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切通理作×宇野常寛3万字対談「いま昭和仮面ライダーを問いなおす」 ――映画『平成ライダーVS昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』公開(勝手に)記念 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.039 ☆

2014/03/27 07:00 投稿

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切通理作×宇野常寛3万字対談
「いま昭和仮面ライダーを問いなおす」
映画『平成ライダーVS昭和ライダー
仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』
公開(勝手に)記念
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.3.27 vol.39

今朝のほぼ惑は「仮面ライダー」についての3万字対談。それも平成ではなく、「昭和」のライダーについてです。昭和の特撮作品のスタッフを数多く取材してきた切通理作氏と平成ライダーの評論を手がけてきた宇野常寛が魅力を語り尽くします。

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「変身!」のかけ声とともに、現在まで続くブームを起こした『仮面ライダー』とは何だったのか? 1970年代当時のヒーローとしての画期性、今も多くの人々の目を引くアイコンとなっているデザイン、スタッフの苦心が生んだアクションとドラマの化学反応、世界観や話作りのノウハウなど現代の「平成ライダーシリーズ」にも形を変えて引き継がれた要素……。ゼロ年代のあらゆるエンターテインメント作品を鋭く語ってきた評論家・宇野常寛と、昭和・平成の数々の特撮スタッフ取材を重ねてきた文筆家・切通理作が、昭和の『仮面ライダー』の魅力を語り尽くす!

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▼プロフィール
切通理作(きりどおし・りさく)
1964年生、東京出身。和光大学人文学部卒。編集者経験を経て1990年代前半から文筆活動に携わる。『ウルトラマン』『仮面ライダー』シリーズをはじめとする特撮作品、その他の映像作品のスタッフインタビューや作品解説をはじめ、幅広く世相やサブカルチャーを網羅し、「キネマ旬報」「特撮ニュータイプ」「宇宙船」「わしズム」など数多くの媒体で活動。代表的な著書に、歴代ウルトラシリーズの脚本家に取材した『怪獣使いと少年』(宝島社)、写真家・丸田祥三との共著『日本風景論』(春秋社)、『特撮黙示録1995‐2001』(太田出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新書)ほか。『宮崎駿の「世界」』(ちくま文庫)で第24回サントリー学芸賞を受賞。
 
◎構成:葦原骸吉
 
原点としての「旧1号編」
 
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▲仮面ライダー VOL.1 
 
宇野 今回は映画『平成ライダーVS昭和ライダー』を記念して、歴代の昭和『仮面ライダー』を順を追って語っていきたいと思います。しかし僕は1978年生まれなので、昭和仮面ライダーの第一期、つまり初代『仮面ライダー』から『仮面ライダーストロンガー』まではリアルタイムでは接していなくて、本やビデオの後追いで知った世代なんです。だからまず、なんと言っても初代『仮面ライダー』(1971年)をリアルタイムで目撃した世代の、ファーストインプレッションをまず伺ってみたいなと思うのですが。

切通 僕は圧倒的に仮面ライダーそのものに魅力を感じます。ライダーのデザインって、石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)さんの漫画と実写で微妙に違うんですよ。漫画では触覚がホントの昆虫みたいにしなやかなんですけど、実写の、当時エキスプロにいた三上陸男さんが造型したライダーは、触覚がラジオのアンテナを曲げたみたいで、まるで町の工場で造ったような工作的な感覚に、当時のラジカセや自転車とか僕らの身近にある機械のデザインを見た時のような、なんとも言えない味わいを感じます。大人になってからも、あの顔の写真を一目見ただけで気持ちが持っていかれてしまうんです。

宇野 僕も初代『仮面ライダー』の何が一番好きかというと、デザインとスーツの造形なんです。同じ特撮ヒーローものでも石ノ森さんのデザインワークは『ウルトラマン』の成田亨さんのものとはまったく違う。たとえば成田さんの場合、ゼットンは水牛がモチーフで、レッドキングも恐竜がモデルだろうけど、どちらもモデルになった生物の進化したものではなく、あくまで実在のものとはまったく別種の生物になっている。つまり成田さんは現実にはこの世界に存在しない、あたらしい生物を産み出す天才だった。対して、石ノ森さんはすでに存在する二つのモノを組み合わせる天才だった。クモ+人間でクモ男、カニ+コウモリでガ二コウモル、そもそも仮面ライダーのバッタの仮面にライダースーツというデザインを考えついたというだけでもう確実に天才だと思うんです。要するにウルトラマンが世界の外側から来訪した超越者で、仮面ライダーは僕たちのこの世界の内側から産まれ落ちた存在だという物語上の設定がデザインコンセプトにも通底しているわけですね。

切通 あのライダースーツと一体化したような、レザーのしなりが感じられるボディラインも、見ていてシビれるものがあります。

宇野 僕はウルトラマンシリーズも大ファンで、昭和ウルトラマンと昭和仮面ライダーの物語のどちらが面白いかと言えばやっばりウルトラのほうなんですよ。もともと昭和仮面ライダーはストーリー重視の番組ではないですしね。しかし、大野剣友会のアクションは洗練されていて何度観ても飽きないし、デザインについても仮面ライダーの方に惹かれるんです。持っている玩具も子どもの頃から仮面ライダーの方が多い。仮面ライダーのキャラクターデザインに接していると、世界との関係について感覚がひらかれるようなところがある。

切通 なるほど、だから宇野さんの本『リトル・ピープルの時代』の表紙は1号ライダーなんですね。「どちらかといえば平成ライダーを熱く語っているのに、なんで昭和ライダーが表紙なのかな?」って思っていました。

宇野 あれは装丁家の鈴木成一さんのアイデアですね。僕も出版社の担当さんも、表紙では仮面ライダーがテーマの本であることはむしろ隠して、村上春樹論だと思い込んで買った読者を驚かせようと思っていました(笑)。でも、鈴木さんがここは仮面ライダーのフィギュアを使うべきだと主張して、僕の私物を提供したんです。ちなみに、このフィギュアは海洋堂が昔発売していた1/4スケールの旧1号ですね。原型師は木下隆志さんです。
 
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▲宇野常寛『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)
 
切通 そうだったんですね。初代仮面ライダーが始まったとき、僕は小学校二年生だったんですが、クラスで一番優等生だった、みんなと遊ばないような子から、「すごい変な番組が始まった。なんか暗い感じの、キチガイ博士みたいなのが出てきて、人間を改造してる、見たこともないような番組なんだ」って感じに紹介されて、僕も「見なきゃ! いつやってるの?」と初めて見たのが「人喰いサラセニアン」の回(第4話)でした。それ以来毎週見るようになりましたね。女性が植物園で地中に引きずり込まれるのが印象的で、ホラーなテイストで、戦闘員もまだ全頭マスクではなくて、顔にサイケな模様を直接塗ってるし、暗闇にライダーのCアイが光って……スカッとするヒーローものっていうより、怪奇ものって感じの印象を持っていましたね。

宇野 当時は等身大の変身ヒーローという概念自体がなかったんですね。

切通 変身シーンもまだバイクで加速して姿が変わるという段階だったし、新しいセンスの番組を見ているという感覚がありました。そもそも『仮面ライダー』って名前が独特じゃないですか。『ウルトラマン』は全部英語、『月光仮面』は全部漢字。後の「キカイダー」や「イナズマン」もそうですが、石ノ森章太郎独特の日本語と英語が混ざったセンス。「仮面」って言葉自体もちょっと復古調で、新しいものと見知ったものがミックスされてる感じ。僕は最初、仮面の人がバイクに乗っている状態を「仮面ライダー」って呼ぶのかと思ってたんですけど(笑)。

宇野 旧1号編(1〜13話)の前半って、当時の東映+石ノ森だからできた怪奇テイストで、たぶん一番原作の雰囲気を残している。本郷猛は自分が改造人間になってしまったことでずっと苦しんでいるし、ショッカーの作戦も日常の生活風景の中に潜む恐怖として非常にミステリアスに描かれている。この旧1号編前半のシリアスなモードが好きな人って多いですよね。でも、僕が好きなのはむしろ旧1号編の後半なんです。第10話以降は藤岡弘さんが撮影中のケガで降板しちゃって本郷猛のシーンは全部バンク、ライダーの声はショッカー首領役の納谷悟朗さんの弟の納谷六朗さんが演じている。六朗さんは『クレヨンしんちゃん』の園長とか『幽遊白書』の仙水の声で有名ですね。僕はあのときにライダーって従来のヒーローから解放されたところがあったと思うんです。要するに、平成の『仮面ライダー555』や『仮面ライダーディケイド』に続くような、「ライダーの中身は誰でもいい」「誰がライダーに変身してもいい」という感覚が結果的にあのときに生まれたんじゃないか、と。

