本日のメルマガは、PLANETS編集長・宇野常寛の情報社会論をお届けします。
Web2.0の失敗は、実空間に対してどのような影響を与えたのか。情報社会が抱える諸問題に対して、サイバースペースと実空間の双方から取れる抵抗戦略を提示します。
(初出:『建築と社会』誌2022年8月号)
すでにサイバースペースの半ば支配下にある実空間において、建築的アプローチの果たすべき役割とは|宇野常寛
編集部から2030年に考えられる社会と文化の変化について、というテーマを受け取ったのだが、これが悩ましい。もちろん、相応の説得力のある賢い文章をその回答に充てることはそれほど難しくない。データの羅列と、それを意味づける横文字によってその説得力を増すことも、手間はかかるがある種の語り口がテンプレートとして確立しているので精神的な労力はむしろ低くて済むだろう。しかし、私に求められているのは「そういうこと」ではないはずだ。文化批評に足場を置く私がここで述べるべきは、むしろ建築という領域から社会にアプローチする際につきまとう、目に見えない不安のような予感を門外漢だからこその視点で言語化することではないかと思うのだ。それは端的に述べれば、もはや建築的なアプローチは社会を得る力を持ちえない、という予感なのだと思う。
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