アニメーション監督の山本寛さんによる、アニメの深奥にある「意志」を浮き彫りにする連載、いよいよ最終回となります。
2年にわたって続いた連載で取り上げる最後の作品は、現在公開中の宮崎吾朗監督の劇場最新作『アーヤと魔女』です。スタジオジブリ初の3DCGへの挑戦を、どう足掻いても色眼鏡を外しては見てもらえない宿命を背負った「二世監督」が担わされたことの意味とは? そして日本アニメのゆく末は? 吾朗監督との意外な接点のあった山本さんが、真に「アニメを愛するための方法」を切に問いかけます。
山本寛 アニメを愛するためのいくつかの方法
第24回 (最終回)日本アニメが3D化して完全に滅ぶ日 -『アーヤと魔女』
丸2年を迎えたこの連載だが、急な話で恐縮だが、今回をもって一旦休止しようと思う。
楽しんで読んでいただいていた方には申し訳ないが、最近になって編集部に泣きを入れたり、本文中で愚痴を言ったりして情けない姿を見せていたので、これでご勘弁いただくことにした。
アニメを観て、語るのが辛くなったのだ。
もはや悪態すら浮かばない。
アニメに知性を、批評性を、「モダニズム」を求めるのは、もう無理かも知れない。そう思い始めたのだ。
そんな絶望感を胸に、最後取り上げる作品には『アーヤと魔女』(2021)を選んだ。
また「会った自慢」になるが、宮崎吾朗監督(以下親愛を込めて「吾朗さん」と呼ぶ)とも1回だけお会いして、じっくり話をさせていただいた。
実は僕の実写作品『私の優しくない先輩』(2010)に父親役として吾朗さんをキャスティングできないか、とダメ元でオファーしてみたのだ。
結果NGは出たが、「そんなオファーを出す監督は面白いから会ってみたい」と、スタジオジブリにまで呼ばれた、というのが経緯だ。
まだ東小金井駅の高架化工事が終わっていなかった頃の話だ。
その時は「初ジブリ」の過度の緊張で何を話したかはほとんど覚えてないのだが、かの有名なプロデューサー室に通されて固まったように座り、少しして吾朗さんがやってきて開口一番「いやぁ……代わってほしいっすよ……」と泣き言を漏らしたのだけは覚えている。
それからランチをご馳走してくれることになり、近くのイタリア料理屋に吾朗さんの運転で連れていってもらった。
そこで何を話したかもまた覚えていない。
しかし帰りの車中、助手席に座っていた僕は、少しでも爪痕を残そうと思い切って訊いてみた。
「あの、一番好きな映画監督って、誰ですか?」
吾朗さんは少し考えて、
「そうだなぁ……(ヴィム・)ヴェンダースかな?」
僕はすぐ『ゲド戦記』(2006)を思い出していた。
ああ、この人はやっぱり、こういう作風だったんだ。
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