未来のスポーツに必要なのはゲームデザイナーの力
――【鼎談】「未来の普通の運動会」
発起人・犬飼博士×中村隆之×江渡浩一郎
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.8.12 vol.133
今日の「ほぼ惑」は、プレ『PLANETS vol.9 特集:東京2020』企画として、スポーツに〈テクノロジー〉や〈ゲームデザイン〉の知を持ち込んだ「未来の普通の運動会」仕掛け人たちへのインタビューをお届けします。2020年の東京オリンピックを見据え、ゲームデザインの力は、スポーツの在り方をどう変えていくのでしょうか――?
去る7月5日、「未来の普通の運動会」をテーマに、デジタルゲームの技術や方法論を応用して、まったく新しいスポーツ種目を創造しようという風変わりなハッカソン(※主にIT系の開発者たちによる協同開発イベント)が、神奈川工科大学にて行われた。
これは『eスポーツグラウンド』『スポーツタイムマシン』など、デジタルゲームと身体を使ったスポーツの融合に取り組んできたゲームデザイナーの犬飼博士氏を発起人に結成された「ニコニコ学会β 運動会部」による、第1回目の取り組みだ。
当日は小学生から大人まで約40人が参加。参加者はスポーツを行うプレイヤーであり、同時にその場で新たなルールを提案・創造する開発者でもあることから「デベロップレイヤー」と呼ばれた。
具体的な競技としては、全身を大きな風船状の器具ですっぽり包んで行う「バブルサッカー」、iPhoneアプリを使った鬼ごっこ「Twinkrun」、ライトやセンサーといったデジタルデバイスを使用することでドッジボールにヒットポイントや必殺ショットの概念を導入した「ライトドッジ」など、ベースとなる種目が持ち込まれ、デベロップレイヤーたちが実際にプレイしながら新しいルールを提案。それぞれの競技を移動しながら遊んでいく。
たとえば小学生と大学生が同じ競技を楽しむためにはどんなルールやハンデが考えられるか、といったように、参加者の人数や状況に合わせてフィードバックを繰り返し、次々と違うスポーツに変化していったのが印象的だ。
▲ドッジボールにデジタル支援によるパラメータ要素を導入した「ライトドッジ」
2020年の東京オリンピックを見据え、ゲームデザインの力は、スポーツの在り方をどう変えていくのか。
代表の犬飼氏をはじめ、神奈川工科大学特任准教授でゲームデザイナーの中村隆之氏、メディアアーティストでニコニコ学会β実行委員長の江渡浩一郎氏という3名の仕掛け人に、その未来像を訊いてみた。
◎聞き手・構成:大井正太郎+中川大地
犬飼博士〈いぬかい・ひろし〉
1970年、愛知県生まれ、eスポーツプロデューサー、ゲーム監督。
つながりと笑顔を生むツールとして、ゲームとスポーツに着目。
スポーツとITを融合した作品発表、大会運営等を手がける。
現代的なスポーツマンシップとしてスペースマンシップを提唱。
人工知能やシンギュラリティを巻き込んだ次世代の「遊び」を研究開発中。
中村隆之〈なかむら・たかし〉
株式会社スマイルブーム取締役。 中村遊び応用研究所所長/クリエイティブプロデューサー。 神奈川工科大学情報メディア学科特任准教授。1995年ソニー株式会社にて携帯電話の組込ソフトエンジニアとして働いた後、1997年より株式会社ナムコ(現バンダイナムコゲームス)にてゲーム開発に関わる。代表作は知的好奇心くすぐるパズルゲーム「ことばのパズル もじぴったん」シリーズ。プロデューサー/ディレクター。 2010年にバンダイナムコゲームスを退社し、2012年から神奈川工科大学特任准教授。2014年1月から株式会社スマイルブーム取締役。
江渡浩一郎〈えと・こういちろう〉
独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員/ニコニコ学会β実行委員長/メディアアーティスト。1997年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2010年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。1997年、アルス・エレクトロニカ賞グランプリを受賞(sensoriumチームとして)。2001年、日本科学未来館「インターネット物理モデル」の制作に参加。2011年、ニコニコ学会βを立ち上げる。ニコニコ学会βは、2012年にグッドデザイン賞、2013年にアルス・エレクトロニカ賞を受賞するなど高い評価を受ける。産総研では「利用者参画によるサービスの構築・運用」をテーマに研究を続ける。主な著書に『パターン、Wiki、XP』、『ニコニコ学会βを研究してみた』、『進化するアカデミア』。ホームページ:http://eto.com/
■「未来の普通の運動会」とは何か
――江渡さんが委員長を務める「ニコニコ学会β」で新たに「運動会部」が作られたことに驚きました。これはどういった経緯だったんでしょう?
