「国境を越えてサプライヤーが多く関与していることも時間がかかる要因だ。バッテリー本体を製造した日本のジーエス・ユアサコーポレーション、電気系統システムを担当した仏タレス。米国では電池向け充電装置メーカーの米セキュラプレーン・テクノロジーズ、補助動力装置メーカー(APU)の米プラット・アンド・ホイットニーにも調査が入っている」「バッテリー内の電池(セル)の状態を監視・制御する電池管理ユニット(BMU)を製造する関東航空計器(神奈川県藤沢市)にも立ち入り検査を実施中。787型機では、コスト削減のためボーイングが直接取引するサプライヤー数を従来機に比べて絞り込んでおり、孫請け会社が多い」
「これまでは同型機で使われているのと同様なリチウムイオン電池をめぐる不安は主として、航空貨物として大量に輸送されたり、機内持ち込み手荷物に入れられたノート型パソコン(PC)や携帯電話機といった電子機器に関するものだった。787型機は、大型リチウムイオン電池を使った初めての旅客機だ」。「日本のジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)製の787型機搭載の電池が、全日空と日本航空の旅客機で起きた2件の問題の原因かどうかはまだはっきりしない。業界筋からは、配線や設置が一因となった可能性も指摘されている」「787の事故の原因が何であれ、リチウムイオン電池は過充電をしたり、急速に放電したりすると過熱状態となり、過熱ないし損傷を受けた電池は発火する恐れがある。その燃焼温度は高く、可燃性のガスや炎、火花を放出して、爆発する恐れさえある」「この危険性は、この種の電池が人気を高めたことに関係している。つまり、大量のエネルギーをため込むことができのだ。また、軽く、小さく、充電と放電の時間も短い」「航空規制当局はこの10年間に、個人用電子機器内のリチウムイオン電池が機内や空港で過熱したり、発火したりしたことを記録している。こうした電池を航空機で運ぶ危険性に対処するため、国際安全規則が強化された」「航空当局者によると、2010、11年の2機のジャンボ貨物機の墜落と、06年のこれより小型の貨物機の破壊では大量の電池が一因になったのではないかとみられている」「懸念にもかかわらず、航空機でのリチウムイオン電池の利用は広がっている。米軍のF35ライトニング統合攻撃戦闘機は仏バッテリーメーカー、サフト社が製造したリチウムイオン電池を使っている」「電池への不安が高まる中で、FAA=連邦航空局は広範なテストを行っており、少なくとも1件のテストでは電池が焼けてテスト設備が溶けたという。昨年の一連のテストではFAAはコックピット内でノートPC内の電池を発火させた。大部のマニュアルや地図の代わりにPCを持ち込むパイロットが増えているためだ」
「ボーイングは787のバッテリーを構成する8個のリチウムイオン電池の温度をきちんと監視し、それぞれを冷却する仕組みを導入するか、安全性においてはるかに優れた実績のある従来型バッテリー、すなわちニッケル金属水素(NiMH)電池に交換する必要がある」「リチウムイオン電池は他のタイプのバッテリーと比べ、はるかに出火しやすい」何故なら、「リチウムイオン電池には『有機電解質が含まれているため、揮発性があり可燃性が高まる』のが主な原因だ。他の2種類のバッテリー(ニッケル水素電池や、自動車に使われる鉛蓄電池)は、容器から漏れ出したとしても比較的害が少なく、自然発火の可能性が大幅に低い水溶液を使っている」。「大型バッテリーでは周囲への放熱では間に合わないくらい大量の熱が発生する可能性がある。その結果バッテリー温度が危険な水準に高まり、膨張や最終的には発火を招く恐れがある」。「携帯電話用のリチウムイオン電池が安全なのは、端末の外面近くに内蔵されているために熱が蓄積されず、問題が生じないためだ」。「対照的に、787型機のリチウムイオン電池は、ノートほどの大きさの電池8個が隣り合う形で密閉された容器の中に収められている。つまり両端の電池以外、自らが生み出した熱を発散できない。残る6個の電池は容器の外に熱を放出できず、互いの熱で過熱していく」。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)のドナルド・R・サドウェイ教授は、材料化学の専門家として、米ボーイング787型機のリチウムイオン電池問題の要点を社会にわかりやすく伝える責任があると考えている。またボーイングの問題への取り組み方についてアドバイスがあるという。■「2014年まで運航停止も」サドウェイ氏の見解を簡潔に言えば、ボーイングは787のバッテリーを構成する8個のリチウムイオン電池の温度をきちんと監視し、それぞれを冷却する仕組みを導入するか、安全性においてはるかに優れた実績のある従来型バッテリー、すなわちニッケル金属水素(NiMH)電池に交換する必要がある。ボーイングがリチウムイオン電池からニッケル水素電池への転換を選択すれば、当局からの承認を得るのに最大1年かかり、787は2014年まで運航停止になりかねない。ボーイングは日本航空、全日本空輸、米ユナイテッド航空を含む世界中の航空会社に約50機の787型機を納入済みで、さらに848機を受注している。787は従来型機と比べて20%燃費を改善したのが売り物で、価格は2億700万ドルだ。だがリチウムイオン電池の発火問題で、日米の規制当局は航空各社に対し、バッテリー問題が解決するまで787の運航停止を命じた。ウォール街のある証券アナリストはこのほど、ボーイングは運航停止によって事業に影響を受けた航空会社に少なくとも5億5000万ドルを支払うことになるとの見通しを示した。このため、ボーイングの株主にとってはまさに“時は金なり”の状況だ。サドウェイ教授が1月25日の取材で筆者に語ったところによると、787は2系統のリチウムイオン電池を搭載している。