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【無料公開】『ものづくり2.0』イベントレポート――小笠原治×落合陽一×加賀谷友典×根津孝太×宇野常寛×堀潤の語るメイカーズの現在(2014-5-16配信) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 号外 ☆

2015/12/19 17:00 投稿

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【無料公開】
『ものづくり2.0』イベントレポート
小笠原治×落合陽一×加賀谷友典
×根津孝太×宇野常寛×堀潤
の語るメイカーズの現在
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.12.19 号外

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ネットでもリアル書店でも話題沸騰中の落合陽一さんの著書『魔法の世紀』。本の内容をさらにフォローアップすべく、PLANETSメルマガでは落合さんがこれまでに登場した記事を無料公開していきます!
本日お届けするのは、落合さんも登壇し2014年5月に行われたイベント『ものづくり2.0』のレポートです。本メルマガで『カーデザインの20世紀』を連載中のデザイナー・根津孝太さんや、のちに『メイカーズ進化論』を上梓し日本版IoTムーブメントのエヴァンジェリストとして活躍することになる小笠原治さん、そして「necomimi」開発者の加賀谷友典さんをお招きして行われたこのイベント。1年半前はまだ「知る人ぞ知る」ものだったメイカーズやIoT草創期の熱気を伝えるレポートです。(2014-5-16配信)


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【発売中!】落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)
☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
取り扱い書店リストはこちらから。http://wakusei2nd.com/series/2707#list

▼プロフィール
落合陽一 (おちあい・よういち)
1987年生,巷では現代の魔法使いと呼ばれている。筑波大でメディア芸術を学んだ後,東京大学を短縮修了(飛び級)して博士号を取得。2015年5月より筑波大学助教,落合陽一研究室主宰.経産省より未踏スーパークリエータ,総務省より異能vationに選ばれた。研究論文はSIGGRAPHなどのCS分野の最難関会議・論文誌に採録された。作品はSIGGRAPH Art Galleryを始めとして様々な場所で展示され,Leonardo誌の表紙を飾った。応用物理,計算機科学,アートコンテクストを融合させた作品制作・研究に従事している。BBC,CNN,TEDxTokyoなどメディア出演多数,国内外の受賞歴多数.最近では執筆,コメンテーターなどバラエティやラジオ番組などにも出演し活動の幅を広げている。


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▲左から堀潤さん、小笠原治さん、落合陽一さん、根津孝太さん、加賀谷友典さん、宇野常寛

本イベントは5月11日(日)の午後、東京・渋谷にある「loftwork Lab」で開催されました。元WIRED編集長のクリス・アンダーソン著『MAKERS』により広く知られるようになった”メイカーズムーブメント“。2013年には日本でも3Dプリンターがメディアに取り上げられることにより大ブームとなりました。同ムーブメントは「モノのロングテール」とも呼ばれ、誰もがアイデア一つで製造業になり、つくったものを売れる時代になりつつあります。しかし、”ものづくり“といえば本来、トヨタ・ソニーなど製造業の伝統を持つ日本の得意とするところではなかったか? 日本ならばもっと先進的な日本版メイカーズムーブメント「ものづくり2.0」を起こせるのではないか? こうした論点を基に、メイカーズの最先端を走るパネリストを迎え、延長戦を含め2時間半にわたって議論された内容を圧縮してお伝えします。

◎文:久保田大海


「インターネット+ものづくり」は3回目の大きな波

元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤さんの司会のもと、まず登壇者それぞれから5分ほどの自己紹介を兼ねたプレゼンテーションがありました。3Dプリンティングセンター「IsaacStudio」を運営する株式会社nomad代表の小笠原治さん、紹介動画がYouTubeで290万再生を記録し話題の"空中浮遊"装置を開発したメディアアーティストの落合陽一さん、トヨタ自動車(株)を経てznug design(ツナグデザイン)を設立しまったく新しい自動車や工業製品を生み出し続けるデザイナー/クリエイティブコミュニケーター/znug design代表の根津孝太さん、脳波で動くネコミミ”necomimi”の開発者でフリープランナーの加賀谷友典さん。レポートでは長くなるため割愛しますが、どのプレゼンも刺激的でした。ぜひ記事末にあるリンクからアーカイブ動画をご覧ください。

