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井上敏樹×白倉伸一郎 緊急対談
映画〈仮面ライダー1号〉公開記念
変身し続ける男たち・後編
(宇野常寛の対話と講義録・毎週金曜配信)
映画〈仮面ライダー1号〉公開記念
変身し続ける男たち・後編
(宇野常寛の対話と講義録・毎週金曜配信)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.3.25 vol.549
今朝のメルマガでは、3月26日から公開になる新作映画『仮面ライダー1号』の脚本を手掛けた井上敏樹さんと、プロデューサーの白倉伸一郎さんの対談の後編をお届けします。お二人が手掛けた平成ライダーシリーズ製作時の裏話や、特撮ヒーローものの理想と本質について、存分に語っていただきました。
毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
▼ニコ生放送時の動画はこちらから!
放送日:2016年2月28日
◎構成:有田シュン
◎構成:有田シュン
前編はこちらから。
■もう一つの見どころ・新旧ショッカー対決
宇野 白倉さんはプロデューサーとして、お話以外だとここがポイントだとか、ここで苦労したとかありますか?
白倉 真面目な話、完成してくると苦労って飛んじゃうんですよね。何年か経って見返すと「あー、あの時はなあ……」ってなっちゃうんだけど(笑)。ベタな話だけど、一番苦労したのはスケジュール関係です。
井上 俺のところに依頼来た時も結構ギリギリだったよね。すごい切羽詰ったスケジュールで、彼は映画を作るに当って色々調整してたけど、こっちは全然知らなかったんだよ。突然電話かかってきてプロットを出すんだけど、いつまでに仕上げろっていう締め切りがないのよ。締め切りがないのって一番怖いんだよね(笑)。
宇野 プロットから脚本にはスムーズに行けた感じですか?
井上 今回脚本を書くのに結構体力を使った。一番苦労したのは、全体の構造かな。当然ゴーストも出るわけじゃない? 新しいライダーとどういうふうに接点を持つかとか、ヒロインとの関係とかのバランス。そして構造、全体の雰囲気を整えるのが大変だった。
白倉 最初の頃、プロットになる前に冒頭のシーンとか地獄大使のこととか、思いついたことをご相談させていただきました。
井上 地獄大使には思い入れあるんだよ。俺の中では本郷猛って言えば地獄大使なわけよ。本郷猛が出るんだったら地獄大使も出そうと(笑)。何十年ぶりに出会って、ただの敵じゃつまらないじゃない? 両者の触れ合いみたいなものも含めて、最後にうまく集約するような構造になっていて、そのいいポイントに地獄大使がいるみたいなね。(地獄大使は)いい味付けになってるよね。
白倉 味付けというか、ひとつの大きい幹になってると思います。地獄大使を演じる大杉漣さんは、『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』にも地獄大使役で出られたことがあって、(ディケイドとは)全然つながりはないんだけど、今回はすごく大事な役だからお願いすることにしました。大森プロデューサーが「地獄大使役なんですけども」って電話したら、まだ内容とか台本とかそういうの説明する前に「出る出る、出る出る」って(笑)。
井上 本人も楽しんだんだろうな。
白倉 大杉さん本人からは、「こういう役柄は願っても得られない役」「他では絶対できない役だから絶対やりたかったし、すごく楽しい」と言ってもらえた。楽しいって言いながら、毎日朝から晩まで拘束されるんだけども(笑)。藤岡さんとそう大きくは年齢は変わらないけど、現場では(藤岡のことを)「先輩」って呼んでます。初共演だったみたいです。大杉さんとしては、藤岡さんと共演できるというのも大きなモチベーションだったようです。
井上 悩んだところと言えば、ショッカーで結構悩んだかな。1号の時、ショッカーの目的って世界征服じゃん。でも、今「世界征服」ってなんだって話じゃない。
宇野 そうですね。そこに意味があるのと。
井上 だから今回、ショッカーを新勢力と旧勢力に分けたんだよ。そこも見所だな。
白倉 そうですね。『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』で、なんとなくライダー側の世代間対立みたいなものは描かれているんだけど、今回はショッカー側でそういうのが描かれるというのが新しい趣向。新ショッカーの言うことも、もっともなんだよね。「これからは経済だ!」って(笑)。皆、拍手喝采して新ショッカー側に付くっていうね。
井上 そこで地獄大使が出てくるわけよ。「そんなこと言っちゃいけないよ、君たち」って。
白倉 旧ショッカーって言うと語弊があるけど、にわかに世界征服っていう錆付いた言葉を振りかざしてるのが可愛く見えてくる。いつまでも少年の夢を追い続けてそのまま大人になったような(笑)。
井上 そうそう。しかも、世界征服って地球を征服するということだから環境を大事にしてるんだよな。穢れた地球は嫌なわけじゃない? だから地獄大使たちは環境を守る派なのよ。綺麗な地球が欲しいわけ。
白倉 それ以上言うとネタバレだけども(笑)、今回のショッカーさんたちは、戦闘員に至るまで大変に魅力的です。
井上 戦闘員同士の喧嘩もあるのよ。旧ショッカーと新ショッカーの罵り合いもあるんだけど、言葉が「イーッ!」「キーッ!」で何を言ってるかわかんないの。
白倉 ここは見所ですよね。ただ元々ショッカーという一枚岩の組織の中にいた知り合いがふたつの派閥に分かれたという設定だから罵り合って殴り合いになるんだけど、その一方で「殴ってごめん!」みたい気持ちもあってすんごい面白い。「お前こっちに来いよー」「何言ってるんだ! ショッカーに対する忠誠はどうしたんだ?」ってことを「イーッ!」「イーッ!」って言ってる(笑)。
井上 飲み屋の親友同士の喧嘩なんだよね。俺、このときがシナリオ書いてて一番楽かった。
白倉 いいですね。ものすごい感情移入しちゃう。逆に言えば、楽しいシーンってあそこぐらいまでかな。最初は緩いんだけど、段々ハードになっていきます。徐々に真剣味を増してくという流れは素晴らしい。近年の作品の中では、すごく映画らしい映画になってると思います。
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