1つはエンジン始動のために大電流を供給。もう1つは主電源が故障した際の補助電源用である。サドウェイ氏は、リチウムイオン電池を採用するというボーイングの判断は、787のデザインの基本思想、つまり、機体の軽量化を進め、運航コストを下げることに沿ったものだったと指摘する。この視点に立てば、他のタイプの電池と比べて重量の割に発電量の大きいリチウムイオン電池(1キログラムあたり150ワット時間)は当然の選択に思える。■電池の「冷却装置」はどこにこの非常に重要な点について、リチウムイオン電池の性能を「3」とすると、それに次ぐニッケル水素電池は「2」、自動車に使われる鉛蓄電池は「1」となる。だがサドウェイ氏は、この点だけに注目してリチウムイオン電池を採用したのは大きな誤りだったとみている。同氏によると、リチウムイオン電池は他のタイプのバッテリーと比べ、はるかに出火しやすい。リチウムイオン電池には「有機電解質が含まれているため、揮発性があり可燃性が高まる」のが主な原因だ。他の2種類のバッテリーは、容器から漏れ出したとしても比較的害が少なく、自然発火の可能性が大幅に低い水溶液を使っている。サドウェイ氏は787で使われているリチウムイオン電池を実際に見たとき、「冷却装置がないように見受けられたこと」に驚いたという。同氏の説明によると「大型バッテリーでは周囲への放熱では間に合わないくらい大量の熱が発生する可能性がある。その結果バッテリー温度が危険な水準に高まり、膨張や最終的には発火を招く恐れがある」。たとえば携帯電話用のリチウムイオン電池が安全なのは、端末の外面近くに内蔵されているために熱が蓄積されず、問題が生じないためだ。それとは対照的に、787型機のリチウムイオン電池は、ノートほどの大きさの電池8個が隣り合う形で密閉された容器の中に収められている。つまり両端の電池以外、自らが生み出した熱を発散できない。残る6個の電池は容器の外に熱を放出できず、互いの熱で過熱していく。サドウェイ氏は捜査当局の詳細な情報を知る立場にないが、自らが目にした状況に基づき、ボーイングは電池が放熱できるように容器内部に通気孔をつくるべきだと主張する。さらに8個の電池それぞれに温度センサーを取り付けること、そして個々の電池の温度が閾(しきい)値を超えないように容器内部に「強制的に空気を流すシステム」を設けるべきだとしている。そして設計変更したバッテリーが完成したら、システム全体を787の一般的なフライト環境より約20%負荷を高めた電流シミュレーション環境でテストすべきだという。さらに滑走路から高度4万フィートまで上昇したり、下降する際の気圧変化へのバッテリーの反応を確かめるストレステストも実施すべきだと話す。■制御システム見直しもリチウムイオン電池のこうした設計変更によってコストは上昇する、とサドウェイ氏はみる。バッテリー1つあたりのコストは1000ドルから、2000ドルに上昇するかもしれない。だが、この程度のコストは2億700万ドルという787の機体価格に比べれば微々たるものだと指摘する。言うまでもなく、発電量は劣るが安全性の高いニッケル水素電池に変えたほうがボーイングとしては得策かもしれない。サドウェイ氏の計算では、ニッケル水素電池にした場合、787型機に必要な電流を確保するには電池重量は50%、おそらく37ポンド(約16.8キロ)重くなる。これは787の重量50万2500ポンドの0.01%に相当する。別のバッテリーに交換する場合は課題もある。ボーイングは787の電気系統のうちリチウムイオン電池を制御するシステムをニッケル水素電池に対応するよう設計変更を求める必要がある。これは仏タレス社に対し発注することになるが、サドウェイ氏の見立てでは、システムの設計、構築、テスト、そして飛行の安全性を確保するには1年はかかる。1つ言い添えておくと、サドウェイ氏はボーイングのリチウムイオン電池をめぐる「コンピューター制御」が容認されたことに首をひねる。既に書いたとおり、コンピュータ制御はリチウムイオン電池から生じる火や煙が客室に入り込むのを防ぐために設計された。だが今月、バッテリーが発火したケースからも明らかなとおり、コンピュータ制御を導入すれば、乗客を満載して高度4万フィート上空を飛ぶ飛行機でもリチウムイオン電池の安全性が確保できるという発想には問題がある。ボーイングはバッテリー2つ分の重量に相当する74ポンド、そして2000ドルのコストを削減しようとした結果、図らずも2億700万ドルもする787型機が最長1年間飛べなくなる事態を招いてしまった、とサドウェイ氏はみる。とても賢明な経営判断とは思えない。ボーイングは787の運航停止について、進行中の捜査についてコメントすることは許可されていないとする声明を発表している。by Peter Cohan, Contributor
「メモ『緊急着陸全日空ボーイング787型機の機体前方電気室のメーンバッテリーが黒く変色し、電解液が漏れていた。こうしたバッテリーの異常は①強い圧力がかかる②急に熱が高まる③電圧が急激に変化する――などの原因で起こる』」
「NHKラジオでは、リチウムイオン電池と言っていましたね。乗客からは取り上げるし、荷物も拒否するのに。リチウム電池は不安定なところが残っていて、事が起きると爆弾と化するので、飛行機には古典的な鉛蓄電池にすべきと思いますね。重いですが」
と同日、リツイートし、
「重大な航空機事故の予防だけでなく輸送機器、建設機械、エレベーターその他社会インフラに関する油圧機器を全て電子化で制御の方向性が正しかったのか?純油圧制御がシンプルで確実な制御技術か?787型のトラブルに限らず電子制御でいいことづくし!の電子制御HSTに技術的死角はないのか」
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