の存在を曖昧な表現で認めた「河野談話を見直すべきか」というアンケートには83%が「見直すべきだ」という意見だった。

■慰安婦問題の混乱

いわゆる「慰安婦」問題は韓国からの激しい批判に加えて、橋下徹大阪市長・日本維新の会共同代表がそれを取り上げたことによって、最近再び注目を集めてしまった。これについて参加者は、「必要のない行為」(メア氏)と揃って批判。日本の議員の中で、他国の誤解を取り除くために活動してきた片山氏も「慰安婦問題に取り組んできたどの立場の人にも、マイナスになった」と指摘した。

橋下氏はこれに関連して沖縄の米軍司令官に性犯罪を防止するために『風俗を活用せよ』と述べた。これについて「米軍への侮辱」(メア氏)、「女性への侮辱」と批判は一方だった。

池田氏は、NHK勤務時代、従軍慰安婦と称するたちに取材した経験がある。さらにこの問題を調べた。「70年前、当時の日本政府が朝鮮で女性を拉致したなどの事実はない。ただし、当時の公娼制度の中で、女性が騙されたという事実はあった。ただし日本政府が曖昧な態度を重ねてしまったことで、問題はこじれた」との認識を示し、関係者は米国人のメア氏も含め同意した。

田原氏は河野談話の発表で、韓国から認めれば問題にしないという依頼、そして過度の配慮で、慰安婦問題で曖昧な表現で責任を認める河野談話がまとめられたという裏事情を解説した。「謝れば何とかなるという甘さがあった」という。

■混乱は続き、政治的解決は難しい

今後、この問題にどのように向き合えばよいのだろうか。片山氏は、米国などで韓国人団体が、石碑を立てたり連邦、地方議会での決議の政治運動をしたりする状況を示し、「広報でしっかり主張する。自民党は対外広報予算を大幅に増やしている」と主張した。

それに対してケビン・メア氏は「今ごろ歴史問題で騒ぐのは日本にとって政治的に得策ではない」という。

ただし、片山さつき氏も安倍政権が「河野談話にはさわらない」という方針と述べた。田原総一朗氏も「見直しは政治的に無理だ」という立場だった。これには視聴者には不満が残ったようだ。

池田氏は最後に、「私も日本から喧嘩を売る必要はないと思うが、向こうから喧嘩を売ってくるのに黙っていると認めたことになってしまう」とまとめた。

「言論アリーナ」では、アゴラ研究所に加えて、いくつかのシンクタンクが協力して映像番組を提供する。アゴラ研究所は、この「アリーナ」(集会場、劇場)を、視聴者の皆さんと共に政策を生み出し、社会を変える場に発展させていきたいと考えている。視聴者の皆様のご支援とご参加をお待ちしたい。

アゴラ編集部




特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(56)
「90年代末から重要性が知られるようになるオープンビジネスモデル」

欧米圏、特にアメリカでは、ビデオゲームの発達は、ハッカー文化にかなり支えられている。ハッカー文化は、コンピュータ技術に秀でている人々の総称だ(不正利用する目的で技術を利用するクラッカーと区別される)。ハッカー文化には一つの特徴がある。「お互いに情報をシェアしようとする文化だ」。

これは1960年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)で、世界最初の本格的なビデオゲーム「Spacewar」が開発された時から大きく変わっていない。そのソースコードはコピーすることが簡単であったため、1970年代のインターネットの前身となる各大学間の論文といった情報をシェアする仕組みARPANET(アーパネット)を通じて、各大学などで様々な亜流の「Spacewar」が開発されたとされている。

■適度なオープン化が優位になる時代

これらの情報を共有する仕組みは、やがて1980年代にシリコンバレー地域を中心にハッカー文化を形成することになり、現在にまで影響を与えている。例えば、WikipediaやLinuxはこうした文化の延長線上に存在する。ハッカーたちがなぜ情報を公開し合うのかというのは、そのコミュニティへの所属する企業以上の忠誠心を持っていることがあげられる。これは、結果的にコンピュータのイノベーションを加速化してきている。

一方で、1990年代に入ると、例えばマイクロソフトのように、OSといった基礎プログラムの部分のソースコードを公開することをせずに、ビジネス化をはかるモデルが一般化していく。

ただ、現在でも、完全なオープン化を支持するハッカーグループと、ビジネス化を前提としてクローズ化するグループ(一般的に企業)の考え方の争いは続いている。現在では後者の適度にオープン化することで、ユーザー等が改変したり、プログラムを追加する自由を認めて、独自のエコシステムを形成することが、優位に立てるとの考えが一般的な戦略だ。

