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本日の「ほぼ惑」は、平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ連載『男と×××』の第5回。先日放送されたTVドラマ『オリエント急行殺人事件』の三谷幸喜オリジナル脚本から、「女の執念に満ちたラブストーリー」を読み解きます。(本文中に、アガサ・クリスティの名作ミステリ『オリエント急行殺人事件』や、今回の三谷幸喜版のネタバレがありますので未見の方はご注意ください)
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男 と 女 4
井上敏樹
先日、二夜に渡って放送された三谷幸喜脚本の『オリエント急行殺人事件』を観た。アガサ・クリスティ原作の名探偵ポワロシリーズの傑作で、ハリウッドで映画化された事もあるから知っている人も多いだろう。
豪華列車の個室で殺人事件が発生する。容疑者は十二人の乗客たち。ポワロは乗客それぞれに尋問を重ね、その灰色の脳細胞を駆使して犯人にたどり着く。実は十二人全員が犯人だった、という当時としては画期的だったに違いないシチュエーショントリックである。
被害者の男は裁判では証拠不十分で無罪になったが誰もが知る極悪人で、男に恨みを持つ十二人が結託して殺人を犯したのだ。
もちろん三谷版でもこのストーリーの骨格はそのまま踏襲されているのだが、名探偵ポワロならぬ勝呂武尊(すぐろたける)役の野村萬斎を始めとする魅力ある俳優陣と三谷氏の工夫で大変見応えのあるものに仕上がっていた。
第一夜で三谷氏は事件発生から解決までを全て描き切っている。ここで『完』としてもいいぐらいだ。だが、三谷版『オリエント急行殺人事件』の本当の見せ場は第二夜にあり、こちらの方はほぼ三谷氏のオリジナルである。
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