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本日のメルマガは、1/31-2/1にかけて行なわれた、niconico主催の新たなゲームフェス「闘会議2015」のレビュー・レポートをお届けします。
「ゲーム実況とゲーム大会の祭典」を謳い、メーカーではなくユーザー主導で作り上げてられていったゲームカルチャーをフィーチャーした同イベントは、現代日本のゲーム文化にいかなるインパクトをもたらすのか。
『現代ゲーム全史』連載中の中川大地率いる取材チームが、ゲーム史的な観点からその試みの本質と可能性を分析します。
「闘会議2015」公式サイトはこちらのリンクから。
◎文:籔和馬
◎監修:中川大地
※写真は断りのあるものを除き、niconicoの公式プレス向け写真を使用しています。
▼執筆者プロフィール
籔和馬(やぶ・かずま)
1986年滋賀県生まれ。地元で映画と音楽漬けのニート生活を送ったのち、一念発起し上京。映像の専門学校であるUTB映像アカデミーに入学し、映像制作の基礎知識を学ぶ。現在、派遣のアルバイトを主な収入源としつつ、放送作家の修行中。
中川大地(なかがわ・だいち)
1974年生。文筆家、編集者。PLANETS副編集長。アニメ・ゲーム関連のコンセプチュアルムックの制作を中心に、各種評論・ルポ・雑誌記事等を執筆。著書に『東京スカイツリー論』(光文社)。「ほぼ日刊惑星開発委員会」にて「中川大地の現代ゲーム全史」を連載中。
■曲がり角を迎えたTGSと「闘会議」の開催
「ソシャゲとスマホゲーとコンシューマーゲームは全く別物で、ユーザーも別の目的の為にやってると思うので、TGS(東京ゲームショウ)はおとなしく規模縮小するか、なんとか任天堂に参加して貰うかした方が良いと思った。ソシャゲとスマホゲーは別のゲームショーの方が良いんじゃないかな。 2014年9月23日 20:48 」
『ダンガンロンパ』シリーズの企画とシナリオを担当する、スパイク・チュンソフト小高和剛氏は、「東京ゲームショウ(TGS) 2014」を訪れた感想をTwitter上でこのようにつぶやいた。
TGSに観客として出向いたことのある私は、小高氏の言葉に、はげしく同意した。
諸事情で2014年には参加できなかったため、これは2013年時点での状況だが、大勢の人たちの間を縫うようにして歩くしかないくらい盛況のTGSで、唯一待ち時間なしで入れたのは、某ソーシャルゲーム/スマートフォンゲームメーカーのブースだけだった。
そこには嬉々として遊ぶ来場者の姿はほとんどなく、暇を持て余し気味のキャンギャルたちがプレゼントを配るのを横目に、コンシューマーゲーム試遊の整理券配布に間に合わなかったと思われる人々が、あぶれて仕方なくやってきているという雰囲気しか感じられなかった。
ゲーム市場全体を見渡せば、いまやスマホゲームこそが最も多くの人々がプレイするゲームになっているはずだが、ことゲームショーという空間ではまったく存在感がない。
わざわざTGSのような新作ゲームお披露目会に出向いてくるのは、どちらかというとソシャゲやスマホゲームを「あんなものはゲームではない」と蔑視するような、あまり一般的ではないコアゲーマー層ばかりということなのだろう。
そして、ゲームショーに来た以上は何かをプレイして帰らなければ元がとれないとばかりに亡霊のように彷徨う者たちが試遊台から試遊台へと移り、まるで工場での単純作業のようにゲームを「遊ばされている」。
そんな光景に、自分には見えてしまったのだ。
はたしてここに、本当に「ゲーム」というジャンルの現在があるのだろうか?
