田中康夫公式ブロマガ「だから言わんこっちゃない!」

「だから、言わんこっちゃない!」1月24日号

2013/01/25 00:46 投稿

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 大阪市立桜宮高等学校に端を発した「教育行政」に関して、今日は言及します。
一言ならぬ二言で看破すれば、「お前の努力ミスだろ。努力不足ならぬ努力怠慢」って話なんですね。
先ずは基本認識として、1月22日02:09にアップされた「産経新聞」
を御一読を。

「市教委が教育的な視点から素晴らしい決定をしてくれた。再生へ向けての改革が始まる」と評価。看板の掛け替えだという批判には「体育科として募集はしないのだから、単なる看板の掛け替えじゃない。ベストの案だ」

う~む。頭隠して尻隠さず(苦笑)。「単なる看板の掛け替え」でしょうに、モノの見事に(爆)。
「再生へ向けての改革が始まる」wって科白(せりふ)にも、思わず鳥肌が立っちゃいます。後段で御紹介する「変な音楽」発言と同じく、う~む、ソビエト=ソビエト社会主義共和国連邦時代の、拳(こぶし)を振り翳(かざ)して威圧し、自身の劣等感を隠蔽したヨシフ・スターリンに象徴される指導者の心智を彷彿(ほうふつ)とさせますなぁ。

話を先に進めます。
「産経新聞」は「橋下市政」マンセーのスタンスでしょ、と東京では思い込まれていますが、豈図(あにはか)らんや、枝野幸男氏同様に弁護士として培(つちか)った“詭弁番長”な言動の矛盾に、従前から鋭く斬り込んでいます。取り分け、大阪本社版はね。意外でしょ。

「『素晴らしい決定』だろうか」と題して、
1月22日付「夕刊」に掲載されたコラム「浪速風」は白眉です。

“”(爪カッコ)は語句を強調したり、微妙なニュアンスを伝えるのに用いるが、多用はよくないとデスクに注意されたものだ。だから以下は悪文である。大阪市立桜宮高校の“体罰問題”で、市教委は橋下徹市長から“要請”を受けていた体育系2科の入試の“中止”を決めた。

 ▼本当はこうなる。これは体罰というより暴力事件である。橋下市長は「学校の(悪しき)伝統を断ち切る」と宣言した。入試を実施するかどうかを決めるのは市教委なので、中止を要請したが、実際は予算の執行停止をちらつかせての命令と言える。で、市教委は体育系の入試は中止して普通科での募集を決めた。

 ▼よけいにわかりにくくなってしまった。では体育系学科は廃止するのかというとそうではなく、実技試験のある入試科目や配点はそのまま、入学してからもスポーツに特色のある授業を行うそうだ。議論の先送りとしか思えない。ともあれ受験生は“大人の解決策”を学んだことだろう。
「『議論の先送り』としか思えない“大人の解決策”を受験生は学んだことだろう」なあんて表現、田中康夫としては痺(しび)れちゃいますねぇ。自身は“安全地帯”に身を置いて、感情の赴くままに食い散らかす“愉快犯”に対する、何とも秀逸な皮肉ではありませんか。事勿(ことなか)れな「誤送船団・忌捨クラブ」の心智とは対極に位置します。
「大山鳴動して鼠一匹」。
前触れの騒ぎばかりが大きくて、実際の結果の小さい事の喩えとしてローマの詩人クィントゥス・ホラティウスが言い出した警句なのだとか。まさしく「問題先送り」。

お約束の寄り道として更に付け加えればw、“ひげチョン”という符丁(ふちょう)なのだと僕は思い込んでいました。“爪かっこ”だったとは存じ上げませんでした(汗)。
若しや新聞業界では“ひげチョン”だと差別用語として人権団体から抗議が殺到するのを恐れていて、然(さ)しもの「サンケイ」も自主規制しているのかなw。
その「産経新聞」は夕刊を廃止した筈だろ、と首を傾げる方も居るでしょうから解説を加えると、大阪本社では引き続き発行しています。「産業経済新聞」として1942年に創刊し、69年に「サンケイ新聞」に改題、88年に「産経新聞」に改題した「サンケイ」は、大阪では部数的にも根強い人気を誇っているのです。それも、東京で言う所の「やっちゃ場」的な雰囲気の地域で働き・暮らす方々の間で。
やっちゃ、やっちゃの掛け声で競(せ)り売りをする青果市場が、符丁としての“やっちゃ場”。偏差値教育的「知識」ではなく、勘性とも呼ぶべき「地頭(じあたま)」を有する、「弱きを助け・強きを挫(くじ)く」人情味と正義感を持った層ですね。