江渡 犬飼さんが『スポーツタイムマシン』を作られて、僕がニコニコ学会βでセッションをお願いしたのがきっかけです。『スポーツタイムマシン』はスクリーンの前で走るとそのデータが蓄積され、過去の自分や他人、あるいは動物などと実際に競争が出来るというものでした。
犬飼 『スポーツタイムマシン』がYCAM10周年記念のコンペで受賞した時の審査員が江渡さんでした。よく出来てるからニコニコ学会βで発表しませんか、って誘われて。東京オリンピックも決まったし拡張スポーツのようなテーマで話しませんかと。僕はオリンピックの話よりはスポーツそのもの話がしたいと提案して、未来のスポーツについて話をしました。
江渡 その後に犬飼さんがスポーツに対する新しい取り組みを続けていこうという意向を示していて、ニコニコ学会βと一緒にやろうという話になりました。なので僕的には犬飼さんがやることを応援しているという立場です。ニコニコ学会βのリソースを使って宣伝やスタッフの提供という形で後押ししていこうと。
運動会部を立ち上げることになったのが3月頃。それから、今日は来ていないんですが、「超人オリンピック」の稲見昌彦さん、ゲームデザイン研究者の簗瀬洋平さんといったキーパーソンになる人たちと打ち合わせを重ねていってニコニコ学会βらしい研究として、スポーツの新しい可能性に取り組んでいくという流れになっていきました。犬飼さんを中心としてニコニコ学会βでスポーツのテクノロジーを新しくしていく、新しいスポーツのルールも作っていく、という関係です。
犬飼 ニコニコ学会βで話した時に、新しいデバイスを作ったりオリンピックの競技にしたいと言ってる面白い人たちが結構いたんです。だけど、僕が「どうやって遊ぶんですか」って聞くとそこから先がなかった。皆、面白い技術は開発出来たけど、どんなルールを作って遊べばいいのかという部分で困ってたんです。だから、そのノウハウを持ってるゲームクリエイターに協力してほしいって話になったんだけど、学会や大学の教授と連動しながらそんなことをやれるゲームクリエイターって僕しかいなかった。じゃあやりましょうと。それで江渡さんと話していくうちに、「未来の普通の運動会」という言葉が生まれました。
――中村さんが参加するまでの経緯というのは?
中村 犬飼さんからFacebookで「運動会ハッカソン」というのをやるよ、とお誘いを受けたのが最初です。それは面白いから是非参加したいと。そしたら「場所が取れないんだけど中村さんなんとかなりませんか」と言われて、僕が教授をしている神奈川工科大学にダメモトで聞いてみたらあっさり「体育館使っていいよ」と言ってくれて今日に至っています。
■「ゲーム」から「スポーツ」へのアプローチ
――なるほど。中村さんも含め、ゲームデザイン関係者が多く揃っていますが、ゲームデザイン業界でスポーツにコミットしようという動きって、どれぐらいの規模であったんでしょう。
江渡 僕の理解で言えば極めて少ないという認識です。僕もゲーム業界出身とはいえ今では完全に外様の人間なんですが、そこから見ると犬飼さんが頑張ってるから他にも同じような人がいるんじゃないかと思ってたら、全然そんなことはなかった。スポーツテクノロジーを新しくしようとか、ゲーミフィケーションをスポーツに取り入れようとか考えてやってる人って犬飼さんくらいなんです。
今回、中村さんが参加してくれましたけど、僕としては元ゲーム屋としてもすごく興味があるからもっと盛り上げようぜって感じで。ゲーム屋さんって本気を出すとすごいんですよ。ゲーム屋さんのテクニックを使って本気で盛り上げていけば本当に面白いルールが出来ちゃったりするんですね。そういう実力は僕はわかっているつもりなので、犬飼さんと協力して盛り上げていきたいと思っています。
――犬飼さんは『eスポーツグラウンド』を作った時にも「いつかこれをオリンピックの種目にしたい」と仰っていました。その頃から体を動かすということに問題意識を持っていたんですか?