切通 藤岡さんの事故は当時とても有名で、子どもの僕も知ってましたが、一方僕は迂闊な子だったので、藤岡さんが事故後の1号ライダー編の新規撮影分には出てないことには気付かなかった(笑)。映像の使い回しで、声だって違ったのに。

宇野 旧1号編の後半はシナリオの工夫も面白くて、たとえばゲバコンドルの回(第11話)は、当時助監督だった長石多可男さんが適当にでっち上げたストーリーですね。

切通 藤岡さんが新規に出ないでどういう話が成立するか、助監督さんに書いてもらったストーリーから急遽選ばれたっていう回ですね。ライダーの相棒役であるFBIの滝和也が初めて登場する。

宇野 意外と好きなのは怪人ヤモゲラスの回(第12話)です。この回はほとんど緑川ルリ子が主役じゃないですか。当時の真樹千恵子(現:森川千恵子)さんってちょっとはっとするような美人で、僕なんかは単に彼女がたくさん映って活躍するのを見ているだけでも楽しいんですよ。

切通 森川千恵子さんは『アイアンキング』でも、敵の不知火一族十番目の影を演じていて、明るく健康的な風情なのにどこか影を背負った役柄を演じさせられているんですよね。どちらも物語の中途でいなくなるし。彼女の活躍は確かにレア感があります。緑川ルリ子は原作にも登場するキャラクターですしね。

宇野 この回は、デンジャー光線っていう兵器を開発した博士を、ヤモゲラスが無理矢理ショッカーに協力させようとしてライダーと戦う話なんですけど、最後にヤモゲラスはその博士に反撃されてデンジャー光線で倒されちゃう。この話ではライダーは本当に添え物にすぎなくて、ときどき助けに来て暴れて帰っていくっていう位置づけですよね(笑)。でも、その何でもアリな感じがいいんですよ。

切通 滝和也登場と、本郷編ラストである13話の間に挟まって、埋もれた感じのヤモゲラス回が宇野さんからすると印象的だというのは、面白いですね。いま見ると、本郷猛の場面を新規撮影できないから、ライダーを添え物にせざるを得なかったんでしょうけどね。

宇野 それでもちゃんと番組として成立しているのがすごいと思うんです。こうしたエピソードの積み重ねが、結果的にだけれども、ヒーローものの射程というか、『仮面ライダー』という作品で許されることを広げている気がするんですよね。

切通 そういう見方もあるのか。僕は旧1号編の後半というとやっぱり滝和也の存在が大きいんですけど、生身であれだけ戦える滝がその後レギュラーとして定着していくということ自体が、宇野さんの言う、単体ヒーローものでありながら射程を広げている部分なのかもしれないですね。2号ライダー編以降は、完全に二人のコンビものになっていきます。子ども心に、滝が最後はライダーに怪人を倒す役を譲っているのが大人だなと思ったりして見てました。

宇野 あとトカゲロンの話(第13話)も大好きですね。後に劇場版や最終決戦に引き継がれていく再生怪人がズラリと並ぶ、あのお祭り感はここで開発されたわけでしょう?

切通 それまで出てきた怪人が総登場する最初ですよね。戦闘員並みに弱くなってるんだけど(笑)。

宇野 ショッカーの頓珍漢な作戦も好きです。サッカー選手を改造人間(トカゲロン)にして、その強靭なキック力で爆弾をシュートしてターゲットの研究所のバリアー(なぜか作中では「バーリア」と呼ばれる)を破るのが目的(笑)。爆弾の威力が問題じゃないのかよ、と。

切通 人間を改造するところから描くんですよね。でも視聴者に同情心を持たせないためか、チームメイトにやたらぞんざいな態度を取る、チンピラみたいなサッカー選手に描かれているところが東映っぽくていい(笑)。トカゲロンは、見てる僕が当時はまだ<怪獣>っていうものがカッコイイんだという概念だけに縛られていたから、怪獣みたいなデザインの怪人が出てきたのが単純に嬉しかったですね。
 後に『クウガ』のプロデューサーとなる高寺成紀さんは、ウルトラマンや怪獣が好きでありながら、いち早くライダー怪人ならではの良さに気づいていたということなんですが、僕はまだそこまで目覚めてなかったのをいまは恥じています。
 
 
主役俳優の事故の生んだ「王道」の確立――「旧2号編」
 
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▲仮面ライダー VOL.3


宇野 僕は2号編(14〜39話)の初期も好きなんです。旧1号編って、まず石森色が強い状態で始まって、だんだん東映色に染まっていく過程だったと思うんですね。藤岡さんの事故でこの流れはぐっと加速して、主役交代後の2号編はもう完全に東映+シナリオの伊上勝さんが作った世界になっている。2号編になると「とにかくアクションをCM前と後の二回見せる」「そこから逆算してストーリーを組み立てて行く」という正しい娯楽活劇路線が完全に確立されているんですよね。

切通 何か起こると一文字隼人が必ずバイクで通りかかるという。端的な導入でパッパッと進む。井上敏樹さんが父親の伊上勝さんを「親父の脚本は紙芝居だ」と言うゆえんですね。

宇野 たとえば、怪人ピラザウルスの回(第16話&17話)なんてもう、すごいじゃないですか(笑)。ショッカーがプロレスラーを改造して、そのプロレスを見に来た政府要人を毒ガスで暗殺する、という謎の作戦を実行するんですよね。どう考えても、クライマックスにリングで仮面ライダーとピラザウルスが戦うシーンを撮るというアイデアが先にあって、そこに合わせてストーリーを強引にでっち上げている。

切通 集まった観客の前でリング上の戦いを繰り広げるシーンはめちゃくちゃ興奮した! 先にライダーが倒れるところとかもドキドキしましたし。 

宇野 最高に燃えるシュチュエーションを作るために、あそこまで強引なストーリーをでっち上げるイマジネーションって素晴らしいと思うんですよね。物語をアクションに正しく奉仕させている(笑)。

切通 でも、あの話は2号ライダー編にしてはドラマがある方でしたよ。怪人にされたレスラーに弟がいて、最後に兄が元に戻って、弟が「お兄ちゃん怪人だったの!?」って言うと、一文字隼人が「怪人は死に、お兄さんは蘇ったんだ」って答える。一文字自身も改造人間なのに、その弟の前ではあえてそこを切り捨てて言い切っていますよね。そんな一文字に強さ、優しさを感じてジーンとなりました。

宇野 一文字って終始明るいんですよね。本郷猛って、特に初期は孤独で暗いんだけどその分人間的な深みがあるキャラクターとして描かれていた。あれはあれで格好いいんだけれど、一文字隼人は、仲間や子どもの前でも、背負っているものを全部飲み込んで常に笑顔じゃないですか。あれがいいんですよね。

切通 一文字のキャラクターには、あの頃の東映のテイストが入っていますよね。当時東映で、宮内洋さんも出てた『キイハンター』(1968〜73年)というアクションもののドラマがあって、ナレーションで「恋も夢も望みも捨てて」って言ってるのに、みんないつも遊んでるように冗談を言い合ってる。本当は、任務で個人の生活を犠牲にしてる部分もあるんだけど、表面は常に明るいっていう。一文字隼人もそんな感じですね。

宇野 子ども心に疑問だったのが、第39話のクリスマスのエピソードでライダーが狼男を倒したあと、子どもたちへのクリスマスプレゼントとして自分で仮面ライダーグッズを配ってるんですよ。あれがちょっとおかしくて(笑)。今考えるとメタフィクションっぽいですよね。

切通 当時からべつに感動したとかはないんだけど、でも妙に印象に残る場面ですね。ちゃんと憶えているし。

宇野 あれって一文字だから配れるんですよね。本郷猛はキャラ的に配れないんですよ、たとえ新1号編の、少し明るくなった本郷でもちょっと無理がある。

切通 なるほどね。しかもその翌週(第40話)に1号が帰って来る。

宇野 当時は、いわゆるダブルライダー編ってすごく盛り上がったんじゃないですか?

切通 やっぱりもうめちゃめちゃ期待して見ましたよ。お正月の放映だったし、お年玉もらったみたいな気持ちになるイベントでしたね。鹿児島ロケで、桜島が舞台でね。

宇野 ダブルヒーローというもの自体がそれまであまりなかったんですよね。それだけで十分引きがあるのに、あのたった数話の中で、片方のピンチにもう片方が駆けつけたり、片方が一時洗脳されて敵に回ったりと、後の作品で踏襲されていくダブルヒーローものの脚本術がかなり開発されている。それが今観てもすごいなって思うんですよね。あとは、ライダーダブルキックですよね。あれはもう言葉の響きだけで感動します。僕、小学生の頃にレンタルビデオで観るまでは本でしか知らないんですよ。なのにもう、大好きでしたもん。

切通 そうですよね。やっぱり、ドラマの『仮面ティーチャー』(2013年)や、『スケバン刑事2』(1987年)とかでダブルキックが出てくると妙に燃えるんですが、その原点はあそこでしょうね。ただ、あの回は見ていて「1号ってあんなに黒かったっけ? 最近は2号の方を見慣れてるからギャップ感じるのかな」って思ったんです。でもいま考えると、あれはあの時だけのマスクだったんですね。

宇野 「桜島1号」と呼ばれるスーツですよね。フィギュアが発売されるときも必ず旧1号とは別のスタイルとして別個に商品化されていますからね。僕は旧1号のほうが好きな造形とカラーリングですけれど、旧2号と並べるのならやっぱり桜島1号じゃないとしっくり来ないものがあります。
 
 
『V3』プロローグとしてのショッカーライダー編――「新1号編」
 
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▲仮面ライダー VOL.16
 
宇野 で、その後、本郷猛が本格的に復帰して新1号編(53〜98話)になるわけですね。

切通 じつは、僕が一番好きなのは新1号編の後半(80〜98話)から、続く『仮面ライダーV3」前半の「26の秘密」編ですね。

宇野 初代『仮面ライダー』は物語があってなきに等しいのですけれど、一番物語性があったのは初代から『V3』へ移りかわるこの時期ですよね。

切通 ショッカーライダー編とかだよね。ショッカーに親兄弟を殺された人達が作ったアンチショッカー同盟っていう組織が出てくるんですが、それが、連合赤軍じゃないけど、立花藤兵衛やライダーとも立場が違って、組織としての規律を守るためには個人を犠牲にしようしたりする。三者三様の錯綜した対決の中で、しかも偽仮面ライダーが投入されて「8人の仮面ライダー」っていうタイトルも、敵味方入り乱れて8人っていう……あの辺りの感覚にもどこか興奮しましたね。

宇野 ショッカーライダーが6人と、それに加えて1号と2号の8人ですね。ちなみに、ショッカーライダーって石ノ森さんの原作版の方が早く登場していますよね。しかも、本郷猛を殺してしまう役どころだった。

切通 原作のテイストが少し入ってきた、っていう興奮もあったかもしれない。

宇野 原作漫画だとショッカーが仮面ライダーを量産して、本郷猛が十二人の仮面ライダーに囲まれてフルボッコにされて死んじゃうじゃないですか。そのショッカーライダーの一人が一文字隼人で、戦闘中に脳に衝撃を受けて正気に戻り二代目の仮面ライダーになる。やっぱり仮面ライダーはウルトラマンと違って絶対の存在じゃないんですよね。あくまでショッカーが作った改造人間が一人脱走しただけの存在だから、量産も可能だし、条件さえ満たせば「誰でも仮面ライダーになれる」。この決してオンリーワン「ではない」ヒーローという設定は仮面ライダーならではのものだと思います。これは旧1号編の後半で藤岡弘さんが降板した結果生まれた「誰がライダーになっても構わない」というメタルールが、その後も適用されていると言えますよね。

切通 だから「8人の仮面ライダー」というタイトルにぞわっとくるのかもしれない。同じライダーなのに敵味方入り乱れて8人いるあたりに、子どもながらにヒーロー性のゆらぎを感じていたのかもしれないですね。
 
 
『仮面ライダー』第9クールとしての『V3』――『仮面ライダーV3』
 
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▲仮面ライダーV3 


宇野 当時の感覚だと『仮面ライダーV3』(1973年)は、新番組が始まったというより、『仮面ライダー』の第9クール目のように見えたということでいいんですか?

切通 そう、だから『V3』の第2話「ダブルライダーの遺言状」が仮面ライダーの第100話なんです。『V3』の序盤には本郷猛と一文字隼人が当たり前のようにいて、V3こと風見志郎は彼らに改造されるわけですよね。で、本郷と一文字が大空に散るのが第2話。『仮面ライダー』の最終回はショッカーを追いつめるという意味での最終回で、『V3』の2話で1号と2号が最後を迎えるという意味での締めくくりになっている。つまり最終回と第1話がシンクロしてるわけですから、盛り上がらない方がおかしい(笑)。

宇野 『V3』の初期のドラマは独特の緊張感がありますよね。V3はスペック的にはすごく強いんだけれど、風見志郎が経験不足のせいで初期は何かと苦戦するじゃないですか。色々教えてくれるはずの先輩1号と2号は生死不明になってしまうし。
 

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