まず、宇野常寛がなぜこの4人を招いて“日本版メイカーズムーブメント“について議論しようと思ったのか。その理由を次のように語りました。

「インターネットが日本社会にインパクトを持った出来事は、おそらく過去に2回あったと思う。1つは『インターネット+サブカルチャー』で、盛り上がったことは盛り上がったけれども、日本独自の文脈に依存しすぎていたため、なかなかその外に出ることができなかった。もう1つが『インターネット+ジャーナリズム』。特に3・11の東日本大震災以降、若い人たちを中心としたジャーナリズムの力がネットに集い『政治を変えるんだ』という動きがあったが、SNSがTwitter芸人やそのフォロワーたちのいじめワイドショーに矮小化され敗北してしまった。おそらく、『インターネット+ものづくり』はこれから起こる3回目の大きな波なのだと思う」。

「しかし、日本人は戦後の“ものづくり”で得た成功体験に引きづられているため、つい大きなメーカーとその下請けの町工場が頑張るというストーリーを思い浮かべてしまう。そうではなくて、ここにいる4人のように一見するだけでは”遊び”のように見えるかもしれないけど、僕らの社会観や人間観をガラッと変えてしまうような提案が込められた、『ものづくり2.0』こそが今起きていることであり、それに僕はいちばんワクワクするんです」。

議論がはじまります。堀さんの「”ものづくり”の楽しさを広げるためにはどうしたらいいのか」という質問に、普段から感じている課題を持って答えたのはnomadの小笠原さんでした。

「3Dプリンターで誰でも簡単にフィギュアやスマホケースがつくれるようになったからといって、思ったほどまだ”誰でも簡単に”というところで一般の人が集まってはいないと思います。私がお手伝いしているDMM.make(ディーエムエム・ドットメイク)も北野武さんのテレビコマーシャルをしていますが、それでもまだまだ一般に広がるところまではいっていません。たとえばアメリカならばDIY文化がありますが、日本だと犬小屋一つもつくるよりホームセンターで買いますよね。まずは”つくることの楽しさ”を伝えないとダメで、北九州で私がはじめた施設では小中学生がものをつくれる体験スペースをつくっています。どちらかといえば10年ぐらいの単位でやっている感じです」。

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▲小笠原治さん


”ものづくり”にはリスペクトする文化が必要

次の堀さんからの問い「これからメイカーズムーブメントはどのように展開し、全体性を持って広がっていくのでしょうか」に答えたのは落合さんでした。

「ひとえにカルチャーが必要だと思うんですね。要するに、皆がものをつくるようになったら、誰がものづくりの方針を決めるのかが極めて重要なことになります。たとえば、壁に絵を書く人が少なければ落書きだけど、人が集まればグラフィティ (graffiti)となり流行りますよね。『皆でどこかを向く』というのはいわゆる”個性”とは逆向きに見られがちですが、文化ができるということは『皆でどこかを向く』ことであり、文化をつくるということは先人のしたことをリスペクトできる環境をつくることだと思います」。

「日本でさまざまなムーブメントが一時期で盛り下がり終わってしまう理由は2つあると思っていて、1つは独特(ユニーク)なことをした人に『それは何に使うのか』『何の役に立つのか』と聞く風習があることです。もう1つはパクったときに何からインスパイアされてつくったのかパクリ元を表記しないところです。たとえばGoogleの検索システムはもともと論文の重み付けを引用の本数で判断することからアイデアを得ていますよね。僕は日本人がこのインターネット社会において、引用元を表記する仕組みをどう獲得するかということ自体に興味があります。そうした枠組みがないと、せっかく30万円の3Dプリンターを買ってiPhoneケースをつくったのに面白くないものができて、だったら980円で製品になったものを買えばよかった、ということになってしまいます」。

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▲落合陽一さん

ムーブメントの広がりにはカルチャーが必要と言う落合さんに、異なるアプローチながら共通点を見出したのはフリープランナーの加賀谷さんでした。

「脳波で動くnecomimi(ネコミミ)をそもそも何でつくったかというと、僕はテクノロジーの2つの面を見ていました。1つはひとことで言えば“ダイナミズム”に着眼することです。脳波を測定しようとすると2005年時点ではセンサーに数百万円のお金がかかりましたが、僕が2010年にシリコンバレーに行ったときには数十ドル、つまり数千円のレベルまでセンサーの価格が下がりました。そのコストダウンの角度があまりに強かったので、『これはいける』と思ったんですね。つまり、これまでに存在しなかったプロダクトをつくるにはテクノロジーにおける”ダイナミズム”の流れを組み込まなければならないと考えています。そしてもう1つは”トレンド”です。テクノロジーには急速にまったく違うレベルに進化していく分野というものがあります。今だとおそらく分子生物学だろうと思います。この”ダイナミズム”と”トレンド”の2面を見ながら、タイミング良くプロダクトやサービスにすれば、追い風を受けた状態で表現や発信ができるはずです。先ほど落合さんが言っていたカルチャーというのも、まさにそれを使うんです」。

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▲加賀谷友典さん


『AIBO』に見る日本人の感情移入できる”ものづくり”

議論の前半は各パネリストのこれまでの取り組みを振り返りながら、現在起こりつつあるメイカーズムーブメントの現況を見渡すような内容でしたが、後半では徐々に未来の話へと移ります。堀さんから「メイカーズの最先端にいる4人をお招きしていますので、これから投資家が投資したくなる分野について伺います」という質問に、独特の熱い言葉で語ったのは元トヨタのデザイナーでznug designの根津さんでした。
「車をデザインすることが多いこともあり、”モビリティ(移動性・機動性など)”を軸にお話させていただきます。簡単に言えばインターネット化された社会においてモビリティにどういった意味があるかなんです。今日もわざわざこの場所に来てくれてイベントをご覧になっている方がいらっしゃいますが、やはりこの場にはモニタ越しとは違う空気があると思うんですね。だからこそモビリティに意味が出てくるわけです。僕はローラーブレードのインストラクターもやってますが、足の下に8個タイヤが付いた靴を履くだけで『オレすげー』って思えるじゃないですか。人間のつくりだした身体拡張の最もシンプルなカタチが”モビリティ”に関わるものづくりだと思うんですね。トヨタのi-unitでやりたかったのもそういうことです」。

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▲根津孝太さん

さらに参加者を巻き込みながら議論を深めます。参加者からの「初音ミクと結婚したい。結婚式場に初音ミクを出現させて、市役所でいっしょにサインできる、みたいな体験まで落とし込んだものを実現したい」という質問というより、願望と言えるかなりの変化球に答えたのも根津さんでした。

「今の質問で面白いなと思ったのは、初音ミクというヴァーチャルな存在とでも、やっぱり現実の世界にある市役所に行っていっしょにサインしたいんだなってところです。むかしソニーの『AIBO』(子犬型などのペットロボット)というのがありましたが、これは日本人の妄想力というか、どれだけ感情移入できるものをつくるかという日本人の能力がものすごく発揮されていました。何の役にも立たないロボットがいるだけで『こいつと意思が通じている気がするぞ』みたいに会話が成り立っている気がしてくる。日本のものづくりの良さはこういうところにあると思うんですね」。


コミュニティに必要なのは”緊張感”

参加者からの次の質問「3Dプリンターのようにものづくりの敷居が下がれば文化が生まれ、面白いものがどんどん出てくるのでしょうか?」という質問に答えたのは小笠原さんでした。

「もしかしたら他のパネリストの方々と意見が別かもしれませんが、僕は3Dプリンターまわりでしているいろいろな活動のなかで、ものづくりのハードルを下げるためのものはありません。僕の仕事は”今あるものづくりの高いハードルを超えたいと思っている人を増やす”ことだと思っているんですね。ものづくりのハードルが下がれば下がるほど分散して投資しないといけないから、ぶっちゃけた話、選球眼が必要になったり、投資効率がさがるわけですよ。本当にやりたい人がやれると思うところをつくるのが僕の役割です」。

さらに参加者からの真剣な質問が続きます。大阪でプラスチック町工場の2代目をされている方からの質問は「金型はつくれるけど電気回路は書けないので製品にできない。誰に声をかけていいかわからないときに、この『ものづくり2.0』のようなコミュニティが大阪にもあるといいのですがないのが現状。どうしたら新しいコミュニティは生まれるのか」でした。宇野さんが答えます。

「小笠原さんのawabar(アワバー)とか、今回のイベントをサポートしてくれているFabCafe(ファブカフェ)とか、コミュニティでつながるということについてはできつつあると思うんですね。でも、つながるだけだと、あんまり盛り上がらないんです。たとえばコミックマーケットがあるなど、年に1回、2回と機会をつくりワーッと集まると盛り上がるんですよ。バーチャルとリアル、日常と非日常が組み合わさったときに初めて爆発力が生まれる強い文化を持ったコミュニティに育っていくと思うんです。リアルなコミュニティを持ったプレイヤーが出てきているからこそ、僕はメディアをやりたいと思います。その面白さをインパクトを持って伝えつつも、そこに込められた意義や思想を解説してコミュニティに緊張感を与えられるメディアをやりたいですね」。

あまりの盛り上がりに2時間のところ30分延長された議論も、すべては語り尽くせぬままタイムアップ。宇野さんの「2回目もやりましょう」という掛け声に拍手が送られる熱気の中で終了しました。日本版メイカーズムーブメントともいえる「ものづくり2.0」の可能性と熱気を感じることができた本イベントには、ぜひ続編を期待したいと思います。

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(了)

※ 本カンファレンスの全編は、PLANETSチャンネルのアーカイブ動画でご覧になることができます。
【動画前編】
【動画中編】
【動画後編】
(後編のページに行くとMP3音源をダウンロードすることができます。移動中に議論の内容を聞きたい方はぜひご利用ください!)


【いよいよ明日12/20 (日) 16:00〜開催!】「PLANETS festival 2015 世界を面白くするための大忘年会」@池袋ニコニコ本社

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今年もこの季節がやってきました!
年末恒例、特別イベントのご案内です。

今回は4部構成。J-WAVE「THE HANGOUT」の大忘年会に始まり、皆様との交流タイムと豪華ゲストによるトークショーを織り交ぜて開催します。なんと、キングコング西野亮廣さんがPLANETSイベント初出演! そのほか、チームラボ猪子寿之さん、コルク佐渡島庸平さんに加え、『魔法の世紀』が大きく話題となっている落合陽一さん、さらに、ロンドンから國分功一郎先生も登場します。

入退場自由。毎回、売り切れ必至の大人気イベントです。
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『PLANETS vol.9』は2020年の東京五輪計画と近未来の日本像について、気鋭の論客たちからなるプロジェクトチームを結成し、4つの視点から徹底的に考える一大提言特集です。リアリスティックでありながらワクワクする日本再生のシナリオを描き出します。

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ご感想をぜひ、ツイッターハッシュタグ #planets9 までお寄せください!
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【告知】編集部からのお知らせ
PLANETSからの耳寄りな情報を、どこよりも早くお届けします。


☆★今週のPLANETS★☆

▽ニコ生情報
12/20(日)16:00〜「PLANETS festival 2015 世界を面白くするための大忘年会」【イベント生中継】
☆今年も池袋で忘年会を開催します!ご来場いただくことが難しい方へ、生中継をぜひご利用ください。
チケットもまだまだ発売中→http://peatix.com/event/132422/

▽書籍・雑誌情報
落合陽一著『魔法の世紀』(PLANETS)発売中!
☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。

☆吉田尚記さんと宇野常寛の新連載「新しい地図の見つけ方」が始まります! いまの時代を生きる若い世代に、2人が「生き方」を本気で語り合います。第1回は「マニフェスト」と題して、問題を徹底的に洗い出しました。

☆連載「月刊カルチャー時評」では、石岡良治さんと映画『心が叫びたがってるんだ。』について語りました。オルフェンズの話も!

☆連載「テレビドラマが時代を映す」では、『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』を扱いました。あまちゃんを手がけた井上剛監督が本作で送るメッセージとは?

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