本メールマガジンで連載していた、三宅香帆さんによる「母と娘の物語」がついに書籍化します!
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「母」の呪いに、小説・漫画・ドラマ・映画等のフィクションはどう向き合ってきたのか?
『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の三宅香帆が、「母」との関係に悩むすべての「娘」たちに贈る、渾身の本格文芸評論!
「毒母」「呪い」「母がしんどい」「母が重い」――いまや社会現象となっている「母と娘の葛藤」は、フィクション作品の中でも繰り返し描かれ、その解法が探られてきた。
本書では、注目の若手批評家・三宅香帆の視点をもとに、「母と娘の物語」を描いた作品の分析し、「母娘問題」のひとつの「解」――「母殺し」の具体的方法を提示する。
「あまりに物騒なタイトルに、いささか驚いた人もいるかもしれないが、もちろん「母殺し」とは、物理的な殺人を意味するものではない。そうではなく、本書で主張したいのは、古来多くのフィクションが、息子の成熟の物語として「父殺し」を描いてきたように、娘もまた精神的な位相において「母殺し」をおこなう必要があるのではないか、ということだ。」――まえがきより
【本書で取り上げる作品一覧】
『イグアナの娘』『ポーの一族』『残酷な神が支配する』萩尾望都/『砂時計』芦原妃名子/『日出処の天子』山岸凉子/『イマジン』槇村さとる/『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子/『乳と卵』川上未映子/『爪と目』藤野可織/『吹上奇譚』『キッチン』『大川端奇譚』吉本ばなな/『銀の夜』角田光代/『凪のお暇』コナリミサト/『SPY×FAMILY』遠藤達哉/『Mother』『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』坂元裕二/『くるまの娘』宇佐見りん/『愛すべき娘たち』よしながふみ/『私ときどきレッサーパンダ』ドミー・シー/『娘について』キム・ヘジン/『肥満体恐怖症』『最愛の子ども』松浦理英子/『母という呪縛 娘という牢獄』斎藤彩
【目次】
まえがき
第一章 「母殺し」の困難
1 母が私を許さない
・「それは母が、ゆるさない」
・2018年の滋賀医科大学生母親殺害事件の存在
・「私の行為は決して母から許されません」
・なぜ「母から許されたい」と思ってしまうのか
・ 大人になるとは「父殺し」をすることである
・どうすれば「母殺し」は可能になるか?
・「できれば母/娘と仲良くいたい」
・「母と娘の物語」を読む
2 母が死ぬ物語―「イグアナの娘」『砂時計』「肥満体恐怖症」
・「イグアナの娘」と母の呪い
・『砂時計』が見せる「母殺し」の困難さ
・「肥満体恐怖症」と母への愛着
・「母を許せない自分」を愛せない
3 「母殺し」はなぜ難しいのか?
・戦後日本の専業主婦文化が生んだ母娘密着
・「母」が専業主婦じゃなくなっても
・ ジェンダーギャップと娘にケアを求める母
・「母殺し」が困難な社会で
第二章 「母殺し」の実践
1 対幻想による代替―1970~1980年代の「母殺し」の実践
・『残酷な神が支配する』と母娘の主題
・「母に代わるパートナーを見つける」という「母殺し」
・「ポーの一族」と永遠のパートナー
・落ちる母、飛ぶ娘
・山岸凉子のキャラクターはなぜ「細い」のか?
・『日出処の天子』の母の嫌悪とミソジニー
・「母と娘の物語」として読む『日出処の天子』
・母の代替の不可能性
・『日出処の天子』「ポーの一族」それぞれの代理母
・厩戸王子が「母殺し」を達成する方法はなかったのか?
2 虚構による代替―1990年代の「母殺し」の実践
・アダルト・チルドレンと1990年代
・1990年代の「自由な母」という流行
・戦後中流家庭の「親」への抵抗
・「母のような女になること」がゴールの物語
・「母殺し」の必要がない「理想の母」
・「理想の母」は母への幻想を強化する
・現実に「理想の母」は存在しない
・『なんて素敵にジャパネスク』と母の承認
・なぜ瑠璃姫の母は死んだのか?
・母のいない世界で、娘は自由に生きられる
3 母を嫌悪する―2000年代以降の「母殺し」の実践
・『乳と卵』が描いた、母への嫌悪
・川上未映子が『乳と卵』を描いた時代
・『乳と卵』の達成と限界
・「母殺し」の物語としての『爪と目』
・『爪と目』が浮き彫りにする「母殺し」の困難さ
・団塊ジュニア世代と「毒母」の流行
第三章 「母殺し」の再生産
1 自ら「母」になる―もうひとつの「母殺し」の実践
・『銀の夜』と母娘の「生きなおし」
・自己実現の規範の再生産
・「母殺し」の実践としての出産
・『吹上奇譚』と終わらない「母殺し」
・吉本ばななと「母になろうとする娘」
・『キッチン』とごはんを用意する「母」
・ごはんをつくらない「母」
・「大川端奇譚」の無自覚な娘
・母からの規範に気がつかない娘
2 夫の問題
・「母殺し」の実践と困難
・『凪のお暇』と母の規範の再生産
・夫の逃走、娘によるケア
3 父の問題
・シングルファザーの育児物語
・なぜ『SPY×FAMILY』のアーニャは人の心が読めるのか
・『Mother』の物語において「父」はいなくてもいい
・『カルテット』と夫婦のディスコミュニケーション
・坂元裕二の主題としての「コミュニケーション」
・『大豆田とわ子と三人の元夫』の提示したディスコミュニケーションの解決策
・「甘えさせる母」としてのシングルマザー
・3人の息子に囲まれた大豆田とわ子
・子どものいる夫婦の対等なコミュニケーションは描かれ得るか?
第四章 「母殺し」の脱構築
1 母と娘の脱構築
・母娘の構造
・「母殺し」の達成条件
・母娘関係の脱構築
・新たな規範を手に入れる
・母の唯一無二性から脱却する『愛すべき娘たち』
・『私ときどきレッサーパンダ』と更新される「母殺し」
・ 母のコンプレックスが娘のチャームになる
・母の規範が破られるとき
・他者への欲望に気づくことで、母の規範を相対化する
2 二項対立からの脱却
・『娘について』が描いた「母にできること」
・母の規範、娘の幸福
・娘以外の他者を入れる必要性
・甘いケーキだけが幸福ではない
・母娘が、お互いを唯一無二の存在だと思わないために
3 「母殺し」の物語
・自分の欲望を優先する
・厩戸王子はどうすれば「母殺し」ができたのか?
・ひとつの解を提示する『最愛の子ども』
・娘たちよ、母ではない他者を求めよ
・母娘という名の密室を脱出するために
・「母殺しの物語」を生きる
あとがき
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