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【今週のお蔵出し】
「改正著作権法が見落としているもの」
(初出:週刊東洋経済「お金には(たぶん)ならない」2012年7月7日号)

  今国会で、DVDのリッピング(デジタルデータを取り込んだり、ファイル
にすること)を違法とすることと、音楽などの著作物のいわゆる違法ダウン
ロードの厳罰化を含む改正著作権法が成立した。
  改正案が提出された背景の一つにはCDの売り上げ低下の原因を違法ダウン
ロードに求める産業界(の一部)の考えがあるとされている。真偽は定かでは
ないが、こうした考えが送り手にも受け手にも存在感を示しているのは事実だ
ろう。しかし、違法ダウンロードの厳罰化が、はたして問題の根本的な解決に
つながるのだろうか。その答えは「否」だ。
  CDや漫画雑誌の売り上げ減が、小中高生のお小遣いの使途が携帯電話など
の通信費に変わったためだという指摘は以前からある。だが、ここで起こって
いる変化はもっと本質的な何かだ。インターネットや携帯電話の普及(情報化
の進行)はおそらく二つの変化をもたらしている。
  一つはコンテンツをただ「受け取る」だけの快楽(映画をみる、本を読む、
音楽を聴く)が中心だったポップカルチャーに、消費者の側が「打ち返す」
「参加する」快楽を大きく付与したことだ。