中村 体を動かすことというよりは、ゲームっていうものに対しての危機感をずっと話してたんですよね。
犬飼 中村さんとはそうだね。僕自身はゲームとプレイの話だと、ずっとプレイヤー側に意識的に足を置いてるんです。だから僕が話すと身体の話になるんですよ。もちろんゲームを作る側に立った時も僕はプレイヤー側に立つっていう文脈で見てるから、ゲームっていうのは僕の身体とは全然かけ離れないんです。
僕はゲームデザインとか全部独学で先輩とか全然いないので、ゲーム業界の人とこういう話をしたことないんです。その点、中村さんはナムコにいてちゃんと先輩からゲームデザインを教わってきている。
中村 ナムコってゲームの会社って思われがちなんですけど、「遊びをクリエイトする」会社でもともとは遊びの会社なんですよね。たまたまゲームが流行ったからゲームを作ってたんですけど。だからナムコには「遊び哲学」っていう変なものがあって、飲みながら「遊びとは何か」みたいなことを語る不思議な会社だったんです。ナムコ出身者に大学でゲームデザインの先生になる人が多いのも、そういうカルチャーがあるからかもしれません。
犬飼さんと会った時に「ゲームはクリエイターが作るんじゃなくてプレイヤーが作るんだ」って言ってて、実際にeスポーツグラウンドにイスや板を置いてルールを変えちゃう無茶苦茶な遊び方を見せてくれたんです。自分達でルールを作って、ブロック崩しなのに勝手に鬼ごっこを始めたりする。でも、実際に子供に遊ばせたらそれをやるわけですよ。そっちのほうが自然だし面白い。そんなことがあって、犬飼さんを僕の授業に非常勤講師で呼んだりしたのが今回のプロジェクトに参加するきっかけになりました。
■ハッカソンで得られた収獲
――実際に今日「第1回運動会ハッカソン」をやってみていかがでしたか?
中村 僕も犬飼さんも別にスポーツは全然やらないんですよ。むしろ運動不足。体を動かさない人たちがスポーツをハックしてみようという企画なんです。
犬飼 面白いのはそこなんだよね。体を動かさなかった人たちがスポーツっていいんじゃないか、って介入してきてるところがすごく面白い。
――「普通の運動会」というのはやはりアスリート的に訓練された人ではない「普通の人」という意味なんですね。
中村 そうですね。「オリンピック」じゃなくて「運動会」って名前にしてるのも、一般の小学生だったりあるいはおじいちゃんおばあちゃんがやれるもの、生活の中に溶け込んでいるもの、という意味があります。
犬飼 前提としてビデオゲーム作ってる人たちは、アスリートのためにビデオゲーム作ろうって思わないんですよ。ビデオゲームの人たちは、市民にどうやってインストールするか、どうやって渡すかということしか考えたことがないから、それは自然な流れでした。ゲーム業界で働いてきた人たちが「スポーツを作れ」って言われても、いきなりアスリート向けの競技を作らないよね。
中村 今日みたいな場で「これ子供じゃできないね」ってなった時に、大人だけにしようとせず「じゃあ子供ができるためにはどうしたらいいか」を考えるのがゲーム業界の考え方。たくさん売らなきゃいけないっていう文脈があるから、より広くプレイヤーを取り込むためにはどうしたらいいかを考える。
――今日は「バブルサッカー」と「Twinkrun」が招待種目になっていましたが、この2種目はどうやって決まったんですか?
犬飼 バブルサッカーは稲見先生が「身体拡張といえばバブルサッカー」って言い出したのがきっかけ。江渡さんが日本でバブルサッカーの普及活動をしている澤田智洋君と繋がりがあったので実現しました。澤田君も運動しない人なんだけど、「やっぱりバブルサッカーも普通のサッカー上手い人のほうが強いからルール変えたい」って言い出して。でも、実はバブルサッカーって既に定義が出来上がっちゃってるから変えられる部分が少ないんだよね。それで今日はボールを使わずにやってみようということになった。
Twinkrunはニコニコ学会βの12月のシンポジウムを見に行った時に一番面白かったから。僕がスポーツタイムマシンをやってて引っかかっていたのが、続けていくためのコストが高すぎるってことだったんです。Twinkrunはそれをスマホ1個で解決していて、スポーツをIT化することの好例だったのでこれは皆に見せなきゃなと。
▲「バブルサッカー」用のバブルを使った新たな競技の開発風景
――今日いきなり持ち込まれた種目もあったんですか?
