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『Yu-No』『To Heart』『サクラ大戦』『キャプテン・ラヴ』——プラットフォームで分かたれた恋愛ゲームたちの対照発展 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.242 ☆

2015/01/16 10:40 投稿

コメント:1

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  • ほぼ日刊惑星開発委員会
  • 中川大地の現代ゲーム全史
  • 中川大地
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『Yu-No』『To Heart』
『サクラ大戦』『キャプテン・ラヴ』
――プラットフォームで分かたれた
恋愛ゲームたちの対照発展
(中川大地の現代ゲーム全史)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.2.19 vol.265

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本日のほぼ惑は、月イチ連載『中川大地の現代ゲーム全史』をお届けします。今回は、いわゆる「葉鍵系」から『サクラ大戦』『キャプテン・ラヴ』まで、「恋愛ゲーム」という特異なジャンルが花開いた90年代後半の文化状況を概観し、これらの作品群が後のサブカルチャーに与えた影響を考えます。

 
「中川大地の現代ゲーム全史」
第8章 世紀末ゲームのカンブリア爆発/「次世代」機競争とライトコンテンツ化の諸相
1990年代後半:〈仮想現実の時代〉盛期(6)
 
前回までの連載はこちらのリンクから。
 
 
■サイコサスペンス系から「泣きゲー」へ〜パソコン美少女ゲームにおけるAVGの異常進化
 
 前章で述べたように、1994年に登場した『ときめきメモリアル』『アンジェリーク』を機に、「恋愛シミュレーションゲーム」と呼ばれるカテゴリーのゲームが家庭用ゲーム機に登場していた。これはセクシャルな魅力を誇張された複数の異性キャラクターの中から好みのタイプを選んで性愛の成就を目指すという趣向のストーリーゲームにあたるが、もともと男性向けの18禁パソコンゲームのフォーマットからポルノシーンを除去するかたちで成立したこのサブジャンルは、パソコンとコンシューマーの両プラットフォーム間で相互にクロスオーバーをしながらも、対照的な道を歩んでいくことになる。

 まず、ジャンルの派生元であるパソコン側では、基本的に美少女キャラの裸や性交シーンなどの18禁シーンを必須の要素として含みながらも、それを必ずしも主眼とはせず、むしろテキストAVGとしてのシステムやシナリオを洗練(あるいは奇形発展)させる傾向を持ったヒット作が続出する。
 システム面での大きな進化を見せたのが、推理アドベンチャー『EVE burst error』(シーズウェア 1995年)で頭角を表した菅野ひろゆき(当時の名義は剣乃ゆきひろ)の手による諸作であった。本作は、マルチサイトと名づけられた複数の主人公キャラクターの視点を切り替えていくザッピング式のシステムにより奥深い背景を持つ連続殺人事件の真相に迫っていくという仕組みで複雑なストーリー表現を成し遂げ、美少女ゲーム離れしたヒットを遂げる。これはちょうど、コンシューマー機で「サウンドノベル」シリーズを送り出してノベルゲームの始祖となったチュンソフトが、同シリーズの第3弾にあたる『街 〜運命の交差点〜』(1998年)で同様のザッピング・システムを採用することの先駆にあたる出来事だった。
 また、メーカーを移籍した菅野は次作『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(エルフ 1996年)にて、プレイヤーの選択によってストーリー展開が分岐していくAVGの構造をSF的な並列世界として捉え直し、その分岐の様子をA.D.M.S.(Auto Diverge Mapping System:オート分岐マッピング・システム)と名づけた図示によって可視化するシステムを導入。このA.D.M.S.の存在を主人公に与えられた並行世界の認識装置としてシナリオ内に位置付けることで、同じストーリーラインを何度も繰り返しながら結末を多様化させていくプロセス全体を1本の大きな物語として描くという手法を確立する。
 こうしたゲームならではのストーリーテリングの高度化が、のちに美少女ゲームを中心とするAVG全般や、それに影響を受けたアニメ、ライトノベルなどのジャンルに「ループもの」や「並行/多重世界もの」の作劇流行をもたらしていくことになる。

 一方、システム面では『弟切草』『かまいたちの夜』の形式を踏襲して背景画の上にテキストを全面に敷くインターフェースに特化しながら、ひたすらシナリオ面での洗練を追求する潮流を作ったのが、「ビジュアルノベル」を銘打ったLeafの『雫』『痕』(1996年)であった。両作は選択肢によるシナリオ分岐を、複数の美少女キャラクター別の濡れ場に至るルートに利用することでアダルトゲームとしての要請を満たしながらも、全体的にはポルノグラフィを目的としないサイコホラー調のシナリオを展開したことが話題を呼び、異彩を放つ。この方法論の延長線上に、ビジュアルノベル第3作『To Heart』(1997年)は路線をハートフルな学園純愛ものに切り替え、各キャラクターの内面性に繊細に寄り添っていくシナリオを展開したことで「エロゲーなのに感動できる作品」として一躍ブレイクを果たすことになる。
 
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▲『To Heart』(Leaf、1997年)
 
 これに追随するかたちで、Tacticsから発売された『MOON.』(1997年)および『ONE 〜輝く季節へ〜』(1998年)もまた、サイコサスペンス系から学園純愛系へというLeafと同様の路線を、より寓話的かつ悲劇性の高い作風で展開。これで人気を博したスタッフ陣が独立して新レーベルKeyを設立し、その第1作として送り出した『Kanon』(1999年)が、『To Heart』にならぶヒットを果たす。
 この「葉鍵系」とも一括りにされるLeafとKeyの台頭により、もはや性的描写を必須としないプラトニックな心の交流がもたらす感動に耽溺させるタイプの「泣きゲー」が、以降のアダルトゲーム・シーンを席巻する。ここにきて、エロゲーの中心から1980年代以来の「ナンパ」の遊戯性の残滓が完全に払拭され、サイコサスペンスにせよ純愛ものにせよ、1990年代のテレビドラマなどの多くの日本コンテンツに通底していたトラウマ語りのような心理主義的な気分を、最も直截に反映したゲームジャンルとなったわけである。
 
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▲『Kanon』(Key)※PSP版
 
 

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コメント

Planetの記事でありながら宇野氏の論考に良く出てくる「レイプファンタジー」の一言で片付けない(この言葉は東浩紀的立論と距離を取る/解体するには意味があったが、同時に自己の性癖=AKBもまた同様であることに盲目/思考停止させている)ところは気にいった。

だが、この時期は語るに値するとは言え、言上げすればするほど「あの頃は輝いていた」になってくる。今、現在のジャンルの解体「ヤンキー、サブカル、オタクの解体」以後の状況ではどのようになっているのかも聞きたい

No.1 119ヶ月前
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