で、1月24日付「夕刊」の「浪速風」は、「先生より生徒の方が大人だ」と題して、続報。

生徒たちが記者会見を申し入れたそうだ。大阪市立桜宮高校の運動部の元主将8人が「私たちは体罰を容認していないし、勝利至上主義でもない」と訴えた。運動部は活動停止で、体育系学科の募集中止が決まった。橋下徹市長は教員総入れ替えを求めている。高校生活のすべてが否定される思いなのだろう。

 ▼「友達を失い、部活を失い、支えてくれる先生まで失ってしまう。本当につらい」「市長は何も分かっていない」「生徒の話を聞いてくれなかった」…大人はどう聞く。それに比して、先生たちの声が聞こえてこないのが不思議だ。反省でも、弁明、反論にしても、言うべきことはあるだろうに。

 ▼そうかと思えば、埼玉県などでは退職金を引き下げる条例改正の前に“駆け込み退職”する教員が相次いでいるという。3月には卒業式、終業式があり、新年度への引き継ぎなど多忙なはずだが。そんな先生を生徒たちはどう見るのか。「仰げば尊し 我が師の恩」が空しい。

公務員という公職でしょ。どうして、遺族が告発した件(くだん)の顧問もとい教師は「顔」を出さないの? 
彼が如何なる人物か、誤送船団・忌捨クラブは一向に報じません。どうして、“夜討ち朝駆け”を敢行しないの? 
他方で、アルジェリアの犠牲者の名前を公表するのは報道機関の責務、と編集幹部は信じて疑わず、顔写真を拝借したい、と悲嘆に暮れる家族の下へ「土足」で新人記者が入り込んで来るのにね。御都合主義です。
一体、何を恐れているのでしょう? そんなに件の顧問もとい教師には、触れてはいけない「禁忌=タブー」が存在するのでしょうか? 名前は兎も角、その素性は報ずるべきでしょうに。

更に申し上げれば、その人物を引っ張り出して、一緒に会見するのが、市政の最高責任者の責務というか、そもそも、彼にこそ相応しいパフォーマンスでしょ。
と僕は期待していたのですが、報じられてきたのは逆に、
「橋下市長、ヤンキー先生を挑発 『組織動かしたことない政務官が』」1月22日11:57アップ
という展開でした。

「組織を動かしたことがない霞が関の政務官が口を挟んだらダメ。大阪の教育現場は僕が預かっている」

どんだけ上から目線www。
二百歩譲って、「教育現場を預かっている」なら、常日頃から効果的に活用するのが大好きなメディアという白州=おしらすに何故、体罰の当事者を引き連れて来ないの? 誤送船団・忌捨クラブ同様、御都合主義です。

サンケイは良い意味で飛ばし続けていて、前日の1月21日13:20アップ記事では、
「市長発言に苦しむ人いる」生徒直訴に橋下氏は・・・」の見出しに続いて、「市長が熱弁1時間15分、『丸もうけ』釈明」と小見出しを振って、以下の“詭弁番長”振りを活写しています。
 2箇所、引用してみます。

物議を醸した自身の「(受験生は)生きているだけで丸もうけ」という発言については「生きていれば回り道をしても、自分のやりたいことに向けて進める。大きな人生で回り道をすることもあるという意味だ」と釈明。

「先生と生徒が深い絆で結ばれている状態だからこそ、先生は間違ってはいけない。先生が手をあげた後、優しい言葉をかけると『愛のムチ』と思われるが、絶対に間違いだ」と述べた。

いやぁ、民主党も顔負けな「ブーメラン」発言を繰り広げています。「手をあげた後、優しい言葉をかける」手法は、橋下徹さまの「十八番」なのですからねw。

「義家弘介文部科学政務官が市や市教委による調査のあり方を批判したことについて、『外部監査チームが動き、市教委とは違った所感が出てきた』」と自画自賛した上で、「『組織を動かしたことがない霞が関の政務官が口を挟んだらダメ。大阪の教育現場は僕が預かっている』と反論した」。

これも、「長野の教育現場は僕が預かってい」た田中康夫としては、片腹痛い限りです。
「予算を取り上げるぞ」と恫喝していますが、大阪市教育委員会の人事権を全面的に有しているのは、誰あろう、当の彼自身なのです。にも拘らず、結果として、それを市長就任後の丸1年間に亘って行使してこなかったからこそ、今回の問題が生起したのです。その厳然たる「蓋然性(がいぜんせい)」に対する忸怩たる思いを些かも抱いていない、と思われる点こそ、彼の性(さが)であり、その彼を首長に戴く大阪市民の悲喜劇です。
 冒頭で、「お前の努力ミスだろ。努力不足ならぬ努力怠慢」って話なんですね。
 と喝破した理由を、具体的に述べていきましょう!