例えば、アップルのiPhone向けアプリはiOSの内部のソースコードはユーザーには開示されていないが、自由にiOS向けのアプリをユーザーは開発しビジネス化することができる。これは、先行したWindowsでも同様で、Facebookでも同様だ。形成するビジネスモデルが違っているだけだ。

一方で、グーグルのAndroidは無料でソースコードを公開するというという約束で展開されているため、携独自に改造して、携帯端末以外の用途に使われているケースも多い。グーグルもオープン性を利用して、市場の独占化を目指すという意味では独自のビジネスモデルを持っている。

■様々な呼び方をされるオープンビジネスモデル

ビジネスを形成する基本プログラムを持つ企業・組織と、それを利用してプログラムやそれに伴うサービスを開発してビジネスを行う企業、さらにそれを利用するユーザー。その3つがうまく組み合わさって、高いシナジー効果が生まれることを「エコシステム」と呼ぶ。これを形成することができた企業が、インターネット社会のなかで大きな優位性を築くことがはっきりと理解されるようになるまでには2000年代初頭までかかっている。

先週紹介した、トフラーの議論は、このエコシステムの影響がゲーム産業にも起きていることを紹介している。ただし、このビジネスモデルの優位性が、現在のようにはっきりと理解され、意識的に取り入れられるようになるまでは、90年後期まで時間を要している。

これは、2000年代に入り有効性がはっきりと知られるようになり、2004年にティム・オライリーが言い出しバズワードとなった「Web2.0」以降、様々な言葉で言い換えられている。「オープンビジネスモデル」(ヘンリー・チェスブロウ、2006年)、「ウィキノミクス」(ドン・ダブスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ、2006年)、「クラウドソーシング」(ジェフ・ハウ、2008年)などだ。

この記事のなかでは、企業とユーザーとの関係を、ビジネス上でどう構築していくのかに発展していくことから、「オープンビジネスモデル」に統一して説明する。

■90年代に登場するユーザーとの協調がゲームの質を上げる時代

これらのコンピュータ文化は1990年代初期からアメリカのハッカー文化のなかで緩やかに成長してきた。そして、特に、インターネットの登場がこの文化を加速化した。ゲーム開発に関心を持つハッカーたちが、エコシステムを形成し、その相互作用によって、ゲームそのものにも大きなイノベーションを引き起こしてきたのだ。

後述するが、ゲームについては、2005年に、MITのエリック・フォン・ヒッペルの「イノベーションの民主化(Democratizing Innovation)」(邦題:民主化するイノベーションの時代)のなかで、90年代後期のゲーム内でユーザーとエコシステムを形成することがビジネス上のメリットを生みだす子という研究が紹介されている。

これを初期に生みだした触れる必要のあるゲームがある。FPS(ファーストパーソンシューター、一人称視点シューティングゲーム)の1992年の「Wolfenstein 3D(ウルフェンシュタイン3D)」、それに続く、1993年の「DOOM(ドゥーム)」を開発したid Software(イドソフトフェア)だ。

そして、このプログラムを開発した天才プログラマのジョン・カーマックだ。これらは、世界初のリアルタイムで3D空間を再現することに成功したゲームで、当時の新発想のアルゴリズムによって開発されている。同時に、インターネット網を利用して、多数のユーザーの協力なしには、登場することがなかったゲームでもある。

■ハッカーコミュニティに否定的な立場を取った日本

ちなみに、先に少しだけ触れておきたいが、日本では繰り返し述べているように、ハッカー文化的なものは90年代には消滅してしまう。そして、現在に至るまで、特に家庭用ゲーム機企業は「オープンビジネスモデル」を取ることが下手である。むしろ、否定的な立場を取ることが多い。結果的に、この違いが2000年代に入って、欧米とのゲーム開発の技術力に大きな差を生むことになる。現在でも、この差は縮まっていない。

例えば、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、2005年にアメリカで「プレイステーション・ポータブル」発売から数日後にはハッキングを受けて、中身の解析が行われた。そして、世界中で、自家製のゲームアプリや、ウェブブラウザ、ストリーミング音楽ツールなどが開発されるようになった。

しかし、SCEは首尾一貫してハッカーコミュニティを非難する立場を取り、何度も改造を難しくするアップデートを繰り返した。もちろん、そこにはゲームの違法コピーが流通してしまうといった問題が関わっているが、結果的に、こうしたハッカーたちの創意工夫を取り込むことはなかった。(※1)

やっと、ユーザーがアプリケーションを開発して公開できる「プレイステーションVita」やソニーのアンドロイド端末向けに2012年10月に「プレイステーションモバイル」をスタートしているが、オープンビジネスモデルとしては、アップルやグーグルなど北米企業の動きに比べて相当遅れており、現在のところ、追いつくのは不可能に近い。

(※1)「ウィキノミクス」ドン・ダブスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ(日経BP社)、2006年,P.215-216



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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin

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