犬飼 あったね。Twinkrunを背中につけて手鏡を持って鬼ごっこをしながらその色を当てる「鏡鬼」は今日持ち込まれた競技。京都精華大学の山田真広君が考えてきた種目なんだけど、センスいいなと思った。彼はゲームデザイナーの才能があるよ。
▲Twinkrunを背中につけ、鏡を持って行う「鏡鬼」
中村 めっちゃセンスいいよね。皆、ビデオゲームのゲームデザインってすごい難しいものだと思ってるんだけど、そんなことないんです。実は子供のほうがゲームデザインは出来ますからね。「この線からこっち側は俺の陣地ー!」みたいな。
犬飼 あの現実拡張感すごいよね(笑)。
中村 あれはもうゲームを作ってるんですよ。その感覚がわかってくるとビデオゲームを作るのもスポーツを作るのも同じこと。
ゲームデザインの話ってビデオゲームを作るためだけに役に立つものじゃなくて、自然に人間がどうしたら楽しいとか、どうしたら面白いか、どうしたら喜ぶか、とかそういう話なんです。それがわかると世の中の見方も多分変わると思う。
今日すごく思ったのはやっぱり面白いルールを考えようとすると、皆制約をつけたがるということ。完全にフリーなほうが面白いかと思いきや、やっぱり何か制約をつけることで面白さが出てくるみたいな。
犬飼 そのジレンマに気付くと次のステップに行けるんですよね。
中村 そういう本質を学ぶ場として、今日は大学の先生としては最高に面白い授業だと思いましたよ。
犬飼 学校の授業の中に「ゲーム」っていう授業は絶対に必要だと僕は思っているんです。美術や数学の時間にゲームのことを学ぶのでもいいんだけど、要するに絵を描いたり字を書くことと同じように「ゲーム」というテクノロジーは使えるので習うべきだと思う。だから僕は今やってるのは小学生レベルのゲームデザインだと思ってるんです。
――「運動会ハッカソン」の目的は、テクノロジーとして何か新しい種目を作ることよりも、スポーツのルールやゲームということの本質を学ぼうということになるんでしょうか?
犬飼 多分そういうことに気がつき始めてしまうんです。最初は、オリンピックがあるから新しい種目を作ろう、新しいスポーツで遊んでみたい、っていう単純なことがきっかけになって皆が動き出すんだけど、いざ考え始めるとそういうことに段々辿り着くようになる。そしてそれをやってみると、僕らがずっとゲームデザインで習ってきたようなことを、すごい高速で学べるんじゃないかと期待しています。
ニコニコ学会βはまさにそれなんです。どれだけ論文を書かれてもわからなかったこと、伝わってなかったことが、1本のビデオや1回のイベントでバシッと伝わってしまう。言語とかじゃなくてわかっちゃう、あるいはわかっちゃった気になれるでもいいんだけど、そういう豊かさは論文の中だけでは得られなかったもの。だからゲームもビデオだけではなくて新たにメディアを作るということが重要で、運動会というのはまさに新しいメディアになっているんです。または、使い古したメディアに新しい視点を見つけているのだと思います。これが意識の拡大ですね。
中村 ゲームをデザインする側に回るか、ゲームのルールに従う側に回るかという構造があって、どうもルールに従わなきゃいけないと思い込んでる人が多いんです。でも、ふと見方を変えるとゲームのルールを変えちゃえばいいじゃん、っていうことに気付く瞬間がある。仕組みがおかしいなら仕組み変えちゃえばいいじゃん、って。それもゲームデザインをしてるかしてないかで変わると思うんです。それこそ小学校でゲームデザインの授業をやって、運動会の種目を一種目作るってことを全国の小学校でやっててもいいと思うんですよね。
――つまり「未来の普通の運動会」はこのプロセスを通じて出てきた種目を新しい種目として加えようっていうことではなくて、この運動会っていうプロセスそのものを各自が自己生成するものにしていったらいいんじゃないかっていう提案なんですね。
犬飼 そうです。まさに考えていた、そのままの言葉をありがとうございます(笑)。
中村 それをやっていく中で人気が出たものがほんとにオリンピックの種目になっても全然おかしくないし。犬飼さんと話してたのは、スポーツっていうのが出来てきちゃうとそのルールは破っちゃいけないというものになる、それを変えていこうよ、デベロップしていこうよっていうこと。だから、今回「デベロップレイヤー」っていう言葉を生み出したことは画期的なことだと思います。プレイとデベロップっていうのが一個になってるっていう意味が今日参加した人はわかるわけだから。