 教育委員会とは、以下の通りです。
いやぁ、延々と解説していますが、ニャンとも判りにくいでしょ。

「概要」の最後に記された
「本来の『教育委員会』とはこの行政委員会であるが、実際の業務の処理のために、教育委員会事務局があり、これを『教育委員会』と呼ぶこともある(広義の教育委員会)」
の部分に加えて、「委員」に関する記述も御一読下さい。

委員の定数は標準では5人とされているが、各地方公共団体によって3人や6人の場合もある。委員は、議会の承認により首長によって任命される。
委員の互選により教育委員会代表者であり教育委員会会議主宰者である教育委員長が選出される。一方で、教育公務員であり教育委員会事務執行責任者である教育長が、教育委員会から1人任命される。教育委員長と教育長は、兼任することができない。

 が、こうして再録した当の本人たる僕も首を傾げる、正直申し上げてウィキペディアにしては珍しい「悪文」です(苦笑)。う~む、ウィキペディアも常に平易とは限らないのですね。
これはイカンと探し求めていたら、全国都道府県教育委員会連合会のHPに突き当たりました。
少しペダンティック=pedantic=衒学(げんがく)的な、教育委員会は崇高だぞ~ぉという臭みが鼻につきますが、ウィキよりは簡明で的確なので引用します。

教育委員会は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の定めにより、教育に関する事務を処理するため、都道府県、市町村等に設置される合議制の執行機関です。   
この教育委員会制度は、一般人(レイマン)である非常勤の委員で構成される教育委員会の委員の合議により、大所高所から基本方針を決定し、それを教育行政の専門家である教育長が事務局を指揮監督して執行するという「レイマン・コントロール」のもとに運営されています。   
    
    教育委員会は、5人の委員から構成されています。(条例を設けて、都道府県は6人とすることもできます。)
    委員は、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命します。委員の任期は4年で、再任されることもできます。
    委員長は、委員の中から互選で選ばれ、教育委員会を代表し、教育委員会の会議を主宰します。委員長の任期は1年ですが、再任されることもできます。
    教育委員会の権限に属する事務を処理するため、教育委員会に教育長と事務局が置かれています。
    教育長は、委員長以外の委員の中から教育委員会が任命します。教育長は、教育委員会の指揮監督の下、すべての事務をつかさどります。
    事務局は、教育長の統括のもと、教育委員会の権限に属する事務を処理します。事務局の組織は、それぞれの教育委員会の規則で定められています。  

 解説に関しても「寄り道」をしている場合かよ、と茶々を入れられそうですが、何処ぞの首長と同じく、厚顔無恥wにも続行します。

教育委員会を構成する教育委員は、当該自治体の首長、即ち大阪市教育委員会の場合は市長が委員候補を人選し、市議会に人事案件として提出し、議会の同意を得て任命します。これが「同意人事」です。
議会が首長と対立している構図の場合は、国会=参議院に於ける日銀総裁人事と同じく、「政局」として扱われて、議会が同意せずに人事案が否決される場合も有ります。
が、大阪市の場合は、大阪維新の会と公明党の市長与党が過半数を占めていますから、あり得ない展開です。大阪を「グレートリセット」する上で極めて重要な、人事に掛ける市長の「思い」は100%実現するのです。
教育委員に任命された中の1人が、委員の互選で教育委員長を務めます。が、僕の経験上からも、ほぼ例外なく、首長は人選する際に、この人物は教育委員長への就任含み、といった構想を立てた上で人選するものです。

