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【新連載】
吉田尚記×宇野常寛「新しい地図の見つけ方」
第1回 マニフェスト
【毎月第1金曜配信】
吉田尚記×宇野常寛「新しい地図の見つけ方」
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☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.2.5 vol.512
あなたは今、この社会に息苦しさを、先行きの見えない不安を、感じてはいないだろうか。怒涛のように情報は流れてくるが、自分が次にどんな一歩を踏み出したらよいかはわからないーーそんな時に、具体的な道筋を示す“新しい地図”を広げられないか。息苦しさと不安を越えて、新しい地平を見出すことはできないか。友人として、論客として、対話を積み重ねてきた二人が語り合います。(初出:「ダ・ヴィンチ」2016年1月号(KADOKAWA/メディアファクトリー))
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▼対談者プロフィール
吉田尚記(よしだ・ひさのり)
1975年12月12日東京・銀座生まれ。ニッポン放送アナウンサー。2012年、『ミュ〜コミ+プラス』(毎週月〜木曜24時00分〜24時53分)のパーソナリティとして、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。「マンガ大賞」発起人。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計12万部(電子書籍を含む)を超えるベストセラーに。マンガ、アニメ、アイドル、落語やSNSに関してのオーソリティとして各方面で幅広く活動し、年間100本近くのアニメイベントの司会を担当している。自身がアイコンとなったカルチャー情報サイト「yoppy」が春より本格スタートを控えており、現在準備サイトが展開中(http://www.yoppy.tokyo/)。
◎取材・文:臺代裕夢
吉田 先日、ある高校で講演させていただく機会があったんです。興味があって生徒さんに聞いてみたら、そこの高校生は現段階でスマホ所持率100%でした。ニコニコ動画、Twitter、LINEの利用率も、Amazonで買い物をしたことがある率もほぼ100%。この数字を見て、今の若い人たちはすごく忙しいと解釈すればいいのか、反対にすごく暇だと解釈すればいいのかがよくわからないんですよね。というのも、僕はインターネットって巨大なインデックス、目次だと思うんですよ。例えばまとめサイトを見ている人は多いですけど、あれって物事の表面的な部分をさらってるだけじゃないですか。目次だけをぱらぱら見ていたって退屈でしょうし、ちゃんとその先に行っているのかなっていう。
宇野 僕はむしろ、インターネットがインデックスとして機能していないことのほうが問題なんじゃないかと思ってる。最近はそこかしこで「ネットで話題」とか「ネットで叩かれてる」という言い方をするけど、この「ネット」が指しているものって、TwitterやFacebook、ニュースサイト、まとめサイトなんかで回っている「ソーシャルな世間」のことなんだよね。確かに90年代のインターネットというのは、「これまでのマスメディアにはなかった自由な文化空間が生まれる」という期待のもとに普及していった。現実社会には身内で固まってだらだら酒を飲みながら仕事の愚痴をこぼすような人間関係しかないけど、ネットでは全然知らない人とも出会えるし、ムラの空気の読み合いじゃなくて、ちゃんと中身のあるやりとりができる場所だよねって。だけどソーシャルメディアの台頭によって、いつの間にかネットと現実社会が強く結びつき、結局はリアルの人間関係に縛られて生産的なことが全然できなくなった。つまり、現実社会の閉鎖的な全体主義みたいなものがネット上にも形成されてしまったんだよ。その結果起こっているのが、週に一回悪目立ちした人間や失敗した人間をネット上で袋だたきにして「スッキリ!!」するという、いじめエンターテインメントの横行。個人が自由にアクセスできる“地球の本棚”としてインターネットが正しく機能していればこんなことにはならなかったと思うんだよね。「これが好き」とか「これに関心がある」とか、まさによっぴー(吉田さん)の言うインデックス機能で人と繋がって、思わぬシナジー(相乗作用)が生まれていくっていう、本来期待されていた可能性を回復していかないと。
吉田 インターネット、とくにソーシャルメディアって本来は「無くても生きていける」ものじゃないですか。ネット上のいじめなんて、エゴサーチしなきゃいい話なんですから。だけど今の人たちは「ネットがすべて」みたいになっている。僕が2年前ぐらいに衝撃を受けたのは、中学生に将来なにになりたいかを聞いたとき「『踊ってみたの人』になりたい」って(笑)。それはそれで悪くないのかもしれないけど、ネットだけで完結していること、そこがゴールみたいに妄信していることの危険性にも気づいたほうがいいと思うんです。ひと言で言うなら「ネットを見ていて気分がよくなったことはありますか?」ということ。ネットで評判の映画を見に行ったり、紹介されていたお店でご飯を食べたりして気持ちよくなることはあっても、ネットを見ているだけで気持ちよくなることって絶対にないはずなので。
宇野 そういう意味では僕の周りには今の情報社会を背景に活動している起業家や研究者が多いんだけど、パソコンの中だけで仕事を完結させている人は一人もいないよね。最新のテクノロジーや社会の情報を使って、じゃあ働き方を変えてみようとか、交通を変えてみようとか。情報社会の第二ステージとして、モニターの外側を変えていく段階が来ているんだと思う。
吉田 それでひらめきました! よく宇野さんは、今の社会は「●●でない」という切り口でしかモラルを語れなくなっているって言うじゃないですか。ネットいじめの話もその典型ですよね。
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