世の中の仕組みをゲームで見る、ってことをゼミでやるんですけど皆全然わからないんです。たとえば就職活動はどういう構造になっているのか。どういう人がどういう心理で動いてて、自分の行動はどう影響するのか。色々考えていくと要は「就職ゲーム」って「同時多発的イス取りゲーム」だって気付けると思うんですけど、皆にはなかなか理解してもらえなくて、大学の先生としては教える限界を感じます。だから教えたらダメで、「運動会ハッカソン」みたいな形でやらせて勝手に学ぶのがいいんです。本質は教えられるものじゃなくて発見するものだから、自分で発見したことならそれは僕が発見したものと違っても別にいいんです。僕も授業でこれをやろうと思いましたよ。これ以上ないゲーム教育の方法だと思います。
犬飼 大体皆ボードゲーム止まりですからね。
中村 ボードゲームより速度感がある。プレイ3分で問題に気付けるから。
――確かに思考とフィードバックのサイクルがものすごく早かったですね。
犬飼 皆すぐ飽きるしね(笑)。一瞬で飽きて一瞬で「ダメだこれは」って評価を与えられる。そのスピード感がいいんですよ。普通のゲーム開発だと「いつか誰かに見せよう」って2ケ月くらい自分の中だけで温めてる期間とかがあるから。
■ゲームが変える未来のスポーツ文化
――「ニコニコ学会β 運動会部」の活動にスポーツ界側からの絡みや動きはあるんですか?
江渡 第6回ニコニコ学会βの犬飼さんのセッションが焦点の一つで、為末大さんやスポーツクラブ「ルネサンス」の斎藤敏一会長に登壇してもらいました。運動会部の新しい取り組みに対して、アスリートやスポーツクラブ経営者の立場からコメントしてもらうというセッションだったんですが、これは重要な繋がりだと思っています。為末さんは運動会部の発起人にも連なってもらっていますし、今後もそうした形で協力してくれる人をスポーツ界から探していかなければと思っています。
――最後に2020年東京オリンピックというメルクマールに向けて、具体的なロードマップや展望があればお伺いしたいのですが。
犬飼 運動会部としては「未来の普通の運動会」になってて欲しいというのがゴールになっています。それが2020年かどうかはわからないですが。
江渡 僕も今日、主催者側だけど参加していて、とてつもなくすごかったなと思いましたね。こうなっていくと面白いなと思ったのは、たとえば過去に万博とかがあった時に、同じ時期にオルタナティブなアーティストが勝手にあちこちで展覧会をやったというのがあったじゃないですか。それと全く同じようにオリンピックと同じ時期に勝手に色んな人たちが自主的に「オリンピックもいいけどこういうのもいいよね」っていう発展的なスポーツの取り組みがあちこちで起こって、とにかく変なスポーツが鬼のように日本中で行われて、世界中から「日本は変だ」って言われる未来(笑)。それが僕が今日参加して見えてしまったビジョンですね。そうなっていくんじゃないかなというのを今日予感しました。
犬飼 僕がイメージしているのは、「ニコニコ超会議」に近い「超大運動会」のようなもの。要するに、「運動会」というものがオリンピックとは別に市民の間で行われる面白いお祭りとして、町のあちこちでちょこちょこ点在できるツールになっていたら面白いと思うんです。それがオリンピックに似ていてもいいし、違っていてもいい。だけど、それが以前のオリンピックとちょっと違うスポーツの大会であったなら、そこに介入するのは今の科学者とかゲームデザイナーがすべきことだと思っている。
だから基本的には、「オリンピックだから」っていう理由でやっているわけではないんです。だけど、人々がオリンピックに興味を持っていて、そのニーズに応えられるものを提供できるから用意しておくという感じ。前よりちょっといい運動会を2020年に皆に提案できていて、それを皆が面白がってやっている状況が目標です。
――オリンピックがスポーツや身体を動かすということを皆が捉えなおす機会になる。そこに新たなボキャブラリーを提供していこうと。
犬飼 スポーツっていうものはゲームであるっていうことをもう一回見直して欲しいんです。普段遊んでるビデオゲームとかが持っているゲームの仕組は、じつはスポーツと地繋がりだということが理解できると、人々のIT化、時代のIT化というものはまた一歩進むと思っています。
▲第1回運動会ハッカソンに参加したデベロップレイヤーのみなさん
(了)
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