委員長も含め、教育委員5名の中の4名は非常勤です。一般的には「有識者」と称する、例えば大学教授であったり、医師会長の経験者であったり、が選任されます。
念の為に再確認しておけば、委員の任期は4年で、再任も認められています。即ち、1年に1人は任期が切れる計算です。就任から1年が過ぎた現在の大阪市長も、少なくとも1回は教育委員の人事案件を提出している訳です。
「改革」はスピードが勝負、と考えているであろう彼と、この点では僕も同じ認識でしたから、(無論、「改革」の中味は大分異なりましたがw)以下の荒療治も行いました。
 僕が知事に就任する前に教育委員に選任され、教育委員長を務めていた人物に途中で交代して頂いた記憶が甦ります。
その人物は、教育委員としての任期を未だ残していましたから、委員自体を任期途中で解任する訳にはいきませんでしたが、教育改革に関して僕とは意見が異なり、小学校30人学級の導入にも消極的でしたので、荒治療を実施すべく、任期を迎えた別の委員の後釜候補に据えた人物が教育委員長に選ばれるように、他の委員の同意を取り付け、実現しました。
更には、常勤職の教育長に関しても、荒治療を行いました。
5人の教育委員の中の1人は教育長を務めます。教育長とは、教育委員会事務執行責任者で、60歳の定年が適用されない教育公務員です。

大阪市を始めとする政令指定都市の教育委員会は、都道府県教育委員会の「下部組織」として機能している市区町村の教育委員会と異なり、都道府県教育委員会と同格です。その認識を共有した上で、全国都道府県教育委員会連合会のHP
に掲載されている「都道府県教育委員会の機構図」を参照して下さい。
常勤職の教育長に関して、「委員の中から任命 教育委員会の方針、決定の下に具体的事務を執行」と記されています。その左側に、教育委員会が教育長を「任命、指導監督」とあり、教育長は、複数名の教育次長の下に各部署が構成される教育委員会事務局を統括するのです。
そうして、教育長は教員出身である必要はないのです。

知事就任当初は、教員出身者でした。が、古いOSの持ち主でしたので、行政職の県職員の中から抜擢し、教育長に据えました。
彼の名誉の為に申し添えれば、僕に対するイエスマンだった訳ではなく、障害児教育や学校給食に関する哲学が、僕と共有する部分が多かっただけの話です。
同時に、各課の課長にも行政職の若手を登用しました。こうした刺激を得る中で、事務局で働く教育職=教員出身者の意識も如実に変化していったのです。
全国で最初に小学校30人学級を全学年で実現出来たのも、虐め問題に関して専門的に担当する課を新設出来たのも、こうした面々が一緒に動いてくれたからです。
唯一、切歯扼腕したのは、例えば全面的に地域食材のみを用いた給食の日を全県下の小中学校で一斉実施しようとしても、難色を示す市町村長や市町村教育委員会が存在すると、理解して貰う為に事務局職員が労力を費やさねばならなかった点です。
政令指定都市の教育委員会は、道府県の教育委員会から制約を受けないのです。そうして、教育委員会の人事権は、首長が有するのです。即ち大阪市長は、良くも悪くも思いの儘に「教育改革」を実行可能なのです。

首長就任1週間後に「体罰騒動」に遭遇したなら、愚痴の一つも言いたくなるでしょう。が、それらの権限を人事・予算・施策の何れに於いても有しているにも拘らず、教育委員会は閉鎖的だ、と文句を言っているのでは、単なる街のオバサンと一緒です。
況(ま)してや、その前に4年間も、大阪府知事を経験しているのですから、首長が教育委員会の人事・予算を差配し、実現すべき施策に関して教育長と議論し、二人三脚で実行可能なのだと会得している筈です。

その意味でも1月24日10:34にアップされた「橋下市長と体罰教諭に共通点・・・『劇薬に頼って結果を出そうとしている』」と題する「産経新聞」の「体罰を考える」特集5回目も一読に値します。

最後にもう一度、諫言(かんげん)すれば、「お前の努力ミスだろ。努力不足ならぬ努力怠慢」を学校に教育委員会に保護者に在校生に受験生に押し付けるなよ、という“愛のムチ”ですね(爆)。
それにしても、「産経ニュースwest」は侮れません、そのラディカルさに於いて目を離せません。
にゃお、「橋下市長、島倉千代子さんの曲を『変な音楽』とかみつく 庁内放送使用中止 ごみ収集車のメロディでも活用」と題する又しても「産経新聞」1月24日11:22アップの記事にも言及する予定でしたが、う~む、余りに分量が多くなってしまいましたので、日付変更線も超えてしまった今日は、ひとまず、ここでお開きね(苦笑)。

(2013/1/24)

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