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チームラボの代表・猪子寿之さんの連載「連続するものすべては美しい」。今回は、水戸の偕楽園で開催中の展覧会「チームラボ 偕楽園 光の祭」と昨年拡張した豊洲の「チームラボプラネッツ」の2つの庭園をめぐる対話です。その土地の特性とチームラボの作品作りの関係、人間の脳の中で構成されるアート作品、「作品を見る自分」と「作品に見られる自分」の関係など、縦横無尽に語ります。
(構成:杉本健太郎) 

猪子寿之 連続するものすべては美しい
第7回 ​​世界は自分の認知に過ぎない(前編)

その土地の良さを活かすチームラボの「土地読み」

宇野 茨城県水戸市でやっている「チームラボ 偕楽園 光の祭 2022」を見たけど、すごくよかったね。この庭は表門が陰、裏門が陽というふたつのエリアに分かれているわけだけれど、あえて庭の裏、つまり陽の側から入るっていう構成がいい。シンプルな仕掛けだけれど、普通に表の陰のエリアから入るのとでは、まったく印象が違うと思うんだよね。

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猪子 最後に梅が陽にあたるから、もう一回陽に戻って来るんだよ。

宇野 陽から入って陰に行き、もう一回陽に行くんだね。僕はこれまでもたくさんチームラボの地方展示を見てきたけど、その土地というか、会場を活かすためにどういう作品をどこに配置したらいいかを、すごく考えてるよね。毎年佐賀の御船山でやっている展示(「チームラボ かみさまがすまう森」)はもう鉄板だけど、庭園を夜歩くって普通はありえないことなんだよ(笑)。ただ、夜にこういったデジタルアートのインスタレーションっていうのを挟むことによって昼間は、つまり普段は僕たちが気づかないその土地の側面を引き出しているいい展示だと思うんだよね。今回の偕楽園もそのための「土地読み」に成功していることがすごく大きい。昼には見えないものをデジタルアートの力で引き出す夜の展示だからこそ、先に裏から陽を見せて、陰につながっていき、また陽に戻る。

猪子 ベースがいい造りになってるから、構成もそれに合わせてけっこう凝ったよ。たぶん陰ってさ、太郎杉とかわかりやすいけど、お庭ができるずっと前から存在する。お庭と歴史感が全然違うんだよね。時間がめちゃくちゃ長い。お庭の背景にあった森の部分を通って、またお庭に戻るっていう構成。だから、最後は梅林なの。

宇野 偕楽園っていう後から造られた場所の中に入っていくと、太郎杉と次郎杉という庭のできる遥か以前というか、その土地の深層が露出した歴史以前の存在に出会って、そしてもう一回人間の歴史の世界に戻ってくるっていう構成だよね。要するに人間の歴史の世界と、人間外の歴史以前の世界との境界を構成的に無くしているんだよね。

猪子 お庭が元々そういう造りだから、それを活かしたっていう。できるだけ長い時間に接続できたらいいなと思って。で、太郎杉や次郎杉が一番時間を感じさせるモノだったから、そこには絶対アクセスさせて戻ってくる構成にしたかったのね。

宇野 チームラボ的土地読みの何がいいってさ、複数の時間の流れをデジタルアートの介入で可視化させているところなんだよね。人間の歴史と土地の歴史って、同じ場所に流れていて、重なっているけどちょっと違うじゃない。人間の時間と木の時間と岩の時間って、実は全部流れ方が違う。人間にとっては膨大な時間でも、木にとっては一瞬で、岩にとってはもっと短い時間かもしれないこの違いって、昼間に普通に庭を歩いて見ているときはなかなか意識できない。しかし夜の庭がデジタルアートの介入で照らされると、それがはっきりと浮かび上がって可視化される。ああやって木々が暗闇の中に浮かび上がってさ、その中を歩いていると、複数の時間が同じフィールドに並べられて同時に流れているのが感じられる。つまり、土地の記憶の重層性を直接的に感じることができた。チームラボの土地読みを生かした展示のスキルがすごく成熟していると思ったね。

猪子 夜がいいのはさ、いらない情報を消せることなんだよね。あの梅林も昼だと周りの建物が見えちゃうんだ。だから明るいうちは方位がわかっちゃうんだけど、夜なら建物が消えるから、まるで無限回廊にいるかのような気分になるの。たぶんひとりで行ったら、大人でも半泣きになるくらい怖いよ。

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