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【現代ゲーム全史】FFが築いた"和製ファンタジー"の視覚的起源 宮崎アニメはゲーム史にどう影響したか?

2014/01/20 17:33 投稿

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  • 中川大地
  • 中川大地の現代ゲーム全史
▼本コンテンツは連載です。前回記事はこちら
http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar388311


第24回 二大RPGシリーズの成立と和製ジュブナイルファンタジーの勃興

 『ドラクエ』以降のRPGでまず大きく変わったのが、ビジュアルの方向性であった。それまでは『指輪物語』以来の海外ハイファンタジー作品の装幀に近いリアリスティックな洋画調のイメージを元に、パッケージアートやモンスターなどの作中グラフィックが制作されることが多かったが、この時期からは同様の題材を日本の漫画・アニメ風の絵柄で描くものが増えている。
 代表的な例として、ファミコンではのちに漫画家として活躍する冨士宏がキャラクターデザインを担当したナムコのRPG風ストーリーアクション『ワルキューレの冒険 時の鍵伝説』(1986年)、パソコンでは硬派な『ザナドゥ』から一転して「今、RPGは優しさの時代へ。」をキャッチコピーに据えヒットした日本ファルコムのアクションRPG『イース』(1987年)などが挙げられよう。すでにAVGのジャンルではアニメ的な「メカと美少女」を売りにしたSF作品が流行していたのは先述したとおりだが、その延長線上にファンタジーRPGのビジュアルもまた、いわば「竜と美少女」へと転化する潮流を示してみせたのが両作である。
 つまり、片やビキニ風のアーマーをまとった戦乙女が主人公に、片や少年主人公とボーイミーツガール的に出会う神聖な力を秘めた巫女といった美少女キャラクターの登場が目玉となっているわけだが、その背景には『風の谷のナウシカ』(1984年)や『天空の城ラピュタ』(1986年)といった宮崎駿監督の長編アニメの存在を見過ごすことができない。世界の調和のために戦う戦闘美少女や、秘めた力を持つゆえに悪に狙われるヒロインといったキャラクター造形や作劇センスには、明らかに同時代に広範な人気を博した両作品からの直接間接の影響が見受けられるからである。こうしたビジュアルの変化に付随するかたちで、シナリオ傾向もまた、従来のRPGのような素朴な骨格の英雄物語からは一段細密化した、初期スタジオジブリ風のジュブナイル冒険活劇のような方向に進んでいくことになる。
 そして1987年末、そんな和製ファンタジーの潮目の変化を最も大規模に体現するRPGシリーズが、『ドラクエ』のエニックスとは常に近い土俵でビジュアル重視のストーリーゲームを競ってきたパソコンゲーム出自のソフトハウスの手で生み出される。スクウェアの『ファイナルファンタジー(FF)』である。
 

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