いまやインターネットやスマホの普及により、現代日本のゲーム文化は、従来のゲーム会社の手から離れたところで独自の進化を遂げた。コンシューマーゲームの最新作を遊ぶことこそがゲーム文化の王道という考えは、とっくに古臭いものになってきていると言わざるをえない。
一般的には、TGSは日本のゲームシーンの最先端を紹介する最大のイベントと言われているが、ゲームの遊び方が多様化している現在の状況に、企業主体の見本市では、対応できなくなっているのではないか。
このような状況に一石を投ずるべく手を挙げたのがドワンゴである。
2012年から幕張メッセで毎年開催されている、ドワンゴが主催するニコニコ動画のオフラインミーティングである参加型複合催事「ニコニコ超会議」。
その中で最もユーザーが賑わうブースの一つである「ゲームエリア」を、「ニコニコ超会議」から切り離し、老若男女問わず誰でも気軽に参加することができ、純粋にゲームの魅力を体験することができる「ユーザー」を主体としたイベントにしたいという理念のもと、「ゲーム実況」と「ゲーム大会」の祭典として単独でイベントとして成り立たせたのが、今回の「闘会議」である。
この「闘会議」は、2015年1月31日(土)と2月1日(日)の2日間にわたって「超会議」と同様に幕張メッセにて開催され、当日のイベントの模様はニコニコ生放送でも配信されていた。
▲「闘会議2015」会場全景
つまり、ゲームの大規模イベントといえば、これまではゲーム企業側からの製品のプレゼン空間というレパートリーしか存在しなかったところ、初めてユーザー側のボトムアップな「遊び方」にフィーチャーする空間が提供されたのである。
■現代の日本ゲームシーンを縮図化した「闘会議」の空間構成
最初に言及したいのは、この闘会議というイベント、会場の構成が実によくできている。まずは下の会場マップを見ていただきたい。
【会場マップ】(「闘会議 2015」来場時に配布されるガイドブックから)
幕張メッセの6~8ホールを利用した会場は端から端まですぐに行くことができ、実際に1周歩いてみての感想だが、移動で疲れるということはなかった。
むしろ、歩いていると常時どこかしらのブースのモニターを観ることができ、そのモニターでは絶えずイベント映像が流れているので、歩くという行為にさえ楽しみを持たせてくれている印象を受けた。
ブースの配置だが、会場の四隅に大きく陣取るのは、スマホゲームアプリの大手メーカーである、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、コロプラ、mixi、LINEのブースだ。
変な比較で恐縮だが、これはコミケに置き換えれば最も大手のサークルが配置される「壁際」にあたる。
この4社のブースが、巨大スクリーンやステージを備えた最も華々しいプレゼン空間になっており、ニコニコ有名人やスター級の実況者たちが次々と生放送番組を配信していた。そして現在にあっては最も多くのライトユーザーを抱える、ゲーム市場全体の中でのスマホゲーの立ち位置を正確に反映するかたちで、集客の最大ボリュームゾーンを形成していたのである。
▲四隅のボリュームゾーンを形成するスマホアプリメーカーのステージ
これら4ブースの合間を埋めるかたちで、闘会議のメインコンテンツである「ゲーム実況」「ゲーム大会」の2大ステージをはじめ、壁際ではアーケードやレトロゲーム、コスプレ、物販といったテーマ別のエリア群がそれぞれの小宇宙を展開しているという格好だ。
▲niconicoのメインステージにあたる「ゲーム実況ステージ」「ゲーム大会ステージ」
反対に、コンシューマーゲーム業界を長年引っ張ってきている大手ゲームメーカーである、バンダイナムコゲームス、ソニー・コンピュータ・エンターテインメント、スクウェア・エニックス、セガ、およびサイバーエージェントの5社が、会場中央部の「島」のコーナーを形成するかたちで、比較的こじんまりしたブースの列を並べていた。
そして、これら大手ゲームメーカーにコーナーを挟まれながらほぼ同等のブース規模で、『ドラクエX』や『スーパーマリオ64』『マインクラフト』等々の各タイトルごとの実況プレイを座って見られる「ゲーム実況ストリート」が軒を連ねる。
つまり、これまたコミケで言うなら、大手コンシューマー企業が、ユーザー実況と同列の島サークルと軒を並べながら、せいぜい中堅サークル並みの「お誕生日席」を与えられているというような扱いだ。
ここにも、プレイステーション4に「シェア」機能が搭載されたように、実況のネタになることで日本ゲームの斜陽傾向からなんとか生き残りの芽を探ろうとするコンシューマー業界の、リアリスティックな状況を垣間みることができる。
このように、現代の日本のゲームシーンのパワーバランスをフラットな空間上に縮図化しつつ、壁際中央部の「レトロゲーム」エリアなどでは過去からの歴史的な脈略を緻密な年表やレアな実機展示などで押さえ、11対11人で行う『FIFA 15』の実況プレイや声で操作するゲームに話題が集まった「リアルゲーム」エリアなどではゲームが現実空間に侵食してゆく未来的な光景を演出するなど、新旧の時間的な流れをも体験できるブース構成が特徴的であった。
▲黎明期からのゲーム史の年表が掲げられた「レトロゲームエリア」。来場者が附箋に「俺歴史」を記入して貼りつけできる。
▲ドットアートの自作コーナーがあるのも面白い試み。
▲実際のサッカーのポジションを一人ずつプレイヤーが担当して『FIFA15』を対戦プレイする「リアルゲームエリア」。
これはメーカーの商業要請に立脚した見本市とは異なるイベントだったからこそ、可能だった展開と言えるだろう。
■会場を圧する「任天道場」の君臨がもつ意義
そして、会場のどこからでも見える中央部に、まさに王者の風格を漂わせながら屹立する看板がひときわ目立つエリアがあった。
「任天道場」。その名の通り、日本ゲーム業界最大の老舗である任天堂の出展スペースである。
各エリアの中でも、特にパーテーション分けされた参加型の独立アトラクション的性格が強く、ちょうど超会議における「ニコニコ神社」に相当するような配置で、会場全体のランドマークにも見えるような象徴性さえ帯びていたと言える。
▲「任天